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2025年11月08日18:15

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秋ドラマ感想 『ぼくたちん家』ほか気になるドラマ

秋ドラマがほぼ出揃い、続けて見るドラマ、脱落しつつあるドラマといろいろ別れてくる頃である。この秋、一番の期待だったのは野木亜紀子と三谷幸喜ドラマ。

まず三谷幸喜ドラマ『もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう』(水曜フジ)だが、設定を1984年渋谷の道玄坂の百軒店界隈を舞台としていて、個人的には懐かしく、名曲喫茶やジャズ喫茶、ストリップ劇場にラブホテル、飲食店やバーなど雑多な店がひしめいてる混沌が魅力的な場所だ。しかし初回の菅田将暉の蜷川幸雄気取りのパワハラ的な演劇演出家の振る舞いに多くの人がついていけなかったし、私自身もゲンナリしてしまった。時代設定が1984年だからいいっていうものではなく、「客なんて分からなくていい」なんていう時代錯誤の独り善がりな演出家の長台詞を、今の時代で誰が受け止められるのだろうか。演劇という独特のジャンルを扱うにしてはストレート過ぎたのではないか。いくら人気俳優がいっぱい出ているからと言って、さすがにキツかった。それでもこれだけの個性的な俳優陣が出ているのだから、それぞれのキャラクターのドラマが混沌としつつ展開していくのを楽しみに見続けている。とぼけた味わいの菊地凛子がいい。

この秋ドラマで期待していなくて意外にも一番面白く見ているのが、『ぼくたちん家』(日曜日テレ)である。脚本は新人の松本優紀。及川光博が不器用なゲイのおじさんでミュージシャンを目指していたが、今は動物飼育員。古いアパートが共同体的な集まりになっていくところは、岡田恵和脚本の『小さい頃は、神様がいて』(木曜フジ)と少し似ている。こちらは3階建てのレトロなマンションで3組のカップルが出会い、寄り添う物語。『ぼくたちん家』はぼろアパートにゲイの動物飼育員のおじさんと、トーヨコに出入りする訳あり中学生の白鳥玉季、その先生で同じくゲイの手越祐也、管理人の坂井真紀、さらに金目当てに娘に近づく光石研、横領事件?で逃亡中の母の麻生久美子など、クセの強い人々が集りそれぞれの秘密を抱えている。第4話の及川光博の台詞が良かった。「なくなったということは、あったということ」。すべてが消えてしまうわけではない。過酷な現実に苦しめられ、かつての良き思い出も塗り替えられてしまいそうになる。しかし、すべてが消えてしまうわけではない。ないことになんてならない。あったことは、いつまでも変わらず「あったこと」。どうしようもない家族やろくでもない父でも、「いいときもあった思い出」は変わらずにある。そんなせつなさが滲んでくる台詞であった。

またミッチーがゲイだからこそ、「できないことがいっぱいあって。だから、できる事を毎日やるしかないんです」、「そしたら、なんかいい感じになる」という台詞は、野木亜紀子脚本の『ちょっとだけエスパー』(火曜テレビ朝日)とも重なっている。どうでもいいような小さな超能力が世界を救う奇妙なSF的ドラマであるが、「それぞれの小さなできること」を積み重ねていくというテーマは同じである。村上春樹の「文化的雪かき仕事」、「センチネルたちのディセントなふるまい」(「もういちど村上春樹にご用心」内田樹より)である。

さらに、『ぼくたちん家』は及川光博と訳あり中学生の白鳥玉季が契約書を交わして偽親子を演じるくだりがあったが、契約書を交わし偽装夫婦を演じる『逃げ恥』の親子版ではあるが、これは『フェイクマミー』(金曜TBS)の擬親子とまさに同じテーマだ。仕事と育児の両立の限界。会社の社長である川栄李奈は、娘を名門小学校に入れるために東大出の優秀な波留に学校での母親役を演じてもらうドラマだ。親子が親子だけでは成立し得ないほど、女性にとって仕事と育児が過重な負担になっている現代。偽親子と名門小学校受験いうコメディで描いたこのドラマは、孤立した現代の核家族、個人主義の限界を示唆している。それが「家」や「アパート」などの共同体的な集まりとなり、相互扶助的精神のドラマに展開している。ニセ家族、ニセ親子といった血のつながらないものたちの助け合いドラマも、そういう孤立社会の新たな道筋を描いているのだ。

そのほか、最近終わってしまった高校時代の天文部の同級生女の子たちの宇宙への夢を描いた『いつか、無重力の宙で』(NHK夜ドラ)は、若い武田雄樹氏のオリジナルドラマで、キャストの女の子たち(木竜麻生、 森田望智、 伊藤万理華、 片山友希)が良かった好感が持てるドラマだった。生方美久、松本優紀、武田雄樹と、このところ若い脚本家が育ってきてるのが嬉しい。

というわけで
・『ぼくたちん家』松本優紀 主題歌「バームクーヘン」もいい!
・『ちょっとだけエスパー』野木亜紀子
・『小さい頃は、神様がいて』岡田恵和
・『もしもこの世が舞台なら、 楽屋はどこにあるのだろう』三谷幸喜
ほか
・『じゃあ、あんたが作ってみろよ』 竹内涼真のマヌケぶりと夏帆
・『フェイクマミー』 川栄李奈と波留
・『良いこと悪いこと』 昔の同級生のイジメのサスペンス
・『ザ・ロイヤルファミリー』 オーソドックスなドラマ。雑草魂がエリートに勝つ
・『シナントロープ』 不穏な空気が気になる集団群像劇。染谷将太。
・『ばけばけ』 高石あかり ハンバート ハンバートの主題歌
・『べらぼう』
あたりを見続けている。
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