混迷の公園と筆者がその公園を名付けたのは、自らが混迷したときに来るからというのもあったのだが、もう一つ、その公園そのものが街の中で混迷しているように感じたからだった。
恋人が集う公園にはなれそうにない。子供たちが安全に遊ぶのには良い環境ではない。そもそも公園は広くもない。そんな公園に花を植えて管理する経費は割けないのかもしれない。しかし、公園であるから、売るわけにもいかないのだろう。工業都市の薄汚れた空気の中で、その公園は混迷していたのだ。その昔は、汚れた空気の他に騒音もあった。ところが、町工場は気が付けばなくなり、大きな工場も移転していた。線路脇ではあるが貨物が多い線路ゆえに工場がなくなれば行き交う電車も少なくなっていた。工場がなくなればマンションを中心に住宅が建つのが都心部の常だった。
人の気配のないマンション。電車の通らない線路。空き地。不自然な都市空間の中で、そこだけ切り取られたかのようにして存在している公園。
公園のベンチに仰向けに寝て空を見ると、自分が地球に空いた穴の底にいるような錯覚を抱くことになる。気が遠くなるほど地上が高くにあるような錯覚。気が遠くなるほどの長いエロ本屋としての歴史。その中で自分は何をやって来たのだろうか。気が付けば誰もいない。こっそりとマニアであることを告白し、こっそりとマニアを集め、こっそりと本を作っていた頃の仲間は誰もいなくなった。
取り残されたのだ。公園も筆者自身も。
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