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2026年09月28日11:51

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「結婚五年目(パーム・ビーチ・ストーリー)」プレストン・スタージェス〜スピーディーで見事なスクリューボール・コメディ

スクリューボール・コメディの傑作と言われている作品群を続けて見ている。このジャンルの映画が面白いのは、リアリティを無視したような、かなり突飛な展開が笑わせてくれるからだ。嘘や誤解、すれ違いや偶然、愛と嫉妬から、運命の歯車がどんどん狂って行って、とんでもない混乱が起きるのだ。そのハチャメチャさは、リアリティを重視した映画では見られない可笑しさがあり、そのドタバタは人間喜劇そのものだ。

さて本作『結婚5年目』もまたプレストン・スタージェス監督によるスクリューボール・コメディだ。オープニングから凄い。タイトルバックで、主人公ジェリー(クローデット・コルベール)とトム(ジョエル・マクリー)の結婚式当日の大騒動がコミカルかつスピーディーに描かれる。何が起きているのかよくわからないが、音楽とアクションだけで見せていく手法。なにやら問題が起きて召使の気絶があり、女性の監禁があり、車の中で慌てて着替える新郎、結婚式にタクシーで駆け付ける花嫁・・・と描かれ、何とか結婚式が行われる。そして、「二人は末永く幸せに暮らしました」という字幕の後に、「本当に?(or did they?)」という字幕が出て、時が経過して5年経ったところから始まるのだ。わずか2分間程度で結婚自体のハプニングを描いてしまう力業、そして結婚そのものの愛のあやふやさを描き、それは5年後も愛の迷走と混乱は続くというわけだ。

5年後の結婚生活はすでに妻のジェリーから別れ話が出ている。発明家のトムは新規事業「空中エア・ボート」に出資する資本家が見つからなくて金に困っている。家賃も払えない夫婦の部屋に、耳の遠い金持ちの老人ソーセージ王が部屋の下見にやってくる。バスルームに隠れるジェリーだったが、見つかって老人に見初められ、家賃も払えないなら金を出してやると言う。そんなバカな?な展開が次々と起こるのがこの映画だ。家賃を払って、服も買って、ほっと一息ついたジェリーだが、夫のトムは納得がいかない。爺さんとはいえ、男から金をもらったからには、下心もあったはずだと嫉妬が始まる。一度はベッドを共にして仲直りした二人だが、翌朝、家を出て行くジェリー。駅まですったもんだの追っかけっこがあり、ジェリーは無一文のまま手ぶらで列車に乗り込む。

ここからの列車内での展開がまた滅茶苦茶なのだ。「うずら猟友クラブ」という男たちの好意で、まんまと無一文で一緒に特別車両に乗り込んだジェリーだったが、彼らのマスコットになって踊り続け、寝ようとすると、みんなの歌を聴かされて男たちは大騒ぎ。別の車両の2段ベッドに逃げ込んだジェリーだったが、彼らは列車内で猟銃をぶっ放して破壊しまくり、何頭もの猟犬を連れて列車内でジェリーを探し回る。そんな騒ぎで、彼らの貸し切り車両は、途中駅で切り離される。この猟友会の男たちの滅茶苦茶さは、二人のストーリーに直接関係ない余興のようなものだ。それがここまでアナーキーなのが、このスクリューボール・コメディの破綻している面白さだ。

さて、列車内で知り合った男と仲良くなったジェリー。その男がまた世界的大富豪・J・D・ハッケンサッカー3世(ルディ・バレー)。着替えの服もないジェリーは、彼の好意で数々の服や豪華なブレスレットなどを買ってもらい、目的地のパーム・ビーチまで豪華ヨットで送ってもらう。残されたトムは、これまたソーセージ王の老人から、飛行機でパームビーチへ行って花束を持って出迎えろと言われ、金を出してもらう。豪華なヨットでやってきた妻と対面したトムだったが、ジェリーはハッケンサッカー3世に兄と紹介される。ハッケンサッカー3世の姉、恋多きセンティミラ(メアリー・アスター)が今度はトムに一目惚れ。豪華な屋敷で、兄と妹の関係のまま、ハッケンサッカー3世はジェリーに夢中、姉のセンティミラはトムに夢中の二組のカップルで過ごす。しかし、それぞれがヤキモチを妬くことになって、最後は元鞘に戻ってハッピーエンド。笑えるのが、夫婦に戻ることにした二人には双子の兄弟と姉妹がいて、恋が破れてガックリしたハッケンサッカー3世と姉のセンティミラもまた、そのそれぞれの双子と結婚してメデタシメデタシ。さして再び「二人は末永く幸せに・・」と「or did they?本当に暮らした・・・?」と字幕が出て終わる。なんともお見事だ。

ジェリーがドレスを脱ぐときに背中のファスナーが外せなくて、夫のトムの膝の上に乗って外してもらう場面が反復され、それが二人の愛の行為へ到るアクションになっている。「背中のファスナーが外せない」というのは、リタ・ヘイワーズの『ギルダ』(1946)でも使われており、当時の常套的な女性の誘い文句だったのかもしれない。

最後の双子の登場というご都合主義的なラストにも呆気にとられたが、都合よく大富豪が出てきて金を援助し、出会った男もまた大富豪というお伽噺のようなロマンチック・コメディである。リアリティなど無視したドタバタコメディに呆れ笑いつつ、その展開の見事さに感心してしまう。女性の美しさと色気で男たちを次々に虜にするクローデット・コルベールの無邪気な明るさが、この映画を支えている。


1942年製作/89分/アメリカ
原題または英題:The Palm Beach Story

監督・脚本:プレストン・スタージェス
撮影:ビクター・ミルナー
音楽:ビクター・ヤング
アソシエイト・プロデューサー:ポール・ジョーンズ
キャスト:クローデット・コルベール、ジョエル・マクリー、メアリー・アスター、ルディ・バリー、シグ・アーノ、ロバート・ワーウィック、dアーサー・スチュアート・フル、ビクター・ポテル
☆☆☆☆4
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