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2026年07月25日20:30

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『白夜』ロベール・ブレッソン�◆鼠瀚召了訐�と音楽、自分勝手な愛の妄想〜

ロベール・ブレッソン監督は、何度でも見直したいと思える奥行きのある作品を残した映画監督の一人である。以前にもレビュー(『白夜』ttps://hideyosi719.blog.fc2.com/blog-entry-829.html)を書いたのだが、今回、映画館で見直して重複する部分もあるが、気づいたことを書き留めておきたいと思う。

気になったのは石畳を歩くカップルや人々の足音だ。コツコツと歩く音がいつも聞こえている。これはパリのセーヌ川にかかるポンヌフの橋の上で、美しい女性マルト(イザベル・ヴェンガルテン)が一年前に出会った男を待つ4夜の物語である。観客も一緒に男が現われるのを待っている。だから足音が気になるのかもしれない。マルトは男が現われないので、ポンヌフで川に飛び込もうとしていた。彼はアメリカ留学に発ち、マルトに「結婚できる身分になったら1年後に会おう」と言って去って行った。しかし、1年が経ったその夜に男は現れなかった。孤独な画家の青年ジャック(ギョーム・デ・フォレ)は、そんなマルトを見て引き返してきて、マルトに声をかけ、死を思い止まらせる。そして男を待つ二人の夜が始まるのだ。ジャックは、ロベール・ブレッソン映画の多くの登場人物のように、内向的な性格でコミュニケーション下手。テープレコーダーに自分の詩のような愛の言葉を朗読し、録音して一人で部屋で聴いているような男だ。そして街で美しい女性に会うと、すぐ好きになって、後を付けてしまう。一方的な思い込みで行動する危ないストーカー的な男だ。冒頭、ヒッチハイクで一人郊外の自然の中ヘ行って、一人で前転をしたり、歌を口ずさんで浮かれ気分で過ごし、まわりの家族に怪訝な顔をされる。一人であることが寂しいわけではなく、孤独を楽しんでいるようでもある。

画家である青年ジャックは、視線の人である。視線で美しい女性を見つけ、視線を逸らすことが出来なくなり、夢中になって追いかけたりする。それが画家という表現にも結ぶついているのかもしれない。ジャックと街ゆく女性たちとの視線の交錯、カットバックは何度も描かれる。それがマルトと一緒に橋の上でいくつかの夜を過ごすようになって、初めてジャックは他者の話を聞く。他者が自分の世界に介入してくるのだ。それまでのジャックは、視線が自己完結的に閉じられていて、青年の夢想が言葉や絵になるだけだった。そこには自己に介入してくる他者はいなかった。一方的に見つめる世界だけがあった。一度、部屋に画家の友人が訪ねてくるが、ジャックと交わっているようには見えない。ジャックは自ら描いた絵を裏返して隠し、一方的に友人が持論を語って去って行くだけだった。他者を受け入れようとしないジャック。そんな自己完結的な男のジャックが、マルトと出会い、初めて他者の声を聞く。マルトの恋の話を聞き、マルトが彼氏と出会えるように友人に手紙を渡したりして、協力する。しかし、ジャックはマルトに夢中になっていた。「マルト、マルト・・・」と何度も彼女の名前を呼び、それをテープレコーダーで録音し、バスの中で流したりする。そしてジャックとマルトは橋の上で、セーヌの河岸で、二人で一緒に音楽を聴く。セーヌ川のバトームッシュのミュージシャンたちの音楽、あるいは河畔でギターを演奏して歌う若者たち。夜のセーヌ川で一緒に音楽を聴いている二人は、もう恋人気分そのものだ。ジャックがマルトを好きになって、恋人気分になって勘違いしたとしても仕方がない。

一方、女性のマルトは視線の人ではなく、聴く人であるのかもしれない。アパートの隣の部屋の下宿人とマルトはなかなか顔を合わせない。隣の男に映画に誘われるが、エレベーターの中で彼と顔を合わせることを避け、誘いを断わる。一方で、隣の部屋から聞こえてくるノックの音を聴き、隣の気配を感じ、隣の部屋から洩れる光を見つめる。そして音楽に合わせて、マルトは鏡に自分の裸身を映して踊る。薄い白い寝間着を脱ぎ、美しい肌をさらす。マルトは、男と出会う前にすでに男に恋していた。だから出会ってすぐに男に抱きついたのだ。立ったまま抱き合う二人。マルトモまた一方的な妄想によって愛の幻影に囚われていた。

愛の妄想に囚われたそんな二人は、4つの夜を橋の上で過ごすことによって接近し、カフェに入り、テーブルの下で手を絡ませる。ジャックはマルトに赤いスカーフをプレゼントし、ストリートからは弾き語りの音楽が聞こえてくる。マルトが男の幻影を諦め、ジャックとの愛を受け入れ始めようとしたその時に、男と街で再会する。ジャックは夜空に浮かぶ美しい月を見るが、マルトは男を見つける。男と視線が交差し、男の元へ行き、抱き合い、一度はジャックのところに戻って抱き合うが、再び男の元へマルトは行ってしまう。ジャックとマルトは違うものを見る。マルトと男が視線を交錯させることによって、ジャックはあっさり裏切られてしまうのだ。

とてもエロティックな映画と言えるかもしれない。欲望の視線。愛の妄想。マルトが自室の鏡の前で裸で踊る場面の美しきエロティシズム。まだ会ってもいない隣の男を妄想する女。ジャックの視線の欲望は、妄想の中でマルトを追い求め、それは手の動きで表現される。マルトの胸をまさぐるジャックの手。そしてカフェの机の下で絡ませる手。音楽が二人を包み、愛の妄想が具体化しつつあるときに、最後に簡単に裏切られる。愛が自分勝手な妄想であることを突きつける映画でもある。


1971年製作/83分/フランス・イタリア合作
原題または英題:Quatre Nuits d'un rêveur
配給:エタンチェ、ユーロスペース

監督・脚本:ロベール・ブレッソン
原作:フョードル・ドストエフスキー
撮影:ピエール・ロム
美術:ピエール・シャルボニエ
編集:レイモン・ラミ
音楽:ミシェル・マーニュ
キャスト:イザベル・ベンガルテン、ギョーム・デ・フォレ、ジャン=モーリス・モノワイエ、ジェローム・マサール
☆☆☆☆4
写真引用(C)1971 Robert Bresson
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