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2026年01月09日17:18

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ドキュメンタリー「チャップリン」カルメン・チャップリン〜喜劇王にはロマの血が流れている〜

「喜劇王」の呼び名で知られる20世紀の映画スター、チャーリー・チャップリンのルーツに迫ったドキュメンタリー。チャップリン家が全面的に協力し公認した初のドキュメンタリー作品として製作され、チャーリーの息子マイケル・チャップリン(チャップリン4度目の最後の妻との間の子供)が製作・出演、孫カルメン・チャップリンが監督を担当。劇中ではマイケルが父チャーリーの足跡をたどり、俳優で娘のジェラルディン・チャップリンらが家族の視点からチャーリーの素顔を語る。

チャップリンの子供時代は貧困と苦難に満ちており、救貧院に何度も収容される生活を送った。1889年4月16日、チャールズ・スペンサー・チャップリンは父のチャールズ・チャップリン・シニアと母のハンナ・チャップリンとの間に生まれた。父はミュージック・ホールの芸人で人気歌手、母は芽が出ない女優だった。チャップリンは自伝で、ロンドン南部のウォルワースのイースト・ストリートで生まれたとしているが、それは間違いだと手紙が送られてきたという。バーミンガム近郊のスミズウィックにあったロマのコミュニティ「ブラック・パッチ」のトレーラーハウスの中で生まれた、と手紙には書かれていたという。正確かどうかは分からない。ただ、チャップリンの母方の祖母はロマだったらしく、チャップリン自身も自分にはロマの血が流れているということを何度も語り、そのことを誇りに思っていたようだ。

チャップリンの政治的傾向に長年疑いを持っていたFBIは、女性のスキャンダルでチャップリンを訴え、ユダヤ人であり共産主義者であると根拠なく非難されるようになり、アメリカ国外に出て行かざるを得なくなった。そして家族とともにスイスで暮らすようになった。父はそういうゴタゴタを家庭では一切語らなかったという。スイスでの家族の幸せそうなフィルム映像が出てくる。息子であり、ドキュメンタリーの語り手でもあるマイケル・チャップリン(写真)は、父と上手く関係を築けなかったと語っている。世界の「喜劇王」の存在が大きすぎて、子どもたちは父の前ではみんな萎縮してしまうのだという。それでも家の中で『独裁者』でヒトラーを演じたチャップリンの真似をしていたら、父に呼ばれて『ニューヨークの王様』に子役として出演することになった顛末が語られる。やがてマイケルは家出をして好き勝手な暮らしをしていたが、あるとき父に「君は不思議な子だな」と言われたのが嬉しかったという。

マイケルはチャップリンにも自分にも、ロマの血が流れているということをキッカケに、チャップリンにおけるロマの影響についていろいろな人に会い、探っていく。小さな放浪者である山高帽とステッキとダブダブのズボンのチャップリンは、自由と放浪を追い求め、社会から逸脱した弱者の視点を持ち続けた。それが流浪の民であるロマとの繋がりなのではないか。『独裁者』では、髭剃りのシーンでブラームスの『ハンガリー舞曲 第5番』を使っているが、この曲はロマの音楽の影響が感じられる。チャップリンが使った哀愁に満ちた音楽、笑いとペーソスは、ロマと関係があるのだろうか。ロマの映画を多く撮っているトニー・ガトリフにインタビューをしたり、エミール・クストリッツァにも話を聞いている。エミール・クストリッツァが自分がやろうとしていることが、チャップリンと重なる部分が多くあると語る。特に「チャップリン映画は、重力との戦いだ。しかし、一線を超えず、瀬戸際で踏みとどまる」と言っていたのが興味深かった。ジョニー・デップが暮らすトレーラーハウスにもマイケルは訪ねていく。デップがロマのミュージシャンたちとトレーラーの中で延々と演奏を楽しんだ思い出を語る。ドキュメンタリーの中では、ジャンゴ・ラインハルトの演奏などロマ音楽に触れる部分がかなりある。

チャップリンとロマの影響については、本人も「ロマの血が流れている」と自覚していたようなのだから、なんらかの繋がりや影響はあるのだろう。チャップリンはマイノリティや社会的弱者に強く共感を示していた。そして、放浪と自由、笑いとペーソスこそがチャップリン映画の魅力であることは間違いがない。


2024年製作/90分/G/スペイン・オランダ・イギリス・フランス合作
原題または英題:Chaplin: Spirit of the Tramp
配給:アンプラグド

監督:カルメン・チャップリン
製作:アシム・バーラ、カルメン・チャップリン、ドロレス・チャップリン、スタニー・コペット、カルロス・フアレス
製作総指揮:アシム・バーラ、カルメン・チャップリン、ドロレス・チャップリン、スタニー・コペット、カルロス・フアレス、アレクサンドラ・ウッドワード
脚本:カルメン・チャップリン、アシム・バーラ、イサキ・ラクエスタ、アマイヤ・ラミレス
撮影:ケネス・オリベ
編集:フーリア・フアニス
音楽:ナサニエル・メカリー
キャスト:マイケル・チャップリン、ジェラルディン・チャップリン、ジョニー・デップ、トニー・ガトリフ、エミール・クストリッツァ、ストーケロ・ローゼンバーグ、リタ・カベルト、ファルキート
☆☆☆3
写真引用(C)The Caravan Trail, A.I.E, Kwanon Films Limited, and Submarine Sublime 2024
Charlie Chaplin TM (C) Bubbles Incorporated S(写真はマイケル・チャップリン)

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