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2018年08月10日23:39

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法の涼しさ−定家(02)

「除世熱悩　致法清涼

みな月の道行人ぞ思ひしる法のすゞしさいたす誓を」

「六月の炎天の道を行く人は、今こそこの世に清涼をもたらそうとの仏法の誓いの有難さを思い知る。」

久保田淳校訂・訳『藤原定家全歌集(下)』（ちくま学芸文庫・）ｐ．１３８
歌番号3395より

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今日は旧暦の六月二十九日、水無月の晦日（みそか、つごもり、かいじつ＝最終日）になる。 そこで、定家の歌集の中で「水無月」を詠ったものを探していたら、この歌が見つかった。

この歌は釈経歌で、「除世熱悩　致法清涼」というのは法華経の開経である「無量義経」の中の言葉。その言葉の前を補うと、次のように訓めるとのこと。

「微��(みたい)先ず堕ちて以って欲塵を淹(ひた)し、涅槃の門を開き、解脱の風を扇いで、世の悩熱(のうねつ)を除き、法の清涼(しょうりょう)を致す。」

『無量義経・法華経 上（新国訳大蔵経）』（大蔵出版・１９９６年）ｐ．６８より

平安時代も、今頃の季節は暑かったのだろう。その酷暑によって「この世」を生きることの苦しさに譬え、人生の清涼を感じたければ解脱するよりほかない。そのようなことを説いた歌だろうか。やや説教くさい感じもするが、釈経の歌が説教くさいのは仕方がない。

先日、ウォークマンでヴォサノバを聴きながら歩いていたら、しばし暑さを忘れて清々しい気分になった。暑さの感じ方にも、感じる側の心境によるところがあるかも知れない。
とはいえ、来る文月（旧暦七月）は、もう少し涼しくなって欲しいものだ。

なお、この歌は岩波文庫版の『藤原定家歌集』（佐佐木信綱校訂・１９３１年）では、次のような表記となっている。（ｐ．２７９）

「水無月のみちゆき人ぞおもひしる法のすゞしさいたす誓を」

◆『拾遺愚草全釈』参考資料　仏典
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/teika/t_siryou15.html
◆対訳　無量義経
https://s.maho.jp/book/967e2ee831bfb6f7/5685774002/6/

◆藤原定家全歌集（2017年10月28日）
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◆無常の歌−定家（2018年05月14日）
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◆和歌・歌集・歌人に関する日記の目次
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◆『拾遺愚草』資料集
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/teika/teikazen_i.html
◆雁の玉梓　―やまとうたblog―
http://yamatouta.asablo.jp/blog/

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