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2025年02月05日20:46

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「キノ・ライカ 小さな町の映画館」ベリコ・ビダク〜アキ・カウリスマキのコミュニティとしての映画館〜

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが仲間たちと作った映画館「キノ・ライカ」のドキュメンタリー。人口は9000人ほどのフィンランド郊外の田舎町、鉄鋼の町カルッキラ。鋳物工場を中心に発展した工業と産業、自然と文化がある町で、首都ヘルシンキから車で1時間ぐらいのところだという。森の中の道を車で進んでいくと、鋳物工場跡に小さな映画館が作られようとしている。アキ・カウリスマキ監督と共同経営者の作家ミカ・ラッティが2021年に映画館をオープンするまでの様子やインタビューに応える姿、アキ・カウリスマキ自身が館内の内装や看板設置などの作業を行い映画館づくりに勤しむ映像が収められている。ちなみにアキ・カウリスマキは冬はポルトガルに住んでいて、春になるとカルッキラに来るらしい。

ドキュメンタリーなのだが、まるでアキ・カウリスマキの映画のように、いろんな人物たちが固定したフィックスのカメラの前で映画館のことを語っていく。アキ・カウリスマキと一緒にカルッキラで映画サークルを運営していた友人ミカ・ラッティ、『枯れ葉』に出演した女性デュオのマウステテュトット、『希望のかなた』に出演したヌップ・コイブ、サイモン・フセイン・アルバズーン、そして映画館に期待を寄せる地元の住人たち。ニューヨーク取材だがインタビューで盟友ジム・ジャームッシュも登場する。アキ・カウリスマキとジム・ジャームッシュの映画の共通点として、「引き算の映画」だというような話が出てくる。ジム・ジャームッシュは『ナイト・オン・ザ・プラネット』を引き合いに出しながら、普通の映画では移動手段でしかない車の中の話だけで自分は映画を作る。様々なものを削ぎ落として、音楽のように映画を作るのがアキ・カウリスマキであり、ジム・ジャームッシュなのかもしれない。

映画館には音楽の演奏が出来るステージやバーも併設されており、映画を見終わった後で客がバーで語らったり、イベントもしているようだ。この小さな町は、住人がほかの住人のことをいつも気にかけているような町だという。まさに町の交流の場としての映画館。コミュニティ・スペースなのだ。『ラヴィ・ド・ボエーム』のエンディング曲「雪の降る町を」等を歌ったフィンランドに住む篠原敏武も登場。日本とフィンランドの感覚の近さなどについても話が及ぶ。さらに『真夜中の虹』に出てくるキャデラックも出てきて、映画館のスクリーンに映し出されたりもする。「キノ・ライカ」の「ライカ」とは、アキ・カウリスマキの2匹の愛犬の名前で、『ラヴィ・ド・ボエーム』にも、『ル・アーブルの靴みがき』にも出ている。ライカ犬とは、スプートニク号に乗せられて宇宙に行った犬である。『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』という映画にも出てくる。この映画館は「世界でいちばん犬に優しい映画館」を標榜しているのだそうだ。

アキ・カウリスマキがインタビューで、16歳の時に観た『ママと娼婦』の話や、ルイス・ブニュエルの『黄金時代』と『極北のナヌーク』を右手と左手に例え、全ての映画はこの間におさまるというような話などもしていて面白かった。まさの「断片性」と「記録性」(『他なる映画と』濱口竜介)、フィクションとドキュメンタリーという映画の特性。アキ・カウリスマキの映画もまた、ドキュメンタリーのようなフィクショナルな映画だ。


2023年製作/81分/フランス・フィンランド合作
原題または英題:Cinema Laika
配給:ユーロスペース

監督:ベリコ・ビダク
脚本:ベリコ・ビダク、エマニュエル・フェルチェ
撮影:ベリコ・ビダク
編集:ベリコ・ビダク
キャスト:アキ・カウリスマキ、ミカ・ラッティ、ジム・ジャームッシュ、アンナ・カルヤライネン、カイサ・カルヤライネン
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