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2012年03月18日00:32

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『裏切りのサーカス』

裏切りのサーカス

 スパイ映画は数あれど、これほど見終わって頭が疲れる映画もそうはないかも。
元MI6のジョン・ル・カレの原作だけあり、実にリアルなスパイ映画。
いや、本当にリアルかどうかは、推察に過ぎない。
派手な銃撃戦やアクションなど一切なく、ひたすら“チェス”を楽しむかのような頭脳戦が繰り広げられる。同じ英国諜報部を舞台にしても「007シリーズ」とは対極にある映画。(この不親切さが大人の鑑賞者にとっては最大の親切か?)

 まずは時代と舞台。
ここは知っておくべきポイントか。
冷戦時代の真っ只中、英国MI6とソ連KGBが対立中、英国諜報部の上層にもぐりこんだ二重スパイである<もぐら>を探し出すというもの。

 スマイリーという名が不釣合いなほど無表情の老スパイを、これがはじめてのオスカーノミネートとなったゲイリー・オールドマンが引き算の芝居で魅せる。
他にもコリン・ファレル、ジョン・ハート、トビー・ジョーンズ、キアラン・ハインズなど渋めで胡散臭そうな実力派俳優が居並ぶ。
役者は架空の人物を演じる点で、すでに嘘をついている。
こちらが二重の嘘を見抜けるかどうか…、すでに戦いは始まっている。
使命と人情の板ばさみの中でターゲットを追い詰める心理戦には、思わず息を呑む。

 “コードネーム”、作戦名など様々な固有名詞が乱れ飛び、時間のつぎはぎも見られるため、すばやく理解し頭を切り替えないと「あれれ、なんのことだっけ?」になりかねない。
(実際、一度目ではわかりませんでした。)ふらふら

 『ぼくのエリ 200歳の少女』を監督したトーマス・アルフレッドソンが冷ややかで古色蒼然とした匂いを立たせたフィルムの質感も見事。

 分かりやすい娯楽映画を期待する向きには物足りないかも知れないが、それらにはない心地よい疲労感が味わえる。

フォト


(4月21日より公開)
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