未見だったビリー・ワイルダー作品。ビリー・ワイルダーとのコンビでお馴染みのジャック・レモン主演のイタリアの保養地イスキア島を舞台に繰り広げられる恋愛コメディ。ややキレはあまりないが、いつものように交換・取り違えを巧みに利用した作品。服装の交換から始まり、最後は遺体の交換でまわりをまんまと騙してしまうという作品。
アメリカの実業家ウェンデル(ジャック・レモン)のもとに、父の自動車事故による訃報が届く。プレイベートジェットで飛行場に乗り付け、飛行機に乗り込むウェンデル。ゴルフ場から直行したため、赤いセーターのラフな恰好。同じ乗客の分厚い眼鏡をかけた紳士のスーツと男二人がトイレに入って服装を交換。父の遺体を引き取りに行くのに、赤いセーターってわけにはいかないので交換したのだ。おかげでパスポートまで交換してしまい飛行場の出口で一騒動。旅の途中で知り合った英国女性パメラ(ジュリエット・ミルズ)は、父がイスキア島で一緒にバカンスを過ごしていた女性の娘。父とパメラの母は、愛人関係で交通事故死したときも一緒だった。ホテル支配人(クライヴ・レヴィル)から二人は毎年7月15日から8月15日まで、このホテルで10年にわたって密会を重ねていたことを知る。そして早朝、全裸で海で泳いで朝日を見るような仲だったという。最初を父のスキャンダルを隠して、二人をイタリアで埋葬しようと言うパメラの意見を撥ね付けていたウェンデルだったが、父とパメラの母がやっていた同じたことをウェンデルとパメラが繰り返すことで、二人の仲が接近していく。遺体が盗まれて、事故現場となったブドウ畑の一家に賠償金を払わされたり、全裸で泳ぐ二人の写真を撮ってウェンデルを脅すホテルの使用人を愛人のメイによるの殺人事件が起きたり、遺体を国外に運び出す書類が整わなかったり、なかなか父の遺体をアメリカまで予定の期日まで運び出せない。アメリカでは大規模な社葬と政財界の大物の列席、社員たちへの映像中継まで準備しているようだ。しかし、二人の関係は誤解や行き違いも絡んで密接なものとなり、ウェンデルはもっと長くパメラと一緒に留まりたいと思うようになる。国務省の高官(エドワード・アンドリュース)まで登場し、ヘリで強引なやり方で遺体を運ぶと言い出す。ウェンデルは、ホテルで殺された使用人の遺体と父の遺体を交換し、父の遺体はパメラの母と一緒にイタリアで埋葬することを決める。そして、アメリカ国旗に包まれて厳かに運び出される遺体は、アメリカに帰国したがっていた愛国者で、メイドに殺されたホテルの使用人だったという皮肉。
ランチに4時間もかけて昼休みは働かないというイタリア人が皮肉を込めて描かれている。ジャック・レモンは、イタリアで飲むエスプレッソは泥のような味でマズいと何度もぼやく。しかし女好きで遊ぶことを楽しむイタリア人気質、いつも太陽が照りつけ海が青く美しいイスキア島の気候と風土に、ビジネスマンだった父が夏のバカンスで染まっていったように、息子のジャック・レモンも染まっていく。やってきたアメリカ国務省の高官がやたらと忙しなく時間を気にしているのに比べ、イタリアに染まっていった二人はどこかのどかで楽しそう。ジュリエット・ミルズはちょっと太めなことを気にしている女性で、男にフラれ太ったことでダイエットに夢中だったのが、体重が減った途端にバクバク食べ始めるのも可笑しい。大会社の建前やアメリカ国家の威厳を遺体の交換で茶化し、老いてなお、恋に夢中になった二人を一緒にイタリアの地で埋葬する小粋さが、ビリー・ワイルダー映画らしい。
原題の「Avanti!アヴァンティ」とは、「どうぞ」「お入りなさい」とか言うときに使うイタリア語。パメラの部屋で殺人事件が起きて、パメラの荷物をウェンデルの部屋に一時的に移動させたことを、パメラが彼に「誘われた」と誤解し、ノックして部屋に入るところなど、まさに誤解が恋を生むキッカケになったシーン。国務省の高官が部屋にやって来たときも、裸だった二人は必死で関係を隠そうとパメラはネイリストに扮して繕う。そんなビリー・ワイルダーらしいドタバタが楽しい。彼の映画は、いつも嘘、繕う、変装、仮装、ごまかし、誤解、取り違え・・・などでコメディを構成している。
1972年製作/144分/アメリカ
原題または英題:Avanti!
監督・製作:ビリー・ワイルダー
原作:サミュエル・A・テイラー
脚本:ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
撮影:ルイジ・クベレル
音楽:カルロ・ルスティケリ
美術:フェルナンド・スカルフィオッティ
キャスト:ジャック・レモン、ジュリエット・ミルズ、クライブ・レヴィル、エドワード・アンドリュース
写真引用AVANTI!

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☆☆☆3
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