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2026年07月21日22:46

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「日本侠花伝」加藤泰〜加藤泰の集大成のような大作・波瀾万丈な女の人生〜

加藤泰が自ら原作・脚本を書いた1973年の加藤泰の集大成のような大作。147分のカラー作品。任侠ものであり、ヤクザの抗争劇であり、四国の宇和島から駆け落ちして出てきた波瀾万丈の女の人生を描いた作品であり、女の愛の物語であり、労働争議や特高による社会主義者への弾圧、拷問、大正時代の大不況と米騒動まで社会性を盛り込んだ歴史時代劇でもある。つまり、『緋牡丹博徒 花札勝負』(1969)シリーズのようにヤクザ組織の対立があり、敵役の組の渡世の義理による刺客(渡哲也⇔高倉健)が、最後は善玉の親分(曽我廼家明蝶⇔嵐寛寿郎)の妻の真木洋子(⇔藤純子)の味方になる展開は、ほとんど同じ構図。渡哲也と真木洋子は、果物を交わし(『緋牡丹博徒 お竜参上』(1970)の藤純子と菅原文太の蜜柑と同じであり、『明治侠客伝 三代目襲名』(1965)の藤純子と鶴田浩二の桃と同じ)、抗争前に小さな舟の中で愛を紡ぐ。曽我廼家明蝶が人情味のある親分なのは『車夫遊侠伝』(1964)と同じ。また、時代が移り変わる中での波瀾万丈な人生を描く意味では、『炎のごとく』(1981)を思い出させる。権力による弾圧や社会動乱的な抗争劇は『真田風雲録』(1963)にも通じるところがある。ローアングルや、カメラ手前と奥の縦構図を使った画作りなど加藤泰得意の独特のカメラ位置も見応えたっぶりだ。

大正6年。列車の中で近藤ミネ(真木洋子)はこっそり書籍を売っていた。四国の宇和島から旧家の息子の大浜実(村井国夫)と駆け落ちしたのだ。その列車で地元の有力代議士が刺客・田中清次郎(渡哲也)に殺害される。その現場に居合わせたことで、犯人の仲間と疑われて特高の執拗な取り調べを受ける。その後、ようやく釈放された二人は同じ監房にいた小川つる(任田順好)と共に門司に向かう。前半は、この任田順好の存在感が迫力満点で凄い。過酷な世の中をしたたかに生きる女の強さを描いている。『緋牡丹博徒 花札勝負』(1969)では、偽者のお竜を名乗った女賭博師を演じていた沢淑子が芸名を変えた任田順好(トウダ・ジュンコウ)である。二人は女給としてカフェで働くが、下品な客たちと騒動となり、コショウが店でバラ撒かれる。そのコショウでクシャミを我慢する任田順好がカメラ手間で寝ていて、カメラ奥で真木洋子と村井国夫が抱き合う場面の長回しが笑える。その村井国夫は故郷から連れ戻しに来た母親に連れて行かれ、彼を追いかけて宇和島に帰ってきた真木洋子。宇和島の夏祭りの迫力ある映像が挿入される。そして崖の上から死のうとする真木洋子と止める村井国夫。二人は崖から落下するが、近くで釣り船に乗っていた長田金造(曽我廼家明蝶)に助けらる。しかし、またしても村井国夫は母親に連れ戻される。

駆け落ちした男に裏切られたミネ(真木洋子)は、一年後に神戸で助けられた金造と教会で結婚式を挙げる。牧師が加藤剛。その結婚式の最中に、またしても騒動が勃発。新興ヤクザ岸本組(岸本・安部徹)と長田組との対立。その夜、岸本組の渡世の仁義を果たすため、刺客となった田中清次郎(渡哲也)が金造を襲う。わざと急所を外して命は助ける。海軍(北大路欣也)の兵隊へ米を運ぶ荷役の大役を請負ったミネは、岸本組の妨害に遭いながらも、雨の中でなんとか期日までにやり遂げる。岸本組の汚いやり方に愛想を尽かした清次郎(渡哲也)は、岸本組の妨害からミネを助ける。列車での刺客のとき以来の再会となったミネと清次郎。身を隠していた舟の中で清次郎はミネと愛を交わす。米騒動の混乱の中で、警察に追われていた清次郎をミネは逃がした罪で捕まり、特高の拷問を受ける。SM的に縄で縛られ、逆さ吊りにされる半裸のミネの過酷な拷問。

ボロボロになって釈放されたミネは、清次郎と一緒に岸本組に連れ去られた長田金造(曽我廼家明蝶)を救うために赤穂御崎へ。海辺の岩場で最後の戦いとなる。清次郎は岸本組と殺し合い、組長の安部徹を刺し、自分も果てる。死に絶えた渡哲也に真木洋子が口づけをし、曽我廼家明蝶が「お前が、可哀相だ」と呟く。「いえ、私は今が一番……幸せです」と答える真木洋子。愛に殉じ男に裏切られ、再び愛した男が自分のために戦って死んで、その愛の殉じた男を最後に抱きしめる。

加藤泰が描く登場人物たちは、時代や権力、運命や組織に抗う。愛や仁義を貫き通す人間たちの赤裸々な姿が描かれる。


1973年製作/147分/日本
配給:東宝

監督・脚本・原作:加藤泰
企画:葉村彰子
製作:佐藤正之、馬場和夫、椎野英之
撮影:村井博
美術:阿久根巖
音楽:鏑木創
録音:矢野口文雄
照明:小島真二
編集:黒岩義民
助監督:河崎義祐
キャスト:真木洋子、波哲也、村井國夫、曽我廼家明蝶、任田順好、藤原釜足、安部徹、汐路章、武藤章生、菅井きん、加藤剛、北大路欣也、大塚道子、見明凡太朗、富田仲次郎、原田君事、榊田敬二、大木正司、林光子、野口元夫
☆☆☆☆4
写真引用@1973東宝

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