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2026年05月25日21:09

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「見えない恐怖」リチャード・フライシャー〜見えない死体がすぐそばに〜

リチャード・フライシャーは様々なタイプの娯楽映画を作ったアメリカの職人監督。『海底二万哩 』、『ミクロの決死圏』、『ソイレント・グリーン』などのSFエンタメ大作から、『絞殺魔』や本作『見えない恐怖』などの犯罪サスペンスもの、『トラ・トラ・トラ』の戦争ものやチヤールズ・ブロンソンのアクション映画『マジェスティック』、差別的な奴隷牧場を描いた『マンディンゴ』などなどだ。特異な作品はファンも多い。

この作品は、ミア・ファローが盲目の少女サラを演じていて、世話になっている叔父一家の家に帰宅するが、一家が殺人鬼に惨殺されているのに、目が見えないゆえに死体に気づかないサスペンスを描いた作品だ。その殺人鬼は、星の印のあるブーツの足元しか映さない。顔を見せず、人物を描かないことで、連続殺人鬼の恐怖を煽っているのだ。

ブーツの男が「修道院殺人事件と強姦魔」という映画を見て映画館から出てくるところから始まる。カメラは顔は映さず足元にズームインして、星印のブーツを映し出す。夜の道を歩くブーツの男。商店街のディスプレイの戦車や銃の玩具、テレビに映し出される暴力シーンなど暴力が強調される。その男の近くを走った白い車が男のブーツに泥水をかけて走り去る。男のタバコを吸う手元、手に鎖のブレスレットだけが映し出され、家族を乗せてやってきたさっきの車の前に男は立ちはだかり、「早くどいてくれ」と言われてゆっくりと移動する。そして郊外の屋敷に着いたその車から、盲目の少女セラ(ミア・ファロー)が叔父たちと一緒に降りてくる。セラはバークシャーにある叔父の家に久しぶりに帰ってきたようだ。目は見えなくても、まわりの家具などに触りながら自分一人で階段の昇り降りや部屋の出入りが出来るセラ。

翌日、叔父の車が街で何者かにイタズラで傷つけられる。憤慨する叔父だったが、そのイタズラはあの星印のブーツの男によるものだった。駐車してあった向かいのお店で、ヌード雑誌を見ながら足を椅子に投げ出してタバコを吸っていた男。顔は見せない。ブーツに泥水をかけられたことを根にもっているようだ。片足ずつブーツをズボンの裾で拭く仕草を男は繰り返す。叔父一家は夜から夫婦で出かける予定で、娘のサンディ(ダイアン・グレイソン)もデートがあるようだ。セラは競走馬の厩舎で仕事をしている恋人のスティーブ(ノーマン・アシュレイ)に会いに行くが、帰りは誰もいないと知らされていた。だから、デートから帰って人の気配がしないのも当然だった。しかし、家の中で叔父夫婦も娘のサンディもすでに殺されていたのだった。家に誰かがやって来たのを叔母が迎えに出て、足元のブーツだけを映し出すのだ。そして帰宅したサラが一人でコーヒーを入れ、ベッドで横になるが、カメラは死体を映さずに、死体の足元とか落ちたブレスレットとか、台所で割れたガラスの破片だけを映し、家で何かがあった気配だけを描く。そして夜遅くに扉が風で閉まる音に「サンディ?」とサラは起きて声をかけるが、何も返事がないので寝間着に着替えてベッドに入る。そして、カメラは初めてそのサラが眠るベッドの横に、死体で横たわったサンディを映し出す。殺された死体のすぐ横で何も知らずに眠るサラ。翌朝早く、サラはまだ叔父家族はみんな寝ているものと思い込んだまま、プレゼントに馬を連れてきた恋人のスティーブと一緒に家を出て行く。そしてバスタブに横たわる叔父の死体、居間で殺された叔母の死体とカメラは一人ずつ観客に明らかにしていく。しかし、何も気づかず出かける準備をするサラ。着替えをし、仕度をするそばで横たわる死体。目が見えないために、手で触れそうなところに死者がいても気づかない独特の緊張感が映画の見せ場だ。

草原に馬に乗りに出かけてデートをするサラとスティーブ。雨、そして風と落葉。家の中の死体。幸福な恋人たちと発見されないまま横たわる死体。そしてスティーブは家には入らず、「また明日」と言って帰って行く。サラが家の中に入っても相変わらず静かなまま。雨に濡れた髪を拭き、彼女の部屋にカメラがゆっくりとドリー・インして前に近づいていき、扉が閉まって彼女が出てくると、死体に触って動転して叔母さんの名前を叫ぶサラの顔がアップになる。そしてパニック状態で各部屋を走り回る。転げ回り、ガラスの破片を踏み、地下室へ転落するサラ。そして、今度は銃で撃たれた庭師の男に触れる。庭師は、「犯人のブレスレットが落ちているからきっとそれを取りに戻って来る」と言って息絶える。サラはイニシャル入りのブレスレットを拾うのだが、その時、犯人は再び家に侵入してきた・・・。

屋敷の近くにロマ民族たちがキャンプしている場所があり、スティーブたちはライフルを持って真っ先に犯人がそこにいると疑って馬を走らせる。このあたりに差別感情をさり気なく描いている。犯人はロマの民ではなく、スティーブの厩舎仲間の一人だったことが分かり、バスタブで沈めて殺されそうだったサラを間一髪スティーブが救い出す。最後になってやっと、犯人を顔をカメラは映し出す。途中で、サラを厩舎に車で送った男だった。サラは目が見えない中で、馬に乗って家を脱出して落馬し、森を彷徨い、廃屋に監禁され、自力でまたしても脱出しつつ、泥だらけになって一人で廃山で助けを待つ。目が見えない設定なのに、孤軍奮闘である。殺人鬼の動機などどうでもよく、足元しか映さないカメラワークや、死体を少しずつ見せていく屋敷の中の映像演出、扉が風で自然に閉まる不気味な気配や小道具のイニシャル入りブレスレットなど、演出の工夫が楽しめるサスペンス映画だ。


1971年製作/イギリス
原題または英題:Blind Terror
配給:コロムビア

監督:リチャード・フライシャー
脚本:ブライアン・クレメンス
製作:マーティン・ランソホフ、レスリー・リンダー
撮影:ゲリー・フィッシャー
音楽:エルマー・バーンスタイン
編集:セルマ・コネル
キャスト:ミア・ファロー、ロビン・ベイリー、ドロシー・アリソン、ダイアン・グレイソン、ノーマン・アシュレイ
☆☆☆☆4
写真引用コピーライト 1971, renewed 1999 Columbia Pictures Corporation Limited. All Rights Reserved.
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