トニー・スコット監督は言うまでもなく『ブレード・ランナー』、『エイリアン』などで有名なリドリー・スコット監督の弟である。CMディレクター出身であり、アップを多用した細かいカットを重ねつつ、その映像表現は兄以上の才能があるとも言われている。
私は『ザ・ファン』(1996)の後に本作を見たので、豪雨の野球スタジアムの『ザ・ファン』のラストシーンからつながっているような気持ちになって、アメフトの豪雨のスタジアムの始まりを見た。しかし、本作の方が1991年の先に作られているので、プロスポーツが繰り広げられる雨のスタジアムが迫力ある戦いの場として、トニー・スコットが好きなのかもしれない。もうメチャクチャな始まりである。全米が熱狂するアメリカン・フットボールのスタジアム。スタジアムの大画面に映し出される選手たちのプレイ、踊るチアガールズ、マーチングバンドの演奏、熱狂する観客。雨が降りしきる中でのプレイ。前半終了後に一人の選手にロッカールームに電話がかかってきて、「大金を賭けているんだ。お前の命が懸かっている。タッチダウンをしろ」と言われる。そしてなんと、その選手は拳銃をぶっ放しながらボールを持って走るのだ。次々と銃で撃たれ倒れていく選手たち。そして「人生はクソだぜ」と言って、持っていた拳銃で自殺する。もう、アメリカン・フットボールの世界が腐りきっている「クソ」であることが描かれて始まるのだ。なかなか凄まじいオープニングだ。
本作は、銃撃戦もあれば、カーアクションや爆弾も次々と炸裂する派手なアクション映画だ。私立探偵のジョー(ブルース・ウィリス)がフットボール賭博に絡む陰謀に巻き込まれるという物語。ジョーと相棒になって活躍するのがジミー(デイモン・ウェイヤンス)。元ロサンゼルス・スタリオンのQB、花形の人気プレイヤーだったが、賭博でフットボール界を追放され、妻も子も失い、麻薬に溺れながら無為な日々を送っていた。それはジョーも同じ。過去に大統領の命を救った経験があるシークレットサービスだったが、女を襲っていた議員への傷害で解雇され、今は家庭生活もうまくいってない負け犬人生だ。かつての輝かしい栄光を引きずっているダメ男の二人が、闇の腐った組織に立ち向かっていく。ジョーは、フットボール選手だったジミーのファンでもあったのだ。堕ちぶれたかつてのヒーローと再会するのだ。野球選手の夢を諦めたロバート・デ・ニーロが憧れの選手のファンから狂気へと暴走していく『ザ・ファン』と少し似ている。いずれも夢の世界から落ちぶれたダメ男たちの物語だ。
ある日、ジョーは友人の探偵からダンサーのコリー(ハル・ベリー)の身辺警護を頼まれる。しかし、ジョーは何者かに襲撃されたため、待ち合わせ場所でコリーと入れ違いになり、襲撃者達の手から逃れてきたジョーが彼女の元へ駆けつけた頃には既に殺されていた。ジョーは、コリーの恋人であるジミーと共に捜査に乗り出すことになった。
ジョーに仕事を頼んだ友人の探偵(ブルース・マッギル)と妻(チェルシー・フィールド)がデキちゃっているのがいい。探偵の勘で妻の浮気を暴くジョー。その情けなさ。ジョーは娘にもバカになされている。車に次々と爆弾が仕掛けられ、ジョーのまわりで人々が死んでいく。反抗期で生意気なジョーの娘(ダニエル・ハリス)も事件に巻き込まれて、娘を救うために命を張るジョー。
ラストのスタジアムでのクライマックス。いつものように光の使い方が見事だ。スタジアムでジミーが馬に乗って走り、ライフルで狙われている議員に、プレイ中のボールをもらって投げるのだ。無茶苦茶な笑える展開。そのボールが議員に命中してライフルでの射殺を免れる。そしてスタジアムのライト設備の上で、暗殺者とジョーの対決が描かれる。顔のドアップに、金網の光の影が顔に映る。スタジアムを疾走する馬、壊れたライトの火花が飛び散り、ヘリとの銃撃戦があり、巨大モニター画像も使いながら、光と影の中で犯人が落下していく。そしてジグを踊るジョーに会場が沸き立つ。妻との再会場面でも、二人の顔のヨリにパトカーの青や赤の回転するライトが効果的な光を作る。ラストは探偵に弟子入りするジミーがジョーに探偵の心構えをきく笑い話で終わる。どん底の男二人が笑いを取り戻した。バディー映画としても楽しめるエンタメ・アクション映画になっている。ブルース・ウィリスがいい味を出している。
1991年製作/アメリカ
原題または英題:The Last Boy Scout
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:トニー・スコット
脚本:シェーン・ブラック
製作:ジョエル・シルバー、マイケル・レビ
撮影:ウォード・ラッセル
美術:ブライアン・モリス
音楽:マイケル・ケイメン
編集:スチュアート・ベアード、マーク・ゴールドブラッド、マーク・ヘルフリック
キャスト:ブルース・ウィリス、デイモン・ウェイヤンス、チェルシー・フィールド、ノーブル・ウィリンガム、チェルシー・ロス、ダニエル・ハリス、ブルース・マッギル
☆☆☆3
写真引用(c)2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
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