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2026年10月24日22:07

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「女ともだち」ミケランジェロ・アントニオーニ〜空疎な男女の人間関係〜

ミケランジェロ・アントニオーニ作品は昔から大好きなのだ。その荒涼とした風景とシンクロするような空っぽな人間たちの彷徨。ブルジョア階級の人々の無意味で喧騒的なパーティーが描かれつつ、その場に馴染めきれない登場人物たち。海、川、砂丘、工場街や団地や通り。そこは誰もいない空漠たる風景が広がっており、その風景に取り残されたように人々は彷徨う。喧騒と静かな空白。後のヴィム・ヴェンダースのロードムービーやジム・ジャームッシュの映画にもつながっていったようにも思う。描かれる風景が心象風景となって茫漠と広がっている。「愛の不毛三部作」と言われるアントニオーニの代表作『情事』(1960)、『夜』(1961)、『太陽はひとりぼっち』(1962)は、いずれも傑作だと思うし、初のカラー作品の美しく不安気なモニカ・ヴィッティの『赤い砂漠』も忘れられない傑作である。そんなアントニオーニ初期5作を集めた特集上映「ミケランジェロ・アントニオーニ レトロスペクティヴ 愛の不毛、彷徨える魂」として劇場公開されたので、観ていなかった作品を鑑賞。『女ともだち』は初期の1955年の作品で、2K修復版で公開された。



ミケランジェロ・アントニオーニとフェデリコ・フェリーニなどの監督による6編の短編を集めた『街の恋』(1953)という作品がある。イタリアの「ネオリアリズモ」運動の中から生まれたオムニバス映画だ。その中でアントニオーニは、『自殺の試み』という作品を撮っている。自殺をしようとした人々をスタジオに集め、その愛が壊れた物語をインタビューと再現映像で表現した作品だ。失踪とか自殺にミケランジェロ・アントニオーニは強い関心を寄せる。この『女ともだち』も、女性の自殺未遂で始まり、その女性が再び自殺して映画は終わりへと向かっていく。満たされぬ人生への空虚感や満たされぬ愛、そしてバラバラな人間関係。

クレリア(エレオノラ・ロッシ=ドラゴ)という女性がローマの洋装店の支店オープンを任されて故郷のミラノにやって来る。そして宿泊していたホテルの隣の部屋の女性ロゼッタ(マドレーヌ・フィッシャー)の自殺未遂の現場に遭遇する。ロゼッタの友人モミナ(イヴォンヌ・フルノー)、マリエッラ、陶芸家のネネ(ヴァレンティナ・コルテーゼ)、その夫の画家ロレンツォ(ガブリエル・フェルゼッティ)、建築家のチェザーレ(フランコ・ファブリッツィ)たちとクレリアは知り合うようになる。一方、クレリアは新店オープンまでの遅れた工事にやきもきしながらも、なんとか新装開店のオープニング・ショーまでこぎつける。途中、店の工事の現場監督カルロ(エットレ・マンニ)と親しくなり、惹かれていく。クレリアが育った下層階級の下町を同じ下層階級出身のカルロと一緒に歩く場面がある。モミナたちは、ブルジョア階級の裕福な女性たちだが、クレリアは華やかなファッションの世界に身を置きつつ、下層階級出身だったことが明らかになる。クレリアは仕事で今の位置まで上り詰めたのだ。

みんなで海へ行くシーンがこの映画の一番、魅力的なところである。街中のパーティーや部屋の中での複数の登場人物たちの無意味でくだらない会話。ロゼッタの自殺の原因は?ロゼッタをモデルにロレンツォが描いた絵のある画廊。男女の噂話やゴシップ、しょせんはみんな他人事なのだ。そんな登場人物たちが、広い空間の海辺で描かれることによって、逆にそれぞれの身勝手さが浮き彫りになっていく。女は遊戯のように男を誘惑し、浜辺の草むらの陰でキスする。男女の組み合わせは入れ替わり、群れ、動きつつ、空虚感が漂うばかりだ。帰りの列車で自殺未遂したロゼッタに親身に寄り添うのは新しく仲間に加わったクレリアだった。

ロゼッタは、画家であるロレンツォと不倫関係にあった。クレリアは失意のロゼッタの力になろうと、自分の店で働くように勧める。一方、友人のモミナはロレンツォとの恋のために、部屋の鍵を渡して協力する。モミナ自身は夫と別居中で、チェザーレを愛しているも、チェザーレもまた浮気性だ。ネネはニューヨークで個展の話が決まり、新たな道が拓けつつあるが、夫のロレンツォは、そんな妻に芸術家として嫉妬をしている。悶々としているロレンツォに、ロゼッタは妻と別れて自分を選ぶよう迫るが、ロレンツォは拒否する。男に絶望して入水自殺して、今度は本当に死んでしまうロゼッタ。川辺のロングショットで淡々とその死を描く。

クレリアはモミナの無責任な行動がロゼッタを死に追いやったことを店のオープニング・パーティーの場で糾弾する。ロレンツォは妻のネネにニューヨークに行かないでくれと懇願し、ネネもまたロレンツォの側にいることを約束する。クレリアは、店の大事な客であるモミナに強く当たったことで、店を辞めてカルロとトリノで暮らそうと思うが、店のオーナーからローマに戻って一緒に仕事しようと誘われる。カルロとの愛よりも仕事を選んで、クレリアはローマへの列車に乗る決断をする。ラストは、駅で最後に会って別れましょうとカルロに告げるクレリアだったが、カルロは現れず、ローマへと戻って行くのだった。物陰から、その様子をホームで見守るカルロの姿があった。

どうという物語ではない。それぞれの男と女の関係が描かれるだけであり、そこに劇的な愛があるわけでもないし、失恋の自殺は描かれるが、それが悲劇として描かれているわけでもない。くだらない男やくだらない女たちである。仕事か愛かの選択も中心的なテーマになっているわけでもない。群像劇なのだが、とりたてて劇的な展開もない。ただの無意味なおしゃべりがあり、着飾った美しい女たちと愛や仕事が描かれる。そこに心が通い合わない空疎な関係が描かれるだけである。男を真剣に求めた女は死を選び、下層階級から富裕層の仲間入りをした女性は愛よりも仕事を自分の居場所に選んだ。複数の男女たちのバラバラな関係と空転する愛や友人関係が、後のアントニオーニの映画にさらに発展され、繋がっていく。


1955年製作/106分/イタリア
原題または英題:Le Amiche
配給:ザジフィルムズ

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
原作:チェーザレ・パベーゼ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、アルバ・デ・チェスペデス
撮影:ジャンニ・ディ・ベナンツォ
音楽:ジョバンニ・フスコ
キャスト:エレオノラ・ロッシ=ドラゴ、ガブリエル・フェルゼッティ、フランコ・ファブリッツィ、ヴァレンティナ・コルテーゼ、イヴォンヌ・フルノー、マドレーヌ・フィッシャー、アンナ・マリア・パンカーニ、マリア・ギャンバレリ、エットレ・マンニ
☆☆☆3
写真引用(c) TITANUS Licensed by RAI Com S.p.A. - Rome, Italy. All Rights Reserved.

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