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2026年02月14日14:52

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「冬のなんかさ、春のなんかね」今泉力哉〜斬新で恥ずかしい恋愛ドラマに注目〜

今泉力哉が脚本を書き、演出にも関わっているテレビドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日テレ・水曜22時)が斬新で面白い。これまでにこんな恋愛ドラマがあっただろうか。恋愛を描く場合、たいていは一つか二つの恋が結ばれるかどうかに焦点を当てる。ある人と別れて別の人を好きになる。その過程と葛藤とすれ違いやモヤモヤ。あるいは二人の相手の間で揺れる恋心。夫や妻、パートナーがいるにも拘わらず、別の相手を好きになるパターンもあれば、好きになってはいけない人を好きになる禁断の恋も多く描かれてきた。男女がそれぞれが平行して別の恋をしてまた元に戻るパターンもあるだろう。1クールの連ドラで10話から12話ぐらいあるが、ほとんどは、一つ、または二つの恋に焦点が当てられ、その恋の過程を仕事や家族や友人関係、生活などの悩みも描きながらドラマを成立させている。しかし、このドラマは土田文菜という女性を演じる杉咲花のいくつの恋を描くのだろう。

これはテレビの連続ドラマという時間特性を上手く使った新しいタイプの恋愛ドラマである。映画だと、せいぜい90分か120分までにまとめなければいけないので、やはり一つか二つの恋を中心に描かないと山場が作れない。しかし、テレビドラマは毎週、それぞれの恋を描いても成立するのだ。その毎週1時間弱の時間特性を使いながら、文菜(杉咲花)のさまざまな恋を描いている。第1話ではコインランドリーで出会う成田凌との恋の始まりと、一年後に成田凌と付き合いながらも同時に付き合っている小説家(内堀太郎)との惹かれ合う二人の関係を描き、第2話では今の彼氏(成田凌)に夢中になれない自分の恋と自分に夢中な小太郎(岡山天音)の恋を描いた。第3話では、実家の富山に帰って高校時代の元カレ・倉悠貴との再会と過去の恋を描いた。遠距離になって続かなかった恋。そして第4話では売れっ子小説家の元カレ、文菜(杉咲花)が小説を書くキッカケをくれた小林ニ胡(�暴啾析此砲箸僚于颪い畔未譴領�が描かれた。さらに第5話は、大学3年の時に出会った純粋で真面目で優し過ぎる細田佳生央太との恋が描かれた。つまり、高校の倉悠貴、大学3年時の細田佳央太、小説家の�暴啾析此∧減擇吠匯廚い硫�山天音、イマ彼の成田凌、先輩の小説家の内堀太郎と6人の男性との恋が描かれているのだ。高校時代から遡っての恋なので多いと言えば多いが、決して不純な男遊びが描かれているわけではない。このドラマは、そんな恋多き女性・土田文菜を演じる杉咲花に共感が持てるかどうか、というのが一つの好き嫌いの別れ目ともなるのであろうが、私はとても正直で魅力的な女性に思える。

何よりもそれぞれの恋の描かれ方のリアリティが素晴らしいのだ。恋をするという物語には、さまざまな要素が含まれている。戸惑いや躊躇い、誤解や思い込み、伝わらないこと、感じ方の違い。人間がそれぞれ違うのだから、感じ方もみんな違うし、受け止め方も違う。好きの温度も表現の仕方も違う。第5話では細田佳生央太の真っ直ぐな恋が描かれていたが、彼が見た「涙」は文菜の目薬だったという勘違いから恋は始まり、初デートの彼のあくびは、デートがつまらなかったわけではなく、前の晩に嬉しくて眠れなかっただけだったという二人の受け止め方のズレが描かれている。いろんな勘違いや思い込みが起きるのが恋であり、些細なことですれ違う。恋人同士になった二人が初めて部屋でセックスするまでのもどかしい間合いをたっぷりとドラマにしているのが、このドラマの特異さだ。今泉力哉のうまくいかない躊躇いの演出こそが、人間を生々しく見せている。このドラマは見ていて恥ずかしい。恥ずかしくなるくらいリアルであり、物事がうまく進まない間合いが描かれているのだ。昨今のテレビドラマは兎角スピーディーにテンポよく物語を進ませようとする。波瀾万丈に起伏に富み、予想を次々と裏切る展開で視聴者を惹きつけていく。予想を裏切るストーリーがすべてであり、謎があってもその伏線を回収していくことで、視聴者は納得し、スッキリする。そんなドラマばかりの中にあって、このドラマはセリフの行間や余白、間合い、躊躇い、ズレや勘違いを丁寧に描くことによって、生々しい人間ドラマを成立させているのだ。こんなにまだるっこしく描かないのが普通なのだ。ある意味でとても贅沢に時間を使っている。ストーリーをどんどん展開させることに視聴者は慣れている。だから店での会話のワンシーンを長々とやり、長いワンカットで会話をリアルな時間そのままに描き続ける。そのテンポの遅さに耐えられない人もいるだろう。だが、それこそがユニークなところであり、このドラマの面白さなのだ。文菜を取り巻くこの男たちとの関係が今後どうなっていくのか、注目していきたい。



ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』

脚本: 今泉力哉
監督: 今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽: ゲイリー芦屋
主演: 杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、�暴啾析此∈拇腸賊�太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
制作協力: AX-ON、Lat-Lon
製作著作: 日本テレビ
エンディング: Homecomings「knit」
写真引用@日本テレビ


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