『SHAME シェイム』

『SHAME シェイム』

　中毒、依存症…何かに人は依存しがち。
行きにくい現実を生き延びるために自然と身につける処方箋のようなものか。

　SEX依存症の男ブランドン、仕事もルックスも悪くない、女を落とすテクも持ち合わせている。
なのに性のコントロールだけが不自由とは気の毒だ。
これぞまさしく＜ビョーキ＞の世界。
そんな難しい役どころを文字通り体を張って＜マイケル・ファスベンダー＞が演じる。
作品の性質上、SEXシーンも多々あるが、見ていてちぃーっとも快楽を感じない。
SEXが苦行のようで痛々しいばかりなのだ。
だが身につまされる点もあり、必ずしも他人事とは思えない。

　大同小異の妹シシー（キャリー・マリガン）も別の意味で依存症。
病んだ兄妹、さすが血がつながっている…とは褒め言葉になっていないな。（笑）
ともかくこの兄妹を演じた二人の芝居が作品を決定的にしている。

　おそらくは源流となるところがあると思われるが、そこはほぼ想像の域。
割愛されたのは予想がつきやすい凡庸な原因ということなのだろうか。

　人の愛し方が分からない主人公を見ていると胸が苦しくなるばかり。
浮かび上がるは現代人の孤独な姿…。



　かつての名俳優と同じ名を持つスティーヴ・マックイーン監督。恥部をさらけ出して描いたあたりタダ者ではない。いつの日かこの名を語るとき「俳優でもいたんだよ」といわれる時が来るか。
とりあえず次回作が気になる監督ではある。