久しぶりに川島雄三の古い日本映画を見る。毎日新聞連載の大佛次郎の小説を「銀座二十四帖」が原作。脚色に今村昌平の名前があり、気になって見てみた。今村は助監督にも名前があった。川島雄三は『幕末太陽傳』(1957)、『州崎パラダイス赤信号』(1956)、『雁の寺』(1962)、『女は二度生まれる』(1961)、『しとやかな獣』(1962)などの傑作があるので、なるべく見るようにしている。上流階級の息子の女道楽と戦後に成功した父親の人生の振り返りや純粋な娘との関係などが描かれ、「風船」のように風向きでどこへ行くのか定まらない人生の不安定さに思いを巡らす。
かつて天才画家と謳われた村上春樹(同姓同名!)は実業界に転じ、今では写真工業会社の社長として確固たる地盤を築いていた。成功した初老の男に森雅之。父親の会社で営業部長をやっている道楽息子・圭吉に三橋達也。スナックで働く久美子(新珠三千代)が圭吉の愛人で、戦争で夫を失い、今は一途に圭吉への思いを寄せている。春樹の娘の珠子(芦川いづみ)は幼い頃に病んだ小児マヒのため身も心も弱く、部屋に閉じこもって絵画に親しむ日が多かった。春樹の恩師の告別式で再会した息子の都築正隆(二本柳寛)は、上海、シンガポール、パリを自由に飛び回り、現在はナイトクラブのマネージャーで女遊びにも長けている。自分の情婦でもあるシャンソン歌手三木原ミキ子(北原三枝)を、お坊ちゃん育ちの圭吉に接近させ、誘惑させる。ナイトクラブでローラースケートを履いて踊りながらシャンソンを歌う北原三枝にちょっと驚く。男に縛られない最先端の女性を演じさせている。久美子の愛の束縛に窮屈さを感じていた圭吉は、ミキ子との関係を深め、久美子に冷たい態度をとる。圭吉の妹の珠子がいつしか久美子と仲良くなり、久美子を慕うようになる。
一方、商用で京都へ出かけた春樹は、戦時中、自分が下宿していた阿蘇家の娘るい子(左幸子が若い!)に会った。両親をなくした彼女は、弟(牧真介)の学資を得るため夜はバー、昼はヌード・スタジオで働いている健気さにうたれ、自分の学生時代の貧しくも充実した暮らしを思い出す。京都の職人、人とのふれあいの残る路地が東京と対照的に描かれる。下宿していた二階のセットも、東京の立派な庭のある豪邸と対照的だ。
圭吉の心がミキ子に傾いたと知って、久美子は悲しみの余り自殺未遂。珠子だけが久美子を見舞いに来るが、圭吉は姿を見せない。圭吉の母(高野由美)は久美子のところに手切れ金を持参する。そして遂に久美子はガス自殺してしまう。久美子のところに行こうともしない圭吉の不誠実な態度に腹を立てる父の春樹。金があるばかりに、息子をダメにしてしまった。春樹は会社の社長を辞め、息子もクビにした。息子が別の会社で働くことが決まったのを機会に、春樹は京都で一人暮らすことを決める。自分だけの力で生きていけるのか、息子と距離をとることにしたのだ。古都に長く伝わる舞扇作りに老後の生きかたを見出した春樹のもとに、珠子が父を慕って京都へ着いたのは、夏祭の宵のことであった。
絵を描く夢を諦めて、戦後に実業家として成功した人生だったが、息子は傲慢な男に育ち、金で愛人問題を解決できると言い放つ。スナックやキャバレー、ショーやバンドのあるステージなど、中流から上流階級の男たちの女遊びが今では新鮮だ。
1956年製作/110分/日本
原題または英題:Father is Great
配給:日活
監督:川島雄三
脚色:川島雄三、今村昌平
原作:大佛次郎
製作:山本武
撮影:高村倉太郎
美術:中村公彦
音楽:黛敏郎
録音:橋本文雄
照明:大西美津男
キャスト:森雅之、三橋達也、新珠三千代、芦川いづみ、高野由美、二本柳寛、北原三枝、左幸子、牧真介
☆☆☆3
写真引用@日活
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