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2026年07月09日18:46

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「サボタージュ」(1936)アルフレッド・ヒッチコック〜爆弾テロのサスペンス劇〜

冒頭、辞書が映し出され、「サボタージュ」とは「世間を不安に陥れるために、建物や設備を故意に破壊する行為をいう」と字幕が出る。ジョゼフ・コンラッドの『密偵』を映画化した日本劇場未公開作品。テロを助長する映画として上映禁止になった国もあるそうだ。アメリカ合衆国では『The Woman Alone』のタイトルで上映された。

映画館主カール・ヴァーロック(オスカー・ホモルカ)は、妻(シルビア・シドニー)の知らないところでテロ活動に手を貸していた。次の標的はロンドン市長の就任パレードだったが、青果商に成り済ました刑事のテッド(ジョン・ローダー)に感づかれてしまう。ロンドン市街の爆弾テロという過激な題材を扱っているのだが、なぜヴァーロックがテロ活動に加担するようになったのかが描かれていないため、犯罪そのものの動機が曖昧で説得力がない。なぜ妻の弟(デズモンド・テスター)を爆弾テロに巻き込まざるを得なくなったのかが、今ひとつよく分からない。弟が1時45分に爆発する時限爆弾を持って、指定された場所に置いてくるまでのサスペンスが描かれる。何も知らない弟は爆弾を抱えたまま、路上販売の男に呼びかけられて歯磨きや整髪料のモデルにされ、市街は市長パレードで通行が出来ない。なかなか荷物を届けることが出来ない弟は無理やりバスに乗り込み、隣に座った老婦人の犬をあやすうちに、荷物は爆発してバスもろとも吹き飛んでしまう。少年が爆弾と一緒に持っていたのが、映画のフィルム巻だ。焼けたフィルム缶から弟の死が判明する。

ヴァーロックは映画館主であり、映画館の通路を通って、奥に住んでいる部屋があるという設定。スクリーンの裏側から刑事のテッドが部屋の中の様子を伺うシーンもある。映写される映画の影がスクリーンの裏側に映っていて面白い。弟の死を知ってから、姉が映画館で上映されているディズニー・アニメを見て笑いつつ涙するシーンがある。フィクションの世界の映画の笑いと弟の死という過酷な現実とのギャップ。冒頭の停電騒ぎも映画館に集まる客たちが描かれる。映画館がサスペンスの舞台として使われていたのは『逃走迷路』(1942)だったか。映画のフィクションの世界と現実の事件・犯罪の交錯。演劇を上手く使っていた『殺人!』(1930)というイギリス時代の作品もあった。

アメリカ人の妻とテロ活動をする夫との関係もあまり描かれていない。妻は夫が「そんなことをするような人ではない」と信じており、夫を見張っていた刑事の存在を知っても、動揺する様子もない。だから愛する弟が爆弾テロに巻き込まれて殺されて、夫を刺し殺す場面も盛り上がりに欠ける。夫はただの冷血漢にしか見えない。刑事のテッドが最後に妻に愛を告白し、夫殺しの罪を妻が自首する前に、夫は仲間と一緒に爆死して、妻は夫殺しの罪を逃れる。小鳥屋の爆弾魔と、水族館でのテロ指令の秘密のやり取り、映画館の裏のアジトという設定は面白かったが、脚本が粗く、サスペンスはあまりうまくいっていない。


1936年製作/76分/イギリス
原題または英題:Sabotage

監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:マイケル・バルコン
原作:ジョセフ・コンラッド
撮影:バーナード・ノールズ
音楽:ルイス・レビ
美術:オットー・ベルンドルフ
キャスト:オスカー・ホモルカ、シルビア・シドニー、デズモンド・テスター、ジョン・ローダー
☆☆☆3
写真引用コピーライト ブレーントラスト
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