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2012年02月27日12:48

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「チェーホフなんかこわくない」とは言えなかった

 チェーホフは過去に短編小説をいくつか読んだことがあるが、夢中になることはなかった。ロシア文学特有のずしりと重いムードがどの作品にも立ちこめていて、それに疲れてしまったのだ。読みはじめるたびに「さあ、読むぞ」と気持ちを奮い立たさなければならないのでは、心軽やかに楽しむことはできない。少なくともぼくにはそうだった。
 それが戯曲『桜の園』を読むことになったのは他でもない、この六月に三谷幸喜がパルコ劇場で上演することになった記事を目にしたので、予習のために図書館から借りたのである。
 記事にある三谷幸喜の言葉によると、こういうことらしい。
「チェーホフは『桜の園』を喜劇としていて、実際初めて戯曲を読んだときには、すごく笑えた。でも、僕が見た『桜の園』の舞台は一度も面白かったことがない。だから、僕がチェーホフが本当にやりたかったものを作ろうと思った」
 チェーホフの喜劇!
 喜劇好きのぼくが読まない手はない。記事を目にした当日に文京区図書館に予約した。
 で、読んでみた。スラスラと読み進んでしまうのではなく、主人公ラネーフスカヤを浅丘ルリ子さんが演じるらしいので、パルコ劇場に立つ浅丘ルリ子さんが凛とした立ち姿で大きな目を輝かせてしゃべっているところを想像しながら。さらに他の登場人物たちの立ち居振る舞いも想像しながら。それからもちろん、笑えるところを見逃さないように。何しろ三谷幸喜は「すごく笑えた」と言っているのだ。同じようには笑えなくても、半分ぐらいは理解できるはずだと信じて。だからたった百二十ページ程度のこの作品に三日もかけた。
 完敗だった。
 ここが笑いどころなのかなという場面は三カ所ぐらいあったが、“すごく笑える”ようなレベルではなく、クスリと頬をゆるませることすらできなかった。
 過去にも似たような体験をしている。
 シャイクスピアである。シャイクスピアにも悲劇や史劇とともに喜劇がある。『じゃじゃ馬ならし』や『ヴェニスの商人』などが喜劇に当たる。だがビタ一文笑えなかった。

 たぶんこれらは政治体制や時代背景といった予備知識を持っていないと理解できないのだろう。そしてぼくは予備知識をほとんど持っていない。
 その結果、ぼくは改めて自分の浅さを痛感することになり、少し落ちこむ。

 ただやはりチェーホフは楽しめるようになりたいと思っているので、誰かがモジョでチェーホフ・トークレクチャーを開催してくれることを祈るばかりである。

*タイトルはエドワード・オールビーの戯曲『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』からパクってヒネりました。

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