『宝島』(2019)に続いて、『みんなのヴァカンス』(2020)、『女っ気なし』(2011)などのフランスのギヨーム・ブラック監督が2023年のコロナ禍で撮った38分の短編ドキュメンタリー。U-NEXTで鑑賞。教室でマスク姿なのが、コロナが蔓延していた頃を思い出す。
ドキュメンタリーと書いたが、『宝島』同様にフィクションのようなドキュメンタリーのようなギヨーム・ブラックの映画としか言いようがない。女の子たちのセリフにはキャラクターがハッキリつけられ、現実的にもそうなのか分からないが、友との距離感についての映画だ。カメラは1台のフィックスカメラでドキュメンタリーのように女の子たちの会話を撮影する。プロの役者には見えない。生身の身体と身振り、さりげない日常的なおしゃべりや沈黙がそのまま記録されている。
フランス北部の町エナン=ボーモン。もうすぐ夏休みになる高校では、親友のリンダとイリナが二人で踊りながらTikTokを撮っている。日本でもどこにでもいるような普通の高校生たち。この夏、リンダは引っ越すことになっている。これまでも引っ越しを繰り返してきたリンダは、人と距離をいつも保ってきた。引越しをすると、これまでの関係をすべてシャットアウトし、人と深く関わらないようにしてきた。「引っ越したら連絡しない。SNSもブロックする」 と言うリンダに驚くイリナ。そのほうが傷つかないし、ラクだからと語るリンダ。将来も人と深く関わらなくて済むような、情を通じなくて済むような仕事を望んでいる。
TikTokでダンスを見た男の子がイリナに声をかけてくる。イリナは満更でもないが、それをリンダに伝えると、「私は彼は嫌い」、「好きにしたら」と言われてしまう。自分に閉じこもるリンダと世界と関わろうとするイリナ。イリナは友達はいらないと言って変わろうとしないリンダの態度に不機嫌になっていく。最初のTikTokのダンスもそうだが、学校でのバトミントンの練習場面、リンダが男の子が山道を走るところなど身体を使って関係を作ろうとする場面が印象に残る。つまりそれ以外は、女の子たち2人または3人のフィックスで話をする場面ばかりだからだ。そしてラストは海辺で3人の女の子たちが水着姿で戯れるシーンだ。輝くひと夏の思い出。自分の殻に閉じこもってきたリンダも屈託なく笑顔で楽しそうだ。
SNSの時代になって、人との関わり方はますます難しい時代になった。関係を持つことに臆病になる女の子と、関係を持とうとする女の子の心の揺れをリアルに切り取った映画だ。ギヨーム・ブラックという監督は、プロの役者のフィクショナルな身振りを排除して、ドキュメンタリー的な記録性で人間そのものの生々しさを描き出そうとする稀有な才能の持ち主だ。
2023年製作/38分/フランス
原題または英題:Un pincement au coeur/Linda and Irina
配給:エタンチェ
監督:ギョーム・ブラック
撮影:エマニュエル・グラ
編集:パオラ・テルミン
音楽:パオラ・テルミン
写真引用(C)bathysphere et Le BAL / La Fabrique du Regard 2022
☆☆☆3
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