過去の日本シリーズを回想するとき、ぼくの脳裏には数々の印象的なプレーが蘇る。古くは1978年の第４戦、9回2死からヒルトンが放った逆転ツーランホームラン。翌79年のいわゆる「江夏の21球」もテレビの前で手に汗握った。83年のライオンズとジャイアンツの死闘はそれだけで長文になってしまうので省略。87年の第6戦の8回2死、1塁ランナーのライオンズの辻が秋山のセンター前ヒットで一挙にホームインしてみせたときには心底驚いた。
そんな数々の名場面で、あるときふと気づいたことがある。
��93年、スワローズとライオンズの1点を争うしびれるような第４戦、ヤクルトのセンター飯田はストライクのバックホームをして2塁ランナーを刺した。
��同じく93年の第７戦、ヤクルトがついに日本一に輝いたとき、リリーフエースの高津は最後のバッターを三振に仕留めた。
��ジャイアンツとライオンズが激突した94年の第2戦、ジャイアンツは1回、先頭バッターのサードゴロエラーのランナーを返した虎の子の一点を槙原が完封で守り抜いた。最後のアウトは2死2塁から打たれたヒット性の当たりをセンター屋敷が飛びついて捕球したファインプレーだった。
�，�ら��のエピソードで悔しい思いをしたのは、�，任魯札鵐拭質哀劵奪箸鯊任辰秦�手であり、�△任郎埜紊忙或兇魑覆靴秦�手であり、��ではエラーした選手と最後のヒット性の当たりを放った選手である。
実はこれらは全部一人の選手のプレーなのである。
鈴木健。ライオンズが最も強い時代に入団したためにレギュラーを勝ち取るまでに数年かかったが、他球団ならすぐにでもクリーンナップを任されてもおかしくなかったスラッガーである。
�△呂箸發�く、�，鉢�はどれも日本シリーズの流れを大きく変える紙一重のプレーだった。ライオンズは93年も94年も日本一を逃したが、どれか一つでもでもヒットになっていたり捕球できたりしていれば、あるいはライオンズが日本一を勝ち取っていたかもしれなかった。
鈴木健に対して、これら四つのエピソードをテレビなり雑誌なりでインタビューしてくれた人はいないが（僕の目に入ってこないだけなのかもしれないが）、ぼくはもう何年も、このときの心情を聞いてみたいと思っている。「残念だった」とか「悔しかった」というようなありきたりな言葉しか出てこないかもしれない。でももしかしたら、当事者にしか語れないこぼれ話が出てくるかもしれない。よく「球界を去った男たちのその後」みたいなテレビ番組があるが、ぼくとしては是非「鈴木健の日本シリーズ」を作ってほしい。
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