フリッツ・ラングの西部劇という異色作。冒頭、バッファローの群れに突っ込んでいく一人の男、どうやら逃げているらしい。そして足を痛めた馬を野に放ち、怪我した男の馬を奪いつつ、その男を助ける。「俺もおめでたい」という呟き。逃げていた男はヴァンス・ショウ(ラドルフ・スコット)。南部の軍隊くずれの仲間と銀行強盗をしたらしいのだが、その仲間から逃げてきたようだ。助けられた男は、ウエスタン・ユニオン電信会社の技師長エドワード・クレイトン(ディーン・ジャガー)。ネブラスカのオマハから、未開なインディアンの集落の点在する荒野を横ぎって、ユタのソルト・レイク・イティまで、電柱を建てて通信網を延長しようとしていた。クレイトンは単身で実地検分していて落馬して怪我したらしい。ヴァンスはクレイトンを人里まで連れて行き、「ここで怪我を治せ」と言って馬から下ろすと一人で去って行く。
本格的に大陸横断通信網の電柱工事に出発することになり、クレイトンは作業員を募集した。そのなかに訳あり男のヴァンスがいた。逃げようとするヴァンスを初対面であるかのように接してクレイトンは引き留める。クレイトンの親友の息子で、父親の命令で工事に加わることになった若者リチャード・ブレイク(ロバート・ヤング)も一行に加わる。金持ちのドラ息子かと思ったら、荒馬を乗りこなして注目を集めるリチャード。この二人の男たちがともにクレイトンの妹スー(ヴァージニア・ギルモア)に心惹かれて、スーのところにやって来ては二人がかち合う場面が面白い。リチャードがやって来ると、先にスーのそばにヴァンスがいたり、その逆だったり。2人はお互いをライバル視しながら一緒に帰っていく。一行が西に向かって出発し、電柱工事が進んでいくが、ネイティブ・アメリカンの襲撃やヴァンスのかつての犯罪仲間による妨害工作が始まり、工事は困難に直面する・・・。スーはヴァンスの方に好意を寄せ、自分のペンダントを「私だと思って・・・」と言ってヴァンスに渡す。
工事一行の中に臆病なコック役のスリム・サマーヴィルが道化的な役回りのキャラクターで笑いを誘う。ネイティブ・アメリカンの描かれ方も単なる悪役ではない。銀行強盗を企てたスレイド一味がネイティブ・アメリカンのように肌を黒く塗って変装して襲っていたり、スウ族を酒に酔わせて襲わせていたり、ヴアンス、クレイトン、リチャードの3人は銃を発砲することなくスウ族と和解する。そしてヴァンスの兄が強盗団のスレイドであり、牛が盗まれたり、キャンプ地を焼き払われたりする度に、ヴァンスがスレイド一味と通じていることをリチャードに疑われる。この昔の仲間から誘われ、2つのグループの間で葛藤するヴァンスの微妙な立場こそ、フリッツ・ラング的な人間が矛盾した存在であることを表現している。
ラスト、ヴァンスが兄のスレイドと決着をつける場面、西部劇でよく登場する床屋でスレイドが顔を剃っていて、白いエプロンの下に銃を隠し持っている。火傷した右手の包帯を取って銃の感触を確かめながら床屋にやって来るヴァンス。そしていきなりスレイドがエプロンの下に隠していた銃で発砲して銃撃戦が始まる。そしてヴァンスが撃たれて、包帯を巻いた右手がズリ落ちていくカットで死を表現する巧みさ。リチャードが最後にスレイドをやっつけて、ヴァンスが持っていたスーのブローチを見つける。そして無事に大陸横断通信網が完成して、新たな時代を迎えて映画は終わる。
西部劇でありながら、よくある先住民族との抗争劇や流れ者が悪党一味から街を守るような話ではなく、時代を変える電柱工事の通信事業とそれを阻んで金儲けをしようとする一味との抗争劇だ。敵と味方の対立だけではない人間同士の様々な複雑な関係が描かれる。南軍の残党のような話も出てきて、時代の変化に対応していく人間とその時代に抗う人間、その狭間で引き裂かれ葛藤する人間が描かれるところが面白い。
1941年製作/アメリカ
原題または英題:Western Union
監督:フリッツ・ラング
脚色:ロバート・カーソン
原作:ゼイン・グレイ
撮影:エドワード・クロンジェガー、アレン・M・デービー
音楽:デビッド・バトルフ
アソシエイト・プロデューサー:ハリー・ジョー・ブラウン
キャスト:ロバート・ヤング、ランドルフ・スコット、ディーン・ジャガー、バージニア・ギルモア、ジョン・キャラダイン、スリム・サマービル、チル・ウィルス、バートン・マクレーン、ラッセル・ヒックス、ビクター・キリアン、マイナー・ワトソン、ジョージ・チャンドラー
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