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2026年03月30日21:08

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「そして彼女たちは」ダルデンヌ兄弟〜それぞれの選択と未来の希望〜

『トリとロキタ』(2022)以来のダルデンヌ兄弟作品だ。ダルデンヌ兄弟の作品はいつも過酷な現実を生々しく描いているので重い。それでもいつも彼らの映画から目が離せない。だから公開されたら必ず観てしまうのだ。『その手に触れるまで』(2019)、『午後8時の訪問者』(2016)、『サンドラの週末』(2014)、『少年と自転車』(2011)、『ロルナの祈り』(2008)と観続けている。『ある子供』(2005)などそれ以前の作品も観ているが、レビューは書いていない。とにかくダルデンヌ兄弟の作品は、貧困や移民、子供や家族の重い現実を切り取っていて目が離せないのだ。

さて本作だが、ダルデンヌ兄弟には珍しい群像劇だ。群像劇といっても、複数の人物が絡み合う群像劇ではない。母子支援施設で暮らす5人の若き母親たちのそれぞれが並列して描かれていく。そしてそれぞれの選択をした彼女たちのラストは、少し希望が見えている。決して暗くなる終わり方ではない。だから見終わった後は、爽やかである。ラストのアポリネールの詩「別れ」からモーツァルト「トルコ行進曲」へとつながっていく歌とピアノの音が、明るく希望に満ちたものにしているのだ。ダルデンヌ兄弟の映画でこんなに希望に満ちた終わり方をする映画は初めてではないか。新境地と言えるのかもしれない。

ダルデンヌ兄弟の映画のカメラは、ドキュメンタリーのように主役のそばにカメラは寄り添う。客観的に引くのではなく、その主役の思いや感情を取り逃がさないようにカメラを向け続ける。だからこの映画では、相手役の男の子の心情や行動を描いたりしない。何を思って、彼女と子供から逃げていったのか?他者の視点を客観的に描写するのではなく、あくまでも主役の視点で描き続けるのだ。多面的な視点がなく、若くして母親になった少女たちの不安や悲しみ、母への思いや彼氏への思いを彼女たちの視点で描くのだ。当然、ドキュメンタリーのような手持ちカメラの映像が多くなる。

ベルギー東部の町リエージュ近郊の母子支援施設が舞台だ。未成年で妊娠し、出産や子育てが困難と思われる少女たちの支援施設であり、彼女たちはまったく孤立していないのが救いだ。赤ちゃんを育てることに戸惑っている彼女たちをサポートする人たちがいるので、『トリとロキタ』のような孤立無縁ではない。しかも彼女たちは共同生活をしており、食事を作るのも当番制。施設から学校へ通ったり、新しく住む場所を探したりしている。

お腹が大きくなり出産間近の少女が、自分を産んで捨てた母親に会いに行く話、子供の父親の彼氏が彼女を置いて逃げてしまう話、実家の母親が暴力的な男と暮らしており、実家で母とは一緒に住めないと判断した女性は、赤ちゃんを裕福な音楽家の夫婦に養子に出す決意をする話、彼氏と一緒にアパートを見つけるも自分の薬物依存から抜け出せない女性の話など、若き母親たちはそれぞれに悩みと不安を抱え、ある決断をし、人生の選択をする。

捨てられた母親に産まれた子供を連れて会いに行くと抱きしめられる場面があり、いなくなった彼氏のことを諦めた女性は仲違いしていた姉と和解し、母子で姉と一緒に住むことになる。また、養子として預けることを決めた母親は、18歳になった娘に渡す手紙を書いて愛する我が子への思いを描く。二人で結婚の証人になってもらうように頼みに行った音楽教師は、二人のために歌を歌い、ピアノを弾く。それぞれの若き母親たちの選択を、映画はそっと見守るように温かく描いている。


2025年製作/104分/G/ベルギー・フランス合作
原題または英題:Jeunes mères
配給:ビターズ・エンド

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
製作:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ、デルフィーヌ・トムソン、ドゥニ・フロイド
共同製作:ミヒール・ドン ルーカス・ドン
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
撮影:ブノワ・デルボー
美術:イゴール・ガブリエル
衣装:ドロテ・ギロー
編集:マリー=エレーヌ・ドゾ
キャスト:バベット・ベルベーク、エルサ・ウーベン、ジャナイナ・アロワ・フォカン、ルシー・ラリュエル、サミア・ヒルミ、ジェフ・ジェイコブス、ガンター・デュレ、クリステル・コルニル、ヌインディア・ヘア、ジョエリー・ムブンドゥ、クレール・ボドソン、エバ・ジンガロ、アドリエンヌ・ダンナ、マチルド・ルグラン、エレーヌ・カトラン、セルマ・アラウイ
☆☆☆☆4
写真引用(C)Les Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange- Proximus - RTBF (Télévision belge) / Photo(C)Christine Plenus

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