今年は諸事情で、鑑賞をあきらめようと思っていた
イタリア映画祭2015。
ただ、毎回製作される分厚いカタログだけは手に入れておきたかったので、街に出たついでに購入。
…と思ったのだが、いざ会場に来てみてチケットが余っていると知るとなんだか気もそぞろ…。
ということで2本だけ(笑)
『いつだってやめられる』
シドニー・シビリア監督の長編デビュー作。
『ブレイキング・バッド』のイタリア版かと思う設定。
神経性物学者の教師が職を失い、生活のために知識を使って<脱法ドラッグ>で一儲けしようというコメディ。
日本のニュースでもよく目にする法のイタチごっこなので、他人事ではない発想。
家庭を守るために渋々悪事に手を染めたのに、それが原因で家庭が崩壊するのはなんとも皮肉な話。
「いつだってやめられる」といきがるものの、時遅し…。
主人公らの作るドラッグの評判が良くなれば、当然地元マフィアがだまっていない。
逃げ場がなくなり、困り果てる。
ただ、これで終わらない。
そこはタランティーノにも通じるような(ものすごくおシャベリな映画で)娯楽の要素でまとめられる。
最大のピンチを鮮やかに切り替えるアイディアは見もの。
『スティング』や『ユージュアル・サスペクツ』顔負けのあっと驚く仕掛けに拍手!
一方では、本物の才能があるのにもかかわらず、正当に評価されていないという監督自身の皮肉も込められているのかもしれない。
主人公らの抜け目ない強かな生き方には得るものもある。
こういう面白いのに出会うから映画祭は「いつになってもやめられない」!(笑)
(イタリアのゴールデン・グローブ賞で最優秀コメディー賞を受賞)
『黒い魂』
ガラリと変わって、シリアスなマフィアもの。
そう聞けば『ゴモラ』や『ゴッドファーザー』などを思い浮かべる人も多かろう。
舞台はイタリア南部のカラブリア州アスプロモンテの山村。(長くつの先っちょあたりらしい)
犯罪組織の一家には三人の兄弟がいる。しかし、古くから血を血で洗う稼業にうんざりしている長男リチャーノは他の家族と距離を置き牧畜で生計を立てる。
しかし、それを良しとしない息子のルイは対立ファミリーへちょっかいを出してしまい、大きな騒動に発展する。
土着愛のある地域で、古くから繰り返し抗争を続けてきた間柄なのだろう。
少し、収まっていても平和になったわけじゃなく、次の噴火に向けてマグマのエネルギーを蓄えているに過ぎない。
しかし、いつまでもそんな生き方では未来があるとは思えない。
ただ、沸点の低い家族の生き方をそう簡単に変えることも出来なさそう…。
三兄弟というのが、なにやら寓話的な匂いを醸し出す。
閉鎖的で古い因習に縛られる悲劇とでもいうべきか、復讐の連鎖に葛藤して出した答えが衝撃的。重苦しい空気が困惑を伴ってさらにやるせない気持ちにさせる。
これしか選択肢がないとしたら悲しすぎるし、後を引く結末。
実際に南部ロケをして、俳優も南部出身者でかため、それのみならず半分くらいは地元の素人を使ってリアリティを出しているという。
イタリア半島南部の風光明媚な景観とは裏腹な陰鬱な世界が広がる。
方言がかなりきついらしく、イタリア語の字幕がついていたのは面白い。
(ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品)
フランチェスコ・ムンズィ監督
映画の話とは関係ないけど、隣にかなり神経質なお客さんが座っていて、周囲でかすかな物音でもさせようものなら文句をつけている。
いちいち両手を「OMG〜」という風にリアクションを取るのでかなり目障り。
ついにはその隣の人と、やれ「うるさい」の「お前こそ手をあげるな」と火花散らしていた。
あー、流血沙汰にならなくて良かった。
全く生きた心地がしなかった。(笑)
これだからシネフィルが集まる映画祭は(ry
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