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2026年04月13日15:20

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「沓掛時次郎 遊侠一匹」加藤泰〜映像センスが光る股旅物の傑作〜

加藤泰の映像美が随所に見られる1966年カラー作品。長谷川伸の原作の股旅物。萬屋錦之介と池内淳子。前半に死んでしまうが、渥美清が萬屋錦之介を兄貴と慕う田舎者として登場。冒頭から「仁義を切る」練習をしている渥美清がいい味を出している。自分の口上が「締まらねぇなぁ」と嘆いていたと思ったら、遠くで沓掛時次郎(萬屋錦之介)が敵と斬り合いを始めようとしている。空中に投げ上げられる3つの三度笠。そのロングショットが素晴らしい。そして砂浜でのカメラ手前の格闘と遠景での斬り合い。血がドバッと吹き出る。朝吉(渥美清)を助けようと時次郎がカメラに向かって刀を振り下ろす。その迫力あるローアングル。砂浜に横たわる死体。加藤泰はカメラ手前に人物を入れ込み、近景と遠景を組み合わせた奥行きのあるショットを多用する。このオープニングを見るだけでも価値がある。

前半は時次郎を兄貴と慕う朝吉との人情物語。佐原の勘蔵一家に助ッ人として迎えられた二人だが、勘蔵の娘お葉(弓恵子)から草鞋銭を受け取ると、渡世人の命など虫ケラ同然に扱われる空しさから、とっとと抗争と関わらないように逃げ出す時次郎。それを「渡世の仁義に反する」と単身戻って、抗争に身を投じた朝吉。哀れ一人殺されてしまう。その怒りとともに暴れまくる時次郎。一人、川に朝吉の三度笠と位牌を流す。朝吉の故郷の富士が見えるところに流れるだろうと言いながら。

そして後半は愛の物語に転調。舟で子連れの女性おきぬ(池内淳子)と知り合い、柿を分けてもらった時次郎。男の子の太郎吉を肩に乗っけて途中まで送る。このシーンはスタジオで撮影されたのか、声も反響しており、暮れかかる空を背景に二人の特別な出会いの空間になっている。そんな親子の夫である男を、草鞋を脱いだ渡世の仁義で殺してしまう。二人で自己紹介とばかりに「仁義を切り合う」向かい合わせの2ショット。ヤクザな斬り合いとは違う男同士の厳粛な戦いを演出している。そして縁もゆかりもない男を殺し、その妻を好きになってしまう渡世人。その親子をずっと世話する沓掛時次郎は、次第におきぬ(池内淳子)に惚れてしまう。おきぬもまた、夫を殺した男をあろうことか好きになってしまう。病気で養生していたおきぬと太郎吉を、時次郎の故郷の沓掛へ落ち着かせようと旅に出ようとしていたところで、親子は突然消えてしまう。消えて1年たった頃、旅館の女将に炬燵で顛末を語る時次郎。ワンカット長回しの静かな語りで、しみじみとした情感が演出されている。時次郎は横顔のままのヒキのショットなのが凄い。そして門付けで歌うおきぬと鈴の音を聞いて時次郎は突然立ち上がり、アップ。雪の中を歩くおきぬと太郎吉と再会する。雪に血を吐き、病気が再発していたおきぬ。二人もうは離れられなくなっていた。おきぬを木賃宿で休ませながら、時次郎は薬代を稼ぐには、再び渡世人の世界に足を踏み入れるしか能がない。ヤクザ同士の抗争に参加して、激しい斬り合いの末に、やっと戻ってきたと時次郎だったが、時すでに遅し。おきぬの命は果てていた。死ぬ前に時次郎に見せるために紅を塗るおきぬが哀しい。時次郎は、太郎吉とともに故郷の沓掛へ向かうのだった。

渡世人で刀の腕を持ちながら、人を殺すことに抵抗を持つ沓掛時次郎。渡世の義理で殺した相手がまともな人間で、その妻を好きになるという因縁。夫を殺した相手に惚れてしまうという女の因果。そして二人の哀しき結末。加藤泰の映像センスとともに股旅物としても見事な作品だと思う。

1966年製作/90分/日本
配給:東映

監督:加藤泰
脚色:鈴木尚之、掛札昌裕
原作:長谷川伸
企画:小川三喜雄、三村敬三
撮影:古谷伸
美術:井川徳道
音楽:斎藤一郎
録音:渡部芳丈
照明:中山治雄
編集:宮本信太郎
キャスト:萬屋錦之介、池内淳子、渥美清、中村信二郎(錦之助2代目)、東千代之介、弓恵子、高松錦之助、那須伸太朗、小山田良樹、松下次郎、志賀勝、結城哲也、中村時之介、小田部通麿、三原葉子
☆☆☆☆4
写真引用コピーライト東映
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