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2026年03月07日18:33

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「アニキ・ボボ」マノエル・ド・オリヴェイラ〜路地を子どもたちが走り回る〜

ポルトガルの巨匠、106歳で亡くなったマノネル・ド・オリヴェイラ監督(1908−2015)の長編デビュー作が4Kレストア版で劇場公開されたので鑑賞。子どもたちがポルトガルの路地を走り回る映画だった。フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』(1959)やジャン・ヴィゴの『新学期・操行ゼロ』(1933)、ジャン=ピエール・メルヴィルの『恐るべき子供たち』(1950)などを思い出すが、この映画の子供たちはまだ幼く無邪気だ。

ドウロ河近郊に暮らす少年たち。カルリートスは内気な夢想家で、エドゥアルドは恐れを知らぬリーダー。二人はともに、グループで唯一の少女テレジーニャに恋をしている。ある日、カルリートスはテレジーニャが欲しがっていた人形を盗み、彼女にプレゼント。そのことをきっかけに少年たちの間に緊張が高まり、カルリートスはグループから仲間はずれにされる……。(HPより)

1942年に故郷ポルトの街を舞台に製作された本作は、「ネオレアリズモ」を先駆けたともされている。とにかく子どもたちが魅力的だ。「アニキ・ボボ」とは、ポルトガル語で「警官と泥棒(ケイドロ・鬼ごっこ)」という子供の遊びの際に使う唄の出だしのフレーズだ。

カルリートス(オラシオ・シルバ)が学校へ行く前に「アニキ・ボボ」とふざけて歌いながら、家で人形を落として壊す。落下することがこの映画では度々反復される。可愛い女の子テレジーニャ(フェルナンダ・マトス)に思いを寄せるカルリートスは、ある日テレジーニャが欲しがっていた人形を雑貨店「誘惑いっぱいの店」のウィンドウ・ディスプレイから盗む。それを服の下に入れて、深夜に部屋から屋根伝いに移動してテレジーニャの部屋まで行くのだ。そして窓から人形をプレゼント。喜んだテレジーニャからキスをされた瞬間に、屋根から落ちそうになる。落下の危険がここで暗示される。一方、ガキ大将で肉体も頑強なエドゥアルド(アントニオ・サントス)は、高いところから海に飛び込むのも得意で恐れを知らない。テレジーニャとデートをしたり、弱い者イジメをしてカルリートスと喧嘩になって、パンチを食らわせたりする強いリーダーだ。エドゥアルド中心に子どもたちも遊ぶようになっていて、彼の掛け声で行進したり、彼が「アニキ・ボボ」と歌って警察と泥棒に仲間を振り分け、彼の主導で「ケイドロ」遊びをしている。そんなある日、学校をサボってテレジーニャも一緒にみんなで凧を作る。テレジーニャからそのことを聞かされて、急遽参加したカルリートスだったが、テレジーニャとの恋を張り合っているため、エドゥアルドとカルリートスはまた取っ組み合いを喧嘩を始める。その時、機関車が走り出すのを見るために、みんなが崖の上に集まってくる。エドゥアルドも崖の上から見ていて、あとからやって来たカルリートスが機関車を見に来た瞬間に、エドゥアルドが足を滑らせて線路へ落下してしまうのだ。テレジーニャが叫び、崖から転落するエドゥアルド。線路脇に落ちたエドゥアルドは、機関車に轢かれはしなかったが気を失って倒れている。子どもたちの様子を伺っていた「誘惑いっぱいの店」の主人(ナシメント・フェルナンデス)が、すぐにエドゥアルドを抱えて病院へ連れて行く。子どもたちみんなは、カルリートスが後ろから突き飛ばしてエドゥアルドが崖から落ちたと思い込み、カルリートスを仲間外れにする。テレジーニャもそう信じ、カルリートスからもらった人形も「もう見たくない・・・」と言う。子どもたちは、その夜、エドゥアルドは死んで、きっと星になったと夜空を見上げる。そして悪魔の存在の恐ろしさを語る。人形を盗んだ罪、仲間外れにされた苦しみで、カルリートスは妄想に苦しめられる。表現主義的なイメージで悪魔に襲われるような妄想が描かれる。港から出港する船に乗って秘かに町を出ていこうとするカルリートスだが、それもすぐに見つかってしまう。罪を着せられた孤独。仲間からの孤立。しかし、ラストはハッピーエンドだ。エドゥアルドは死んでいなくて面会できるようになり、現場を目撃していた店の主人が、カルリートスの無実を証言する。やっと友達の疑いが晴れる。カルリートスは店の主人に盗んだ人形を返しに行って謝る。そして店の主人からデレジーニャにプレゼントだと言われ、「君から渡してくれ」と人形を渡される。カルリートスは再びデレジーニャに人形を手渡し、二人で路地の階段を人形と手をつないで上っていく後ろ姿で映画は終わる。落下のイメージの反復から、最後は階段を上昇していくイメージで終わっているのだ。

最初の学校へ行く朝の登校風景から子どもたちが生き生きと描かれる。いつも転んでばかりいる子供。ベランダから見つめるマドンナのテレジーニャ(なぜ彼女は学校に行かないのか?)の笑顔と、その視線を意識するカルリートスとエドゥアルド。エドゥアルドがカルリートスをからかって遊ぶ。転んで顔がペンキで汚れるカルリートス。そして学校の廊下に帽子をみんながかけていくシーン。恐い先生と教室でのイタズラ。港の海辺で泳ぐ子どもたち。「悪ガキたち」と言われながら夜まで走り回って遊んでいる子どもたち。警官や店の主人など、「悪ガキどもめ」と子どもたちを監視する大人たちの存在も効果的に演出されている。台詞ではない無声映画のようなアクションだけで、子どもたちの姿が描写されていく。カルリートスが罪の意識に囚われながら、「ケイドロ」で泥棒として逃げていると、自分の大きな影に驚く場面も面白い。罪を背負った者の恐怖と孤立。石畳の路地や階段、海辺の港の描写なども魅力的だ。後のオリヴェイラの作品群とは直接的は結びつかないが、子どもたちの活写を通して社会や人間関係を見つめるシンプルで確かな表現がここにある。


1942年製作/72分/G/ポルトガル
原題または英題:Aniki Bobo
配給:プンクテ

監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
製作:アントニオ・ロペス・リベイロ
原案:ジョアン・ロドリゲス・デ・フレイタス 
撮影:アントニオ・メンデス
美術:ジョゼ・ポルト
編集:ビエイラ・デ・ソウザ
音楽:ジャイメ・シルバ
キャスト:オラシオ・シルバ、アントニオ・サントス、フェルナンダ・マトス、ナシメント・フェルナンデス、ビタル・ドス・サントス、アルマンド・ペドロ、アントニオ・パルマ、トニオ・M・ソアレス、フェリシアーノ・ダビド、マヌエル・デ・ソウザ、アントニオ・ペレイラ、ラファエル・モータ、アメリコ・ボテリョ
写真引用(C)Produções António Lopes Ribeiro
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