『寄生獣　完結編』

『寄生獣　完結編』

　人気漫画の実写化の後編。
前編のアンサー編だが、落としどころには一定の評価は出来るものの、少しもたついたか？

　パラサイト生物と人間の戦いの中、人間とパラサイト生物（ミギー）が同居する＜泉新一＞が抱える自己矛盾をいかに解消するかが人類とパラサイト生物の未来にもつながる。
そういう路線で描かれたものだと思う。
暴走し、パラサイト生物以上に攻撃的な物体になりかける新一を人間側に食い止める役割を務める恋人の村野里美。
人類の運命を握る上でこの上ないキーパーソン。

　前編で＜親離れ＞した新一にとって、未来を指し示す可能性について言及する田宮良子と対峙する場面こそクライマックスだと信じていたが、その後ミギーの後始末で余計なエピソードをダラダラ描いてしまったために、焦点がボケた…というか弱くなってしまった気がするのが惜しい。

　全てをまんべんなくフォローすることがサービスではないと思うのだが…、人気原作ゆえ英断ができなかったのか。
村野里美の＜見せ場＞はもう少し自然なカット割りができなかったのだろうか。（笑）
普通じゃない生き物だらけの世界で、唯一と言っていいまともで平凡な存在が、それまでの狂気の世界をひっくり返すくらいの「ああ、愛って素晴らしいな」と思わせるインパクトを残して欲しかった。

　完結編を支えるのは泉新一よりも田宮役の深津絵里と言っても差し支えないか。
浅野忠信、ピエール滝といった不気味さを醸し出すキャストは合っていると思う。

　予期せぬ点で楽しめたのは、『ターミネーター』シリーズへのアンサーか。
クライマックス・シーンは監督が否定しても『T2』だよね。（笑）



　エコロジカルな視点から人間の傲慢さを批判するのに、上から目線で語られては効果も半減。
そういう哲学的なテーマを語るのには、時間が足りないのかもしれないが、説明臭く感じさせたのはプラスだとは思わない。