これはもう、お見事というしかない。リチャード・フライシャーの傑作である。バラバラに見えた街の様々な登場人物が、ある土曜日の銀行強盗事件ですべて繋がってくる一種の群像劇だ。わずか3日ぐらいの話である。最初はいろいろな人が出てくるので、その関係が分からないまま見続けることになる。なにやら銀行強盗を企てている3人組がいることだけが分かる。
西部の銅山に近いブレイドンヴィルという街にバスでやって来た男、宝石セールスマンのハーパー(スティーブン・マクナリー)、そして列車でやってきた鼻炎の男ディル(リー・マーヴィン)と子供に飴をあげる蝶ネクタイでメガネの男チャップマン(J・キャロル・ネイシュ)。3人は強盗仲間なのだ。銅山の病院の看護婦をやっている美女リンダ(ヴァージニア・リース)と、その彼女に見とれる銀行の頭取リーヴス(トミー・ヌーナン)、さらに借金返済で金に困っていて鞄を盗む図書館司書(シルビア・シドニー)、子供の喧嘩とその家庭の父親シェリー・マーティン(ヴィクター・マチュア)。そんな彼はフェアチャイルド製銅会社に勤めている。写真が趣味でフェアチャイルド製銅会社の社長の息子ボイド(リチャード・イーガン)はアルコール依存症で、妻エミリーとはうまくいっていない。その妻エミリー(マギー・ヘイズ)は男とゴルフ中。そんなバラバラな人物たちの描写で始まり、バスと列車でやって来た3人の男たちがホテルの部屋で銀行強盗の計画の話をして、初めて登場人物が繋がり、物語が始まっていく。
軍隊で勲章をもらった父親と何ももらわなかった父親、そのことで二人の仲良かった子供同士がケンカをする。子供にとって父親が誇りであるために、できることとは何か?そんなとき、銀行強盗の一味が、たまたま父親であるシェリーが乗っていた車を使うため、銃で脅してシェリーは犯人一味に縛られ農家の納屋に閉じ込められるのだ。そして最後に、銀行強盗を終えた一味が車を乗り換えるために納屋に戻って来て、銃撃戦が始まる。軍隊経験もあるシェリーは大活躍で、犯人たちをやっつける。そして息子にとってヒーローとなるのだ。シェリーは、「怖がるのが普通なんだ。完璧なヒーローなんかいない」と言うのだが、子供たちにとって、そんなことは耳に入らない。一方、うまくいっていなかった妻エミリーと前夜にやり直すことを決めたボイド・フェアチャイルドは、心機一転、二人で旅行に行こうと希望に満ちた朝を迎え、前夜に酔って口説こうとした看護婦リンダに別れを告げた。しかし、旅行小切手をもらいに来ていた妻エミリーは銀行で射殺されてしまう。朝生きていたのに、昼に死んでしまった妻の姿に途方に暮れるボイド。命を取り留めた銀行頭取のリーヴスは、病院で看護婦のリンダに、自らの恥ずかしいストーカー的行為を打ち明けるのだった。銀行強盗が起きた「恐怖の土曜日」に、それぞれの人生が変化を遂げる。
映画の中で、機械を一切使わない原始的な生活を送っているアーミッシュ(キリスト教アナバプテスト系の伝統的な宗教)の家族が描かれる。「すべてを神の御心のまま」と受け入れて、シェリーと一緒に縛られ、銃撃戦に巻き込まれるのだが、一切暴力に加担しようとしない。そんなアーミッシュ家族の父親アーネスト・ボーグナインが、息子を撃たれ、シェリーが殺されそうになった時、最後に後ろから犯人の背中をフォークで刺す。アルコール依存症も不倫もストーカーも窃盗も喧嘩も欲望も暴力も・・・、人間は罪から逃がれられないということか・・・。
とにかく脚本と構成が見事な作品である。シネスコのカラー横長画面が、パンを使った映像で、画面に映る多様な人物を同じショットの中で描写しているのが上手い。銀行の下見に来たチャップマン、看護婦のリンダの登場、リンダが気になる頭取リーヴス、さらにその頭取の動きを確認するチャップマン。あるいは、ホテルのバーのカウンターで話すボイドとリーヴス、入っていたリンダが気になるリーヴス。ボイドとリンダが踊るのを見ている強盗二人組、そしてカウンターのリーヴス。関係のない人物が、パンや長回しや移動撮影などショットを駆使しながら、人物の視線が交錯し、複数の人物が画面を出入りする。これだけの多くの登場人物を的確なショットで繋いでいるのが見事だ。
1955年製作/アメリカ
原題または英題:Violent Saturday
配給:20世紀フォックス極東会社
監督:リチャード・フライシャー
脚色:シドニー・ボーム
原作:ウィリアム・L・ヒース
製作:バディ・アドラー
撮影:チャールズ・G・クラーク
美術:ライル・ウィーラー、ジョージ・W・デイヴィス、レオナード・ドス
音楽:ヒューゴ・フリードホーファー 、イオネル・ニューマン
録音:E・クレイトン・ウォード、ハリー・M・レオナルド
キャスト:ビクター・マチュア、リチャード・イーガン、スティーブン・マクナリー、ヴァージニア・リース、トミー・ヌーナン、リー・マーヴィン、マギー・ヘイズ、J・キャロル・ネイシュ、シルビア・シドニー、アーネスト・ボーグナイン
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