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2026年03月27日13:47

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「儀式」大島渚〜奇怪でグロテスクな家父長制の家族と空虚な儀式〜

大島渚の映画の中でも難解と言われている作品。家父長制度の頂点に君臨するのが佐藤慶。バケモノ的な権力を持ち、女たちを犯し孕ませ放題の性欲の持ち主である。『白昼の通り魔』の通り魔犯罪者の佐藤慶に家父長的な権力を持たせた感じだ。親族が集まる葬式と結婚式などの儀式だけを舞台にしながら、愛憎まみれる親族の複雑な人間関係を描く。大島渚の映画は、いつも死とセックスが大きなテーマになっている。登場人物の多くが死ぬ。自殺や心中も多い。そして歌が歌われる。この映画でも共産党員の叔父・小松方正の結婚式の宴席で、いろんな歌合戦が始まる。軍歌やインターナショナル、寮歌や馬賊の歌、芸者ワルツ、戦友・・・。歌はそれぞれの人生の背景を映し出す。なぜか佐藤慶も賀来敦子も小山明子も儀式では眉がなく、能面のようで不気味だ。

親族の中でも気の弱い桜田満洲男(河原崎健三)が主人公。祖父の直系の息子でありながら、後継ぎのライバルである従兄弟の輝道(中村敦夫)に能力は劣っており、満州男は桜田家の呪縛から逃れるように野球に夢中になる。子供の頃、満州男が投げ、輝道がキャッチャーでボールを受け、律子(賀来敦子)が打つ野球遊びをする。節子(小山明子)が審判だ。無邪気で幸福な子供時代の思い出が最初と最後に出てくる。

満州男は親戚の律子と共に、彼女の恋人であった輝道本人から「テルミチシス」という電報を受け取り、遠路はるばる南の島にある彼の家に向かう。その現在進行形の旅の過程に過去の葬式などの儀式の場面が挿入されていく。敗戦後、満州から日本に帰って、日本の未来に絶望して自殺した満州男の父・韓一郎の一周忌から始まる。

満州男は美しい叔母の節子(小山明子)に恋しており、節子も好きだった韓一郎の息子である満州男を可愛がる。節子は祖父・一臣(佐藤慶)の腹違いの姉の私生児なのだが、一臣と肉体関係がある。節子は満州男の父・韓一郎と恋仲であったが、一臣に引き裂かれた。また満州男の従兄弟である輝道は、満州男の父・韓一郎の許嫁の女性と一臣の間に生まれた子供のようだ。そして祖父・一臣の子供は、みんな母親が違うという奇っ怪な親族関係。桜田守(戸浦六宏)、桜田勇(小松方正)、桜田進(渡辺文雄)、桜田節子(小山明子)。誰が誰の子供なのか、よく分からない。祖父をはじめ、戦争中の大人の男たちはみんな戦争犯罪人に見えたという満州男のモノローグが入る。戦前から戦争をくぐり抜けてきた男たちの戦後。

満州男の母の葬式では、一臣が節子を喪服のまま寝かせて愛撫する。それを見ていた輝道が、一臣がいなくなってから節子にセックスの手ほどきをお願いする。それを複雑な思いで見ていた満州男は、妹かもしれない律子にキスをする。なんとも複雑な親族関係の中で、愛とセックスと憎しみが絡まり合う。そして節子は一臣に殺されたのか自殺だったのか分からないまま、日本刀で刺されて森の中で発見される。日本刀を引き抜くと、小山明子から血がドバッと吹き出る黒澤明の映画のような衝撃的なシーンがある。

一臣の勧めで決められた女性と結婚することになる満州男だったが、その結婚相手が式当日にいなくなる。政財界の大切な客たちが大勢来るというので、花嫁不在のまま満州男の結婚披露宴が行なわれるというバカバカしい儀式が展開される。花嫁不在のお色直し。そして警察官になった叔父の進(渡辺文雄)の息子(土屋清)は、右翼テロ青年のように披露宴会場で叫び、その後事故死する。その葬儀で、枕を相手に「真の日本女性」だと言って狂ったように初夜を演じて見せる満州男。一臣にも抱きつき、払いのけられ、今度は棺から遺体を出して自分が棺に入る。狂ったような満州男の支離滅裂な行動に、律子も棺に入り慰めるのだが、輝道は律子とつないだ手を離し、桜田家を出ていくのだった。この修羅場は滑稽でシュールだ。

そして一臣が死に、その盛大な葬儀の喪主を務める満州男。ヘトヘトに疲れ果てて桜田家の重圧に息が詰まり、土に埋められるという妄想に苦しむ。それは満州で生き埋めにされ置きざリにしてきた赤子の弟を思い出してのことだ。そんな満州男を律子が「可哀相な人」と慰める。満州男と律子が輝道が暮らしていた南の島に着くと、輝道は遺書を残して裸で死んでいた。遺書には祖父一臣の死亡記事とともに、「真に桜田家を継ぐものは僕だけだ。僕は自らを殺すことによって、ここに桜田家を滅ぼす」と書いてあった。そして律子は輝道の死体のそばに寄り添って、自ら死を選ぶのだった。

戦前から続く家父長的な桜田家を葬るために、孫の代の者たちが自らの肉体の死をもって決着を付ける。それは戦前から続く呪われた共同幻想でもある。奇怪でグロテスクな性と権力の家族像と旧態依然たる体制、国家、そして日本の空虚な取り繕う儀式性が描かれている。


1971年製作/123分/日本
製作:創造社
配給:ATG

監督:大島渚
製作:葛井欣士郎、山口卓治
撮影:成島東一郎
音楽:武満徹
美術:戸田重昌
キャスト:河原崎建三、中村敦夫、賀来敦子、佐藤慶、小山明子、乙羽信子、小松方正、渡辺文雄、三戸部スエ、戸浦六宏、小沢栄太郎、原知佐子、殿山泰司
写真引用コピーライト大島渚プロダクション
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