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2026年10月16日23:19

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「輪舞」マックス・オフュルス〜ワルツは巡る、愛も巡る〜

マックス・オフュルス監督の『快楽』(1952)が「作者自身による語り手」で進行していたのと同じように、その2年前に作られた本作『輪舞』は、狂言回しの男アントン・ウォルブルックが登場し、物語を進行させていく。1900年のウィーン、回転木馬のセットを歩き、衣裳を着替え、「ワルツは巡る、宴も巡る、そして愛の回転木馬も、巡る巡る、私の役割も巡る」と、彼が様々な役割を演じながら、登場人物たちの愛を巡らせていく。「夜は昼間へ、喜びは苦しみへ、落ちた雨は天へと上り、雲となって再び落ちる」。この映画は登場人物たちは次々と愛を語り、そして愛の喜びが苦しみとなり、また別の愛へと移っていく。そんなロンド形式の愛の物語である。ハリウッド映画のようなテンポのいいスピーディーな展開や台詞の応酬はない。しかし、優雅な歌と踊り、豪華なセットや衣装で、人間たちの様々な愛が描かれる。愛に夢中になり、そして愛は移ろっていく。その愚かで愛すべき人間たちの振る舞いを俯瞰的な視点で描いている。俳優たちも次から次へと豪華出演で登場。シモーヌ・シニョレ、シモーヌ・シモン、ダニエル・ダリュー、ジャン=ルイ・バロー、ジェラール・フィリップなどなど。

娼婦のシモーヌ・シニョレは、狂言回しの予告通りに6番目に通りかかった兵士セルジュ・レジアニに恋をし、彼を強引に誘惑して川べりの橋の下で情事をすませる。そして兵士は小間使いの若い女シモーヌ・シモンを誘惑し、森の中でたやすく彼女の純潔を奪ってしまう。すると兵士はすぐに冷たくなり、別の女とまたダンスを踊りに行ってしまう。そしてシモーヌ・シモンは、新しく仕えた家の若い息子ダニエル・ジェランの自分への視線に気づき、彼をそれとなく誘って男にしてやる。初めて女を経験して自信をつけたダニエル・ジェランは上流階級の人妻ダニエル・ダリューに夢中になって口説く。家を借りて、人妻を誘惑するシーンは、なんともダニエル・ダリューが色っぽい。「今、何時?」と何度も聞くのも面白い。馬車を待たせて5分で帰ろうとしていた人妻は、帰ろうとする扉の前で若い男とキスをするとメロメロになって、結局ベッドをともにする。さらにそんな人妻を「最近美しくなった」と褒める夫との寝室での夫婦の会話があり、今度は夫フェルナン・グラベがレストランの個室で若い女性オデット・ジョワイユを口説いている。酒に酔った若い女と二人きりの個室は暗くなり、ことが終わると男は態度を変えてすぐに帰ろうとする。既婚者の男は愛人として彼女と部屋を借りようと話をするが、若い女は風変りな詩人ジャン=ルイ・バローの部屋に招かれていた。詩人は人生に飽きて普通の恋愛ができない男。それでも詩を語り、言葉巧みに女を脱がせて情事に及ぶ。既婚者の男はレストランの個室で若い女に待ちぼうけを食わされ、詩人は今度は女優イザ・ミランダを楽屋で口説いている。詩人が書いた舞台を観に来た若い女オデット・ジョワイユは詩人にフラれ、詩人と女優はお互い平手打ちをしながらキスをする。さらに女優のオデット・ジョワイユは若い金持ちの伯爵士官ジェラール・フィリップを誘惑し、伯爵士官は一晩中遊びまわり、酔った翌朝に目を覚ますと、娼婦のシモーヌ・シニョレの家のベッドだった。昨夜のことを何も覚えていない伯爵士官。かくして娼婦のシモーヌ・シニョレから始まった愛の環は閉じられ、巡る愛は終わりを迎える。狂言回しのアントン・ウォルブルックは、これらの愛の物語は、「世界中のどこにでもあるもの」と歌い終わって映画は終わる。

艶笑コメディというか、愛についての冷めた見方が描かれる。永遠なる愛の持続などあり得ないとでもいうように、愛は巡り、移ろっていく。ワルツのように、その場は楽しく美しく華やかなるも、そのワルツは別のパートナーとの踊りに変わっていく。当然ながらあからさまな性描写はないものの、情事ばかりが次々と繰り返されるエロティックな映画である。

19世紀末のウィーンを舞台としたアルトゥール・シュニッツラーの原作は当時発禁処分となり、演じられた舞台も大きな騒動になったという。それをこんなに優雅にオシャレに描いて見せたマックス・オフュルスの演出力は素晴らしい。登場人物に直接語りかける紳士から、小間使いに新たな仕事先を紹介する男や、情事の邪魔させないように家庭教師の訪問を帰らせたり、回転木馬が故障すると直して若い男を回復させたり、レストランのマネージャーで個室の愛を見守り、性描写のフィルムを検閲してカットしたり、「愛の芸術のためにいます」と召使を演じてみたりと、役割を次々と変えて登場人物たちの愛を巡らせる狂言回しのアントン・ウォルブルック。彼の存在が映画を流れるように優雅にオシャレにしている。低俗な性愛と欲望の物語なれど、シニカルで皮肉をこめた人間観察にもなっている。傑作である。


1950年製作/フランス
原題または英題:La Ronde
配給:新外映=NCC

監督:マックス・オフュルス
脚色:ジャック・ナタンソン、マックス・オフュルス
原作戯曲:アルトゥール・シュニッツラー
台詞:ジャック・ナタンソン、マックス・オフュルス
撮影:クリスチアン・マトラ
美術:ジャン・ドーボンヌ
音楽:オスカー・ストラウス
キャスト:アントン・ウォルブルック、シモーヌ・シニョレ、セルジュ・レジアニ、シモーヌ・シモン、ダニエル・ジェラン、ダニエル・ダリュー、フェルナン・グラベ、オデット・ジョワイユ、ジャン=ルイ・バロー、イザ・ミランダ、ジェラール・フィリップ
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