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2015年08月21日22:18

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素敵な継母-更級日記

「作者の実母は、上総、常陸の二つの夫の任国に同行することのないままに、都に留まりひっそりと暮らしていた模様だが、彼女に代わって上総にともに下ったのが、継母上総大輔である。高階成行の女で、既に宮仕えの経験を経て、孝標と結婚、上総に下向した彼女は、孝標娘[作者]に大きな文学的影響を与えている。漢詩の才も名高い貴子(中宮定子の母)などの血筋につながる高階家に生を享けた彼女は、『後拾遺集』にも歌の入集する歌人でもあり、その後の孝標との離別を経て、再び女房として後一条天皇中宮威子の許に出仕した。おそらく紫式部の娘、大弐三位と成行の弟成章が結婚している縁もあって、『源氏物語』に触れる機会にも恵まれたものであろうか、東国で孝標女に『源氏物語』のあれこれを語り聞かせたのは、この継母と、また姉であった。」

原岡文子訳注『更級日記』(角川ソフィア文庫・2003年)所収「解説」p.224より

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「更級日記」に書かれている作者と継母の関係について、先日の日記で簡単に触れた。

■更級日記の継母(2015年08月18日)
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たまたま、角川ソフィア文庫版の「更級日記」に付された訳注者による「解説」を読み直していたら、この継母(上総大輔:かずさのおおすけ)に関しての詳しい説明があった。
なるほど、作者の父親は、受領階級であるが、菅原道真の嫡流の五世の末裔でもあった。となれば、作者の継母(父親の第二?夫人)と言えども、相応の身分であり、教養人でもあり得たわけだ。

作者の実母は、『蜻蛉日記』を書いた道綱母の異母妹であり、この実母も相応の教養人であったかも知れない。
しかし、「更級日記」を読んだ印象で言うと、作者は、実母からよりも多く、この継母から知的好奇心や教養を授けられたのではないかという感じがする。

もう一点。訳注者は、「源氏物語」における「紫の上」と「明石の姫君」の物語との関連についても触れている。
「落窪物語」や「住吉物語」のような「通俗」な物語の中では、継母は、悪役となることが多い。
それに対して、「源氏物語」のような「高級」な(という言葉をあえてここでは使いたい。)物語の中では、理想的な継母と継子の関係というものもあり得たわけだ。そして、少なくとも晩年の「更級日記」の作者は、自分と継母の関係を、理想の方に近いものとして描こうとしたようだ。

継母の作歌が『後拾遺集』にあるということだから、いずれ調べてみたい。

「更級日記」は小品ではあるが、読むごとに味わいの深さを感じさせる古典だと思い始めている。

■日本古典文学に関する日記の目次
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■更級日記に関する日記の目次(2015年02月20日)
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■落窪物語/住吉物語に関する日記の目次(2015年07月08日)
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