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2026年07月13日21:58

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「ヌーヴェルヴァーグ」リチャード・リンクレイター〜映画作りの夢と未来〜この映画を観て『勝手にしやがれ』を見直そう!

「Moteur, Raoul.」(ラウール、回して!)とゴダール(ギヨーム・マルベック)がカメラマンのラウール・クタール(マチュー・パンシナ)に街中で叫ぶ。ヌーヴェルヴァーグの伝説的で記念碑的な作品『勝手にしやがれ』(「À bout de souffle」息切れ)の撮影現場を再現した映画。ジャン=リュック・ゴダールはまだ28歳。フランソワ・トリュフォーが『大人は判ってくれない』(1959)で華々しいデビューを飾り、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞して評価された1959年、ゴダールはまだ映画を撮れずに焦っていた。短編やドキュメンタリーを撮り、「カイエ・デュ・シネマ」誌で映画批評を書いていが、まだ何者でもない映画青年・シネフィルでしかなかった。ヌーヴェルヴァーグの伝説の巨匠と神格化される以前のゴダールが描かれている。ただの映画好きの青年。「本物の天才」を自称しているだけの思い上がりばかり強い面倒くさい男。不機嫌で気難しいが、映画の知識は豊富で、引用ばかりする男。しかし撮影現場では、戸惑い、混乱し、停滞し、アイディアが尽きて撮影を早々に切り上げ、プロデューサーと大喧嘩をする。台本を事前に作って役者に渡さず、朝、カフェでメモを書く程度。ジン・セバーグ(ゾーイ・ドゥイッチ)は「撮影を止めたい」と言い出し、撮影に同伴していた夫になだめられる。ゲリラ撮影、即興演出、手持ちカメラ、ジャンプカット編集など、新しい映画手法を編み出した伝説の作品などと後世で言われるようになったけれど、現場は思いつきや混乱、模索の連続だった。ただ、「今までとは違う新しい映画を作りたい」という熱意だけはあった。ボクシングジムに通っていた無名の俳優に過ぎなかったジャン=ポール・ベルモンド(オーブリー・デュラン)は、そんなゴダールのメチャクチャな撮影現場の空気を面白がっていた。ジャン=ポール・ベルモンドは、ゴダールの短編『シャルロットとジュール』(1958)に出演したときの約束をゴダールが果たしてくれたと喜んでいた。助監督を務めたピエール・リシアン役のベンジャミン・クレリーがとぼけたいい味を出している。フランソワ・トリュフォー(アドリアン・ルイヤール)のほかに、クロード・シャブロル(アントワーヌ・ベッソン)、ジャック・リヴェット(ジョナス・マルミー)、エリック・ロメール(コーム・ティユラン)などのヌーヴェルヴァーグの監督仲間のほか、ジャン=ピエール・メルヴィル(トム・ノバンブル)、ロベルト・ロッセリーニ(ローラン・モット)、同じパリのメトロで『スリ』(1960)の撮影をしていたロベール・ブレッソン(オレリアン・ロルニエ)まで登場する。錚々たる監督たち。さらにジャン・コクトー(ジャン=ジャック・ル・ベシエ)、ジュリエット・グレコ(アリックス・ベネゼック)などの有名人も出てきて、当時のパリの文化人たちの雰囲気が伝わる。

とにかくリチャード・リンクレイター監督は、1960年撮影当時のフィルムの質感を出しながら、当時撮影した『勝手にしやがれ』のメイキング映像のような時代の空気を描いている。『勝手にしやがれ』のスタイルにならい、アカデミー比率(1:1.37)の白黒映像で、アメリカ人監督が全編フランス語で撮影した。そして映画好きの誰もがかつて持っていた「映画を作りたい」という熱情、仲間を集めてカメラを回したあの頃の夢が溢れている。それはリチャード・リンクレイター監督自身とも重なるものがあるのだろう。神格化されたゴダールではなく、不器用な映画好きの青年ゴダールがそこにいる。リチャード・リンクレイターは、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016)で、バカバカしい若者たちの学園青春群像を描いていた(この作品のヒロインがジン・セバーグを演じたゾーイ・ドゥイッチ)し、『6才のボクが、大人になるまで。』(2014)では、ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を12年かけて撮影した斬新な作品を作っている。フランス女性とアメリカ男性の出会いの会話劇『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)、『ビフォア・サンセット』(2004)などもエリック・ロメール的な会話主体の恋愛映画だった。そして本作は、肩の力を抜いた楽しくオマージュに溢れた作品として、そして映画愛に満ちた映画として出来上がっている。

撮影を待っている間、ジーン・セバーグとジャン=ポール・ベルモンドがカフェで踊るダンスは、後のゴダールの傑作『はなればなれに』(1964)につながるものだし、ゴダール自身がカメラを載せたリアカーを動かし、『勝手にしやがれ』の名シーンの数々が再現されていただけで私は嬉しくなってしまった。またすぐにでも『勝手にしやがれ』を見直したくなった。皆さんも、この『ヌーヴェルヴァーグ』を観て、この楽しき映画作りの夢に満ちた『勝手にしやがれ』をもう一度見直そう!もし見ていなかったら是非、見てみてください。難解なゴダールではなく、軽快な編集のリズムとテンポのいい台詞、街を疾走し、闊歩するカッコいいジーン・セバーグとジャン=ポール・ベルモンドの二人の自由な生き生きとした姿があります。


2025年製作/106分/G/フランス
原題または英題:Nouvelle Vague
配給:AMGエンタテインメント

監督:リチャード・リンクレイター
製作:ミッシェル・ペタン ロラン・ペタン
製作総指揮:エマニュエル・モンタマ、ジョン・スロス
脚本:ホリー・ジェント、ビンス・パルモ、ミシェル・アルベルシュタット、レティシア・マッソン
撮影:デビッド・シャンビル
美術:カティア・ビシュコフ
衣装:パスカリーヌ・シャバンヌ
編集:カトリーヌ・シュバルツ
キャスト:ギヨーム・マルベック、ゾーイ・ドゥイッチ、オーブリー・デュラン、アドリアン・ルイヤール、アントワーヌ・ベッソン、ジョディ・ルース=フォレスト、ブルーノ・ドレイフュルスト、ベンジャミン・クレリー、マチュー・パンシナ、ポリーヌ・ベル、フランク・シキュレル、ブレイズ・ペットボーン、ブノワ・ブートール、パオロ・ルカ=ノエ、ジェイド・ファン=ジア、コーム・ティユラン、アリックス・ベネゼック、レア・リュス・ブサト、トム・ノバンブル、ローラン・モット、オレリアン・ロルニエ、ルー・クレティアン=フェブリエ、ジャン=ジャック・ル・ベシエ
☆☆☆☆4
写真引用コピーライトJeanLouisFernandez
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