mixiユーザー(id:3912568)

2026年04月28日19:00

46 view

「祭りの準備」黒木和雄〜バンザイ!バンザイ!と叫ぶ原田芳雄が忘れられない〜

私の青春映画の忘れられぬ1本といえば、この『祭りの準備』かもしれない。黒木和雄監督は『竜馬暗殺』(1974)という傑作があり、そちらも大好きなのだが、この地方都市のしがらみだらけの田舎から抜け出す映画は、中学か高校生ぐらいだった私に未来を感じさせる映画だったような気がする。ラストの駅のホームでの原田芳雄の「バンザイ!バンザイ」と江藤潤を送り出す場面は、強烈に覚えている。何か未来を励まされるような気がしたのだ。この映画で原田芳雄の大ファンになったように思う。窃盗殺人事件の逃亡犯である原田芳雄が、東京へ行くために家出をしてきた江藤潤からの金も受け取らず、どん詰まりでどこへも行けない男が、未来に向かって踏み出そうとする男を励まして見送るのだ。まるで、かつての自分を励ますかのように。あるいは、自らの無念な人生を若者に希望を託すように。

脚本家の中島丈博の自伝的な映画だと言われている。昭和30年代初め、高知県中村市。20歳の沖楯男(江藤潤)は、この町の信用金庫の外勤係であるが、毎日、東京へ出てシナリオ作家として身を立てることを夢みている。母のときよ(馬渕晴子)は女狂いの夫・清馬(ハナ肇)と別居していて、一人息子の楯男を溺愛するあまり離そうとしない。

発狂して大阪から帰郷した向かいの中島家の末娘タマミ(桂木梨江)が、性的存在として登場する。村の男たちは夜に浜辺に行って次々とタマミを抱く。楯男も恋人の涼子(竹下景子)とのスレ違いから悶々とし、夜の浜辺に向かう。そしてタマミを抱いていたところに、祖父の浜村純が入れ替わるようにタマミを抱くのだった。色狂いになった祖父。父(ハナ肇)もまた村の女たちの家を転々としていた。そんな祖父と父の女好きの血筋を引く自分に嫌気が差す楯男。中島家の次男のチンピラ利広(原田芳雄)は、狂ったタマミの身体を盥に入れて優しく洗うのだった。やがてタマミは妊娠し、祖父が自分の子供だといってタマミの面倒を見て一緒に暮らすようになる。しかし、子供を産んだ途端にタマミは正気に戻り、祖父は忌み嫌われ、挙げ句に首を吊って自殺してしまう。この映画の女狂いの祖父役の浜村純も強烈な印象だった。

恋人の涼子(竹下景子)は、歌声運動に参加し、共産党のオルグの男に奪われていた。チンピラの利広は楯男をいつもからかいつつ世話を焼き、酒を飲ませ娼婦のところに連れて行ってくれるのだった。しかし、いつもの窃盗癖から殺人事件を起こしてしまい、警察に追われて逃亡して行方不明となる。オルグの男に捨てられた涼子は楯男をセックスに誘い、楯男の仕事先の宿直の部屋にもやって来て、深夜にボヤ騒ぎを起こしてしまう。上司に怒られ、女まで連れ込んでいたことを呆れられ、焼けた布団を運ぶ楯男。涼子への思いから冷めた楯男は、引き留める母を振り切るようにして、一人東京へ向かうのだった。

誰もが青年期になると、母親の呪縛から飛び出していかなければならない。最近の若い男性は、いつまでも母親と仲がいいようだが、私たち世代は親を否定して乗り越えていく時があった。性に対して悶々とした思いを抱え、人間関係のしがらみ、両親の呪縛からいかに抜け出していくかが描かれている。未来のことは誰にも分からない。それでも旅立つこと、家を出て行くことを励まされた懐かしき映画だったと思う。淡々と繰り返される松村禎三の音楽も忘れられない。


1975年製作/117分/日本
原題または英題:Preparations for the Festival
配給:ATG

監督:黒木和雄
原作・脚本:中島丈博
企画:多賀祥介
製作:大塚和、三浦波夫
撮影:鈴木達夫
美術:木村威夫、丸山裕司
音楽:松村禎三
録音:久保田幸雄
照明:伴野功
編集:浅井弘
キャスト:江藤潤、竹下景子、馬渕晴子、原田芳雄、ハナ肇、浜村純、石山雄大、杉本美樹、桂木梨江、三戸部スエ、湯沢勉、阿藤快、原知佐子、絵沢萠子、真山知子、森本レオ、斉藤真、芹明香、犬塚弘
写真引用コピーライト1975 綜映社/東宝
☆☆☆☆☆5
3 7

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年04月>
日 月 火 水 木 金 土
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930