29歳の若さでこの世を去ったフランスの伝説的映画監督ジャン・ヴィゴが28歳の時に手がけた監督第3作。久しぶりに見直した。ジャン・ヴィゴは若い頃から肺結核を病んでおり、29歳で敗血症で亡くなった(1934年)。1920年代のニースの社会的不平等を題材にしたサイレント映画 『ニースについて』(1929)と、世界新記録を樹立した水泳選手のスポーツドキュメンタリー『水泳選手ジャン・タリス』の2本の記録映画、そして本作『新学期・操行ゼロ』(1933)と『 アタラント号 』(1934)の2本の劇映画を残した。ヌーヴェルヴァーグの面々を始め多くの人々から敬愛を集めており、フランスでは彼の偉業にちなんで新人監督を対象としたジャン・ヴィゴ賞が設けられている。4作品すべてカメラマンのボリス・カウフマンが撮影を担当している。
原題は、「Zéro de conduite(素行ゼロ)」。映画の中で生徒が先生や舎監に「クソッたれ!(Merde !)」と叫ぶセリフがある。後半で生徒たちは、「宣戦布告だ!舎監と懲罰を排除する。改革バンザイ。自由か死か。校舎の屋根に旗を掲げよ」と反乱を叫ぶ。「意地悪な大人と戦うぞ」と宿舎内で大騒ぎしで枕投げを始め、枕の羽毛が舞う有名なシーンとなる。スローモーションの逆回転で体が一回転して宙を舞って椅子に座り、みんなで行進して出て行く不思議でシュールなシーンだ。そしてベッドで寝ている舎監(教師)を縛ってベッドごと立ち上げ、「キリストの磔刑」のようなシーンまである。これではキリスト教や学校・教会を侮辱したとして、上映禁止になったのもわかるような気がする。本作は1933年の完成直後にフランス政府によって12年近く上映禁止に指定された。戦後になってようやく公開され、後のヌーヴェル・ヴァーグ(フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』(1959)など)に計り知れない影響を与えた傑作と言われている。日本での初公開は1976年。
小人のような子供?が髭を生やした校長が権威を振りかざす。威張り散らす舎監や教師たち。最初は、手品をしたりしてふざけ合う生徒の2人が新しい舎監ユゲ氏(ジャン・ダステ)と同じ列車に乗り合わすのだが、眠っているユゲ氏を「死んでいる」と勘違いする。全寮制の寄宿学校が舞台。悪ガキ3人組のイタズラに厳しい罰則で、「操行ゼロ・日曜の外出禁止」が言い渡される。新しくやって来たユゲ氏は、チャップリンの真似をしたり、教室で逆立ちしたり、子供たちを町に連れ出したりしてくれるが、舎監長や校長は高圧的で厳格だ。生徒のなかには女の子っぽい中性的な生徒(タバール)も登場させ、彼の手を撫でる男性教師に「クソったれ!」とタバールが叫ぶ。そして謝罪を求める校長にも「クソったれ!」と反抗する。ラストのお客さんが出席する学校の式典では、子供たちが蜂起して反乱。悪ガキ3人組にタバールも加わり、屋根の上から古い靴や紙、空き缶などを投げ入れ、行事を粉砕。ユゲ氏も生徒たちの勝利を称え、屋根を上を万歳しながら歩いていく4人の子供たちの後ろ姿で映画は終わる。
強権的な大人たちの圧力に対する子供たちの反乱、騒動が圧倒的な躍動感と美しさとともに描かれる。トリュフォーの『大人は判ってくれない』(1959)のほか、リンゼイ・アンダーソン監督の『if もしも....』(1968)や、ジャン=ピエール・メルヴィルの『恐るべき子供たち』(1950)などを思い出す。
1933年製作/44分/フランス
原題または英題:Zero de conduite
配給:アイ・ヴィー・シー
監督・脚本・編集:ジャン・ヴィゴ
製作:ジャック・ルイ=ヌネーズ
撮影:ボリス・カウフマン
美術:アンリ・シュトルク
音楽:モーリス・ジョーベール
キャスト:ジャン・ダステ、ルイ・ルフェーブル、ジルベール・プリュション、ジェラール・ド・ベダリュー
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