とある女子大で国文学を教えている先生が、次のようにつぶやいていた。
「3年ゼミが『我が身にたどる姫君』巻六でかつてないほどの異様な盛りあがりを見せる。そうか……君らの好物はこれだったのか……!!」
https://twitter.com/yuko_chino/status/1022414098317762560
『我が身にたどる姫君』巻六というのは、知る人ぞ知る特異な内容を含んだものだ。ある人の表現を借りれば、『我が身にたどる姫君』とは「鎌倉時代のハードエロノベル」であり、その巻六には「百合ん百合んな姫巫女の嫉妬渦巻くレズハーレム」が描かれている。
その具体的な内容を知りたければ、後記の【参考資料】などをご覧いただければと思う。
僕自身の感想で言えば、その内容は「ハード」というほどのものであるとは思われない。ただ、その中の表現には、『源氏物語』や『狭衣物語』など、それまでの王朝物語には見られないものがあることも事実だ。
それまで描かれなかったものが描かれるようになったというのは、どういうことか。『我が身にたどる姫君』に限ったことで言えば、その要因は、「読者サービス」なのだろう。
『我が身にたどる姫君』の作者のサービス精神が、数百年を経て、平成時代の末の読者を悦ばしているのだとしたら、たいしたものである。
もっとも、国文学など、知れば知るほど良家の子女には通わせられない学科だと感じつつもある(笑)。
【参考資料】
◆鎌倉時代のハードエロノベル『我身にたどる姫君』3
〜百合ん百合んな姫巫女の嫉妬渦巻くレズハーレム〜
https://trushnote.exblog.jp/10807886/
◆大塚 ひかり『日本の古典はエロが9割−ちんまん日本文学史』
https://honto.jp/netstore/pd-book_27783239.html
【追記】
以上の日記の下書きを了えたところで、この物語の註解本に以下のように書かれているのを見つけた。まったく同感である。
「宮の右大将は、狂前斎宮の同性愛の現場を垣間見た。[巻六の]巻頭から異常な状況設定である。源氏物語には、このような場面が具体的に描写されることはないが、この巻には、変態性欲や財産をめぐる紛争など源氏物語に見られない下品な話柄を題材とした猟奇趣味や退廃的気分が充溢し、しかも具体的な描写が多い。そこに鎌倉時代貴族の衰微した精神や悪趣味をのぞき見ることができるが、一方、源氏物語の強い束縛からすこしでも脱却して、なんとか新しい趣向を打ち出そうと努力している作者の苦心がうかがわれて面白い。」
徳満澄雄『我身にたどる姫君物語全註解』(有精堂・1980年)p.370より
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