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2026年04月24日15:47

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「緋牡丹博徒 花札勝負」加藤泰〜様式美の任侠映画〜

いつものように線路にカメラを置く加藤泰得意のローアングルから映画は始まる。列車に轢かれそうになる目の見えない少女をお竜(藤純子)が助ける。明治の中頃の名古屋。お竜が軒先で仁義を切る。熊虎親分(若山富三郎)からの添書を持って、名古屋の西之丸一家(嵐寛寿郎)へ草鞋を脱いだ。お竜の仁義の相手をするのは、子分の山本麟一。加藤泰は、山本麟一の役者の顔が好きなのか、『明治侠客伝 三代目襲名』(1965)同様に、ここでも最初に山本麟一のアップを使っている。熱田神宮大祭の勧進賭博をひかえ、名古屋一の貸元の座を狙っている金原一家の組長金原鉄之介(小池朝雄)は、国会議員の古田(内田朝雄)と結託し、娘の八重子(柴田美保子)を嫁に差し出すことで、その地位を手に入れようとしていた。しかし、八重子は、西乃丸一家の一人息子、学生の杉山次郎(石山律)と恋人同士だった。そんな折、お竜は金原一家の賭場で自分の名を騙る女賭博師お時(沢淑子)を捕まえた。お時は、最初に出てきた目の見えない少女の母親で、イカサマで娘の目を治したいと金を稼いでいたのだ。お竜は、娘の事情を察してお時の罪を見逃すのだが、その後お時は、金原一家に利用される。八重子との結婚の承諾を求めて金原一家にやって来た杉山次郎は、お時とサイコロ勝負をすることになる。そして次郎が負けて、大金を引き換えに人質にされる。お時は、次郎を取り戻そうとやって来たお竜を見て、恩になったお竜のために、命懸けで次郎を逃がし、お竜は八重子と次郎を連れて大阪に逃がすのだ。途中、金原一家に草鞋の脱いだ渡世人・花岡(高倉健)が絡んできて、お竜と花岡の因縁が始まる。

藤純子の「緋牡丹博徒とシリーズ」、第3作。脚本(鈴木則文・鳥居元宏)がよくできている。敵対する一家のそれぞれの娘と息子の道ならぬ恋。そして敵対する一家に草鞋を脱いだ二人の渡世人、高倉健と藤純子の義理と人情に縛られた因縁。鉄橋のガード下で、雨の中で最初に出会う二人。お竜が花岡に傘を貸す。傘を手渡す二人の手がアップになる。その鉄橋のガード下で、再び二人は出会う。高倉健が渡世の義理で敵対する西乃丸一家の親分・嵐寛寿郎を殺しに行く場面。今度は雪が降っており、また傘を貸そうとするお竜に別れを告げ、高倉健は故郷の母の墓に線香をあげようと思ったが、それも出来ない・・・と言って去って行く。そんな高倉健を見送る藤純子。鉄橋を汽車が通る音が聞こえ、その蒸気の煙があたり一面に立ちこめる。汽車は見えず、音と蒸気の煙だけで表現する素晴らしいショットだ。そしてこの鉄橋のガード下の道は、ラストシーンでも使われる。藤純子と高倉健の雪の中での最後の別れのシーン。花を手前に入れた二人のショットのあとで、無人の鉄橋下の道が映る。また汽車が音とともに走り去り、鉄橋の下を蒸気が立ちこめ、道にいた犬が小さく去って行くのが見える。列車が映らないから、セットで撮影しているのだろう。蒸気の煙が効果的だ。二人の関係を象徴するシーンになっている。

改めて任侠映画を見ると、これはもう様式美だなと思う。型にハマった物語。敵対する組同士の抗争と因縁。草鞋の脱いだ渡世人義理と人情のしがらみ。そして我慢に我慢を重ねた挙げ句に敵対する組へと乗り込んでいく渡世人。今回は、藤純子が雪の降る道を、助っ人の待田京介が傘を差し出す中で、着物姿に日本刀を持った藤純子がやって来る。カメラは地面すれすれのローアングルに置かれ、その二人を迎える。藤純子の歌が流れる(歌はあまり上手いとは思えないが・・・)。その二人での殴り込みに、高倉健が助太刀する。藤純子と高倉健の二人の役者が揃うと画面が途端に艶やかになる。

『明治侠客伝 三代目襲名』と同じように、親分の嵐寛寿郎が刺されて床に臥せっている。仇討ちだと騒ぐ若い奴らを、親分が諫めるのも同じだ。目の見えない少女が手術して見えるようになるのを、渡世人の義理人情に厚い高倉健も博打の腕がいい汐路章も緋牡丹のお竜の藤純子も、敵味方関係なく気にかけて見守り、最後は目が見えるようになる。アップとローアングル、加藤泰の映像で様式美を描く任侠映画だ。


1969年製作/98分/日本

原題または英題:The Red Peony
配給:東映

監督:加藤泰
脚本:鈴木則文、鳥居元宏
原案:石本久吉
企画:俊藤浩滋、日下部五朗
撮影:古谷伸
美術:富田治郎
音楽:渡辺岳夫
録音:中山茂二
照明:金子凱美
編集:宮本信太郎
キャスト:藤純子、嵐寛寿郎、高倉健、待田京介、小池朝雄、若山富三郎、内田朝雄、石山律、柴田美保子、山本麟一、清川虹子、沢淑子、汐路章、林彰太郎、波多野博、若水淳、南利明、沢彰謙、村居京之輔、矢奈木邦二郎、天津敏、加藤浩、藤山寛美
☆☆☆☆4
写真引用@東映

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