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2017年11月25日16:50

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時代に埋もれた喫茶店(その4)

 お腹を空かせて取材に行くのは大塚だった。どこの店の取材だろうとお腹を空かせて行った。大塚は美味しい店が多くあったからだ。洋食。おにぎり。サンドウィッチの美味しい店もあった。そして、美味しいものを食べた後に、不味いコーヒーを飲みながら取材記事を仕上げるのが好きだった。チェーン店の喫茶店が大塚には似合っていた。
 しかし、大塚にあるSМクラブは特殊なところが多かった。特別に親しくしていた店も多くあった。プライベートでお酒を飲みに行くほどの仲のママやオーナーが多くいたのも大塚だった。
 その大塚から少し歩いたところに、不思議な喫茶店があった。そこは、靴を脱いで入る喫茶店だった。別に畳というわけではない。普通の床なのだ。まるで居酒屋である。靴を脱ぐということを除けば、他は普通の喫茶店なのだ。靴を脱いだら居酒屋だって床に座るタイプだったりするものだと思うのだが、その店には普通の椅子とテーブルがあるのだ。
 しかし、ここは落ち着くことが出来た。あまりに寛いで記事を書くのを忘れることさえあった。
 ゆえに、筆者は、多くあるSМクラブの取材でも、ある一軒の店の取材の後だけ、その店に行くことを決めていた。
 そのSМクラブは、いつも、それが深夜だろうと、夕餉の匂いがしていたのだ。女の子たちが食事の支度をしていたからだ。お腹を空かせて行くだけに、その匂いは辛かった。取材とは無関係に聞いたところでは、希望する女の子にキッチンを貸していたらしいのだ。誰れもキッチンを使わないときにはママがそこで料理していたらしい。そして、その料理は食べるのも食べないのも自由だったらしいのだ。
 そして、これもその店のポリシーらしいのだが、その料理は、お客にも、取材の人間にも、いっさい振る舞うことが許されていなかったらしい。ゆえに、筆者も一度も食べさせてもらえなかった。まあ、大塚は美味しい店はいくらでもあるからそれでよかったのだが。
 そんな夕餉の匂いを嗅ぎ、美味しいものを食べたあと、喫茶店で靴を脱いで取材原稿を書くのが筆者は好きだった。ところが、先日、まだ、靴を脱いで入る喫茶店があるかと思って大塚を訪れたのだが、喫茶店どころか、そこにいたる道さえ分からなくなっていた。あれは本当に大塚だったのだろうか。
 もう一つ。とても美味しいハンバーグの洋食屋も見つからなかった。
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