加藤泰のフィルモグラフィの中でも異色の珍作。真田十勇士を題材にした福田善之の戯曲の舞台を映画化。全編にミュージカルやレビューのシーン、現代語によるセリフ回しを盛り込んだ異色のアクション時代劇。なんてったって猿飛佐助(中村錦之助)は赤ん坊の時に隕石の放射線を浴びたことで超能力を授かった。人の気持ちが読めるし、目が光って相手はバタバタと倒れ、消えたり現われたり変幻自在。ミッキーカーチスは、ギターを持って歌い出すし、時代考証などそっちのけの音楽でファンキーに騒ぎまくる場面もある。かなりハチャメチャなアナーキーな演出に驚く。しかし、東映始まって以来の不入りを記録し興行は大惨敗。ただ一部でカルト的な人気がある作品だそうだ。60年安保闘争の若者たちの「抵抗勢力の戦いと挫折」という政治性を、形を変えてミュージカル喜劇仕立ての戦国ドラマに仕上げたという評価もある。
親を失った4人の少年少女(六、清次、伊三、お霧)は関ヶ原の戦いの敗残兵の十蔵、甚八、そして超能力を持つ少年・佐助と知り合う。そして十数年後、大人になった6人は再び佐助と出会う。ギター片手に徳川批判をする鎌之助(ミッキー・カーチス)は「大坂で豊臣方が戦のために日本中の浪人を集めている。恩給がたっぷりと出るそうだ」と6人に教え、一行は大阪へ向かう。そして大阪で自分の独立部隊を作りたいと考えていた真田幸村(千秋実)と側近・小助(河原崎長一郎)が現われ、彼らは真田十勇士になっていく。
お霧こと霧隠才蔵は戦う女忍者(くノ一)であり、渡辺美佐子が演じている。「ポニーテールに網タイツ姿」の女忍者(くノ一)が初めて映像として登場した作品と言われている。霧隠才蔵は、少女時代に猿飛佐助に出会ったときから一目惚れ。一途に思い続け、猿飛佐助の子供を身籠もる恋模様も描かれるが、最後は猿飛佐助は彼女の前から姿を消す。
大坂城は徳川方の各大名に完全に包囲された「大坂冬の陣」。籠城作戦と進軍を主張する対立の中で、真田幸村隊は独断で奇襲作戦を遂行(真田丸の戦い)。そして佐助の前に、同じような超能力を持った徳川方忍者の服部半蔵(原田甲子郎)が立ちはだかる。その後、両軍は膠着状態となり、「八百長」のような形ばかりのやり取りが続く。民衆の不満や兵士の鬱憤は、夜ごとに行われる「舞踊大会」で大騒ぎ。舞台のレビューのような乱痴気騒ぎが繰り広げられる。それを「不健康な歌舞音曲のどこがよろしいの?」と淀君(花柳小菊)や大野修理(佐藤慶)たちが女声コーラス隊を引き連れてやってくる。なんというバカバカしさ。
幸村隊はふたたび無断での奇襲作戦を実行するが、大野修理配下の鉄砲隊に狙われ、暗殺部隊と徳川方の挟み撃ちになった幸村隊は次々と死んでいく。お霧も重傷を負い、佐助との子供を流産する。佐助は心が読めない大野修理(佐藤慶)と対決。「私はまとめ役だが、民衆が勝手に立ち上がり、事態がまとまらなければどれほどよかったか」と屈折した参謀の大野修理の心理の描き方がユニークだ。そして大坂夏の陣。天王寺合戦で幸村隊も、佐助とお霧を残して全滅する。大坂城にも火が放たれる。千姫(本間千代子)を迎えに来た徳川方の坂崎出羽守(田中邦衛)とともに、お霧は佐助と江戸へ向かおうとするが、佐助は彼女の前から消えてしまう。最後は戦うことしか能のない猿飛佐助と服部半蔵が対決して終わる。孤独なアウトローとして、佐助を英雄化していないところがいい。
真田幸村は、ついて来るのも来ないのも自由だと部隊のメンバーに無理強いしない。「どうせ死ぬならカッコよく死にたい」と歌いながら戦いに参加するも、死ぬときはコケて自分から槍に刺されて「カッコ悪い」情けない死に方をする皮肉。「今度こそ自分たちのための戦いをやろう」と大義に殉じるような言い方をせず、自分たちの生きた証を求めていた。
1963年製作/90分/日本
原題または英題:Sasuke and his Comedians
配給:東映
監督:加藤泰
脚色:福田善之、小野竜之助、神波史男
原作:福田善之
企画:小川貴也 翁長孝雄
撮影:古谷伸
美術:井川徳道
音楽:林光
録音:中山茂二
照明:井上義一
編集:宮本信太郎
キャスト:中村(萬屋)錦之介、渡辺美佐子、千秋実、佐藤慶、ジェリー藤尾、常田富士男、大前均、春日俊二、米倉斉加年、ミッキー・カーチス、河原崎長一郎、岡村春彦、小川虎之助、明石潮、阿部九洲男、大村文武、水木襄、本間千代子、花柳小菊、原田甲子郎、田中邦衛、汐路章、鈴木金哉、田中亮三、江口音也バレエ団
☆☆☆3
写真引用@東映
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