◆『落葉』
旧ソ連ジョージア出身のオタール・イオセリアーニ監督が1966年に手がけた長編第1作。ワイン発祥の地ともされるジョージア、ワイン醸造所で働く真面目な青年の物語。オープニングはドキュメンタリーのような映像でワイン造りの職人たちやワインを飲んで楽しく語らうジョージアの人々の様子が映し出される。オタール・イオセリアーニ監督のワイン愛が伝わってくる。
ワイン工場に配属された新人技師ニコは真面目な青年で、職人たちとも仲良くなって働き始める。同時に採用された同僚は、学生時代に成績も優秀だったらしく、出世主義で職人たちを見下しており、「職人たちから甘く見られないように」距離を置いている。研究室で働く女性マリナは美人で、みんなからちやほやされて、いろんな男たちから声をかけられている。ニコもまたマリナの存在が気になっている。
中央からノルマを課せられたワイン工場は、生産量を維持するのに必死。品質の悪いワインでも出荷してしまう。職人たちは、その質の悪いワインの出荷日を覚えており、そのワインは飲まないようにしている。なかには、ワイン樽からワインをくすめてしまう者もおり、小さいところに目をつぶりながら人々は日々働いている。そんなワイン工場での人間模様がニコを中心に描かれる。ニコがマリナとカフェでコーヒーを飲むことになっても、別の男が現れてマリナがいなくなってしまったり、いろんな男たちから誘いを受けているマリナは、ニコをからかうように部屋に入れたりもする。それでニコはほかの男に殴られる羽目になってしまう。真面目なニコは、会社がノルマ達成を気にして品質の悪いワインでも出荷してしまうことが許せない。何度も出荷するべきではないと意見するが会社に聞き入れてもらえない。逆に「なに子供みたいなことを言っているんだ」と諭されてしまう。マリナの部屋に行って殴られた翌日、ニコは技師たちに黙って勝手にゼラチンを樽に入れて、出荷できなくしてしまう。実力行使に出たのだ。
本音と建て前、会社や仲間たちからの同調圧力、中央のソ連政府とジョージアの関係、ワイン文化への誇りなどが寓意的に描かれている。ワインを飲み、友と語らい、歌を唄う。これこそがジョージアの大事な文化なんだろうなと思う。
1966年製作/96分/ソ連
原題または英題:Giorgobistve
配給:ビターズ・エンド
監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:アミラン・チチナーゼ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
美術:ディミトリ・エリスタービ
キャスト:ラマーズ・ギオルゴビアーニ、マリナ・カルツィワーゼ、ゲオルギー・ハラバーゼ
☆☆☆3
◆『田園詩』
旧ソ連ジョージア出身のオタール・イオセリアーニ監督が、フランスのパリに活動拠点を移す以前の『落葉』(1966)、『歌うつぐみがおりました』(1970)に続いて1975年の長編第3作。最初の中編『四月』(1962)と『歌うつぐみ』と『月の寵児たち』(1984)がコンセプチュアルで理知的な企みに満ちた映画であるのに比べ、『落葉』と、この『田園詩』は、わりと素朴な田舎の人間たちの生活の映画になっている。
ジョージアの田舎に首都トビリシから弦楽四重奏の音楽家たちが夏合宿にやって来る。都会から来た音楽家たちの若者と田舎で暮らす農民たちとのギャップ。興味津々で音楽家たちが奏でるクラシック音楽を聴きに集まってくる子どもたちと距離を持つ村人たち。お店で次々と酒を勧める地元民とすぐに帰ってしまう音楽家の青年。農場で散布するグライダーの音がうるさくて練習できなかったり、木を切ったりする様々な生活の音が練習の邪魔になったりもする。泊まっている音楽家たちの世話をしている少女エドゥキを監督の実の娘ナナ・イオセリアーニが演じている。自由で都会の青年を憧れの気持ちで見つめるエドゥキ。音楽家たちも地元の人たちに挨拶をしたりして、頑なに拒否しているわけではない。演奏の練習が終わると、エドゥキに案内してもらい森でイチゴを摘んだり、粉をひく昔ながらの風車小屋を見に行ったり、干し草の上で寝転んだり自由に過ごしている。しかし、地元の村人たちが開いた宴会から早々に引き上げたりして、距離感はある。酒を飲んでメンバー内でケンカがあったりもするし、地元の隣同士で勝手に見下ろすような窓のある建物を作るなと言い争いが起きたりもする。集団農場の干し草を勝手に刈って咎められたりする農夫やコルホースのトラックを私用に使って役所で怒られたりもある。農業が権力に管理されている様子も描かれる。あるとき大雨が続き、農民は仕事できないし、音楽家たちも練習できない日々を過ごす。メンバーは一緒にトランプをしたりジェスチャーゲームをしてエドゥキと仲良くなったりもする。そして夏が終り、音楽家たちが町へと引き上げるときが来る。
これといった劇的なドラマも展開もない。少女エドゥキの恋も何か発展するわけでもない。音楽家たちと田舎の人々の間に大きな諍いが起きるわけでもない。ただ、まったく違う生活をしている違いを描いている。楽器を奏でるばかりで自由に過ごす若者たちと日々農地で働く労働者たち。コルホーズの集団農場で農民たちみんなでトラックに乗って畑に行く日々。都市と農村、中央と周縁。権力と労働。最後に合宿していた音楽家の一人の女性は、首都で高官の地位にいる人物の娘であったことが知らされる。田舎の農村風景と素朴な暮らしぶりが美しく描かれている。山羊とか牛や馬、豚にニワトリと動物たちがたくさん出てくる。
1975年製作/98分/ソ連
原題または英題:Pastorale
配給:ビターズ・エンド
監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:レバズ・イナニシビリ、オタール・イオセリアーニ、オタール・メフリシビリ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
音楽:ティムラズ・バクラーゼ
キャスト:ナナ・イオセリアーニ、ヌクリ・ダビタシビリ
☆☆☆3
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