mixiユーザー(id:3912568)

2026年03月12日17:13

66 view

「東京の宿」小津安二郎〜歩く後ろ姿を描く小津映画〜

小津安二郎の1935年の無声映画。小津映画の登場人物は後ろ姿が基本ベースだ。電信柱が並んだ一本道を親父と二人の息子の3人がトボトボと歩く後ろ姿が映し出される。その最初のショットから、まさに小津映画なのだ。前から顔を捉えたショットをいくつか挟んだ後にまた歩く後ろ姿に戻る。後ろ姿には人生の悲哀が出る。ひもじさを抱え子供たちが座って待っているのも後ろ姿だし、仕事もなく、金もなく、歩くほかない、何もすることがない後ろ姿がこの映画では何度も映し出される。野原には、木製のドラムが転がっており、電信柱に煙突、そしてガスタンクや工場のタンクが背景にいつも映し出される。「あの門番、憎かったねぇ」と突貫小僧の台詞が反復され、野良犬を見つけては「4銭だ」と追いかけていく子供だち。子供たちの舌を出す「あっかんべぇ」のアクションも繰り返され、想像しながら酒を飲むアクション、食べるアクションで空腹を紛らわせる。坂本武と岡田嘉子が野原で出会って、並んで座るのも小津らしいショットだ。二人の背景にはガスタンクが映っており、カメラは横のやや後ろの方から二人が座るのを捉えている。まさに小津映画そのもののショットだ。この野原に座る二人のショットは後でも繰り返されるが、「人間なんて、なんにも知らない子供のうちが一番だね」と、遊んでいる子供を見て救われる二人。やんちゃな子供に希望を託すのは小津映画ではいつものことだ。

坂本武が出ている喜八シリーズ。妻と離別し家も仕事も失った喜八と小学生の二人の息子・善公と正公は、親子で毎日工場の職を求めて工業地帯をさまよい、宿の客同士の共同部屋で知り合いになった喜八と同じ境遇の女性おたか(岡田嘉子)とその幼い娘の君子に出会う。ある夜、喜八は飯屋をやっている昔なじみの未婚の女性おつね(飯田蝶子)と偶然に出会い、親切な彼女は借家と工場の仕事を見つけてきてくれた。おたかに思いを寄せる喜八だったが、幼い娘の君子が病気になり、おたがが突然いなくなる。ヤケ酒をあおっていた喜八の前に、酌婦として現われたおたか。娘の入院費を稼ぐために、こういう仕事をするしかなかったと涙ながらに語る。そして喜八は、おたかのために金を盗み、盗んだ金をおたかの病院に送り届けると、おつねに息子の世話を頼み、警察に出頭するのだった。

喜八が金を盗む場面は描かれていない。省略の手法。仕事を頼む場面も省略して、子供たちが待っている場面を反復させている。前半はコメディ要素が強く、特に前半の突貫小僧と末松孝行の二人の子役がいい。野良犬を捕まえた金はメシにすると言いながら、帽子を買ってしまったり、風呂敷包みをどちらが持つかで喧嘩して、弟が道端に置いてきてしまい、どっちが取りに戻るかの意地のを張り合いをする場面の面白さ。子供の演出は本当に上手い。後半は『出来ごころ』のような失恋話かと思ったら、女のために喜八は盗みまでしてしまう。

喜八シリーズは、『出来ごころ』(1933)、『浮草物語』(1934)、『箱入娘』(1935)、『東京の宿』(1935)の4本とされており、飯田蝶子が『出来ごころ』以外の3本で「おつね」役を演じている。


1935年製作/80分/日本
配給:松竹

監督:小津安二郎
脚本:荒田正男、池田忠雄
撮影:茂原英雄
キャスト:坂本武、岡田嘉子、飯田蝶子、突貫小僧、末松孝行、小島和子
☆☆☆3
写真引用コピーライト1935 松竹株式会社
5 7

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年03月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031