mixiユーザー(id:3912568)

2026年03月01日21:12

48 view

「不壊の白珠」清水宏〜映像演出が見事な無声映画のメロドラマ〜

『不壊の白珠』(ふえのしらたま)と読む。菊池寛の小説が原作。東京を舞台にした1929年のメロドラマ。清水宏監督の無声映画で、シーンごとに彩色されていて、青味や赤味、紫や緑などの色がシーンごとについている。

溝口健二監督をして「清水君は天才です。僕や小津(安二郎)君は努力家にすぎない」と言わしめた日本映画界の隠れた巨匠・清水宏。最近、再評価の気運が高まっている。約35年間で164本もの映画作品を撮った。
「戦前はモダンな感覚を持った新進気鋭の映画監督として、メロドラマや大作映画をはじめとする撮影所の量産体制を支えます。同時にその一方で、人物の演出やロケーション撮影などに先進的なリアリズムを導入し、とりわけ子どもの自然な存在感を引き出す演出においては、同時代の世界の映画監督の中でも突出した才能を発揮し、その独創的な作風に注目を集めます。」(フィルムセンター特集上映HPの概要より)


U-NEXTで初期の無声映画を見ることが出来たので鑑賞。私は『按摩と女』(1938)、『恋を忘れて』(1937)ぐらいしか見ていない。

映像的な工夫が随所にある。オープニングの姉の俊枝(八雲恵美子)の寝床での幻想。姉の俊枝は成田(高田稔)に好意を寄せているが、成田はそれに気づかず、自由奔放なモダンガールの妹・玲子(及川道子)と結婚してしまう。好きな男性である成田を妹に奪われる姉の妄想がドイツ表現主義のようなイメージ映像で寝ている姿に重ねられる。そして夜遅くに帰ってきた妹が、成田とデートしてきたことを告げ、それを見つめる姉の視線。明るく楽しそうにデートのことを話す妹。背中を向いて寝てしまった妹の映像に起き上がる姉がフレームインしてくるショットの見事さ。あるいは車が何台も並んでいる奥を歩いてデートをする成田と玲子の横移動撮影を海辺へと場所を変えて重ねたり、成田と俊枝が話す喫茶店の廊下を歩くガラスのシルエットのショットも印象深い。スタジオセットだが、鈴木清順のような斬新なシルエット映像だ。結婚した玲子と成田の車のシーンと、俊枝と彼女に好意を寄せる専務(新井淳)との車のシーンを重ねて描いたり、姉と妹の言い争うシーンでは、二人の位置関係がグルグルと入れ替わり、二人の横顔のクローズアップがそれぞれフレームインしてくる斬新なカットなど、映像的な工夫に満ちた演出をいろいろと見ることが出来る。

妹の玲子と結婚した成田は、結婚後に姉の俊枝の自分への気持ちに気づいて、彼女を傷つけたことを悔やみ、姉が気になり始める。玲子は裕福ではない成田との結婚生活に飽き足らず、結婚前に付き合っていた金持ちの男友達と遊びだし、二人は喧嘩して玲子は家出する。ダンスホールで男友達と遊んでいる玲子を連れ戻すために、姉の俊枝が乗り込む場面も面白い。楽団とダンスに興じる男女たちとは明らかに場違いな地味な着物姿の俊枝が、妹をつかまえて連れて帰る。そんな姉妹に興味津々のダンスホールの野次馬たち。ダンスホールの天井から下がっているいくつもの紐飾りが面白い映像になっている。それはラストの成田の海外渡航の船の見送りシーンの夥しい紙テープとも重なる。あるいは、片山専務の軽井沢の別荘にやってきた俊枝は、片山の子どもたちや叔母たちにタイピストの仕事を馬鹿にされるシーン。無声映画ならではのあざとさはあるが、金持ちの叔母たちの品のないイヤらしい感じが演出されている。姉は妹の幸せの願って、二人の夫婦の仲を取り持とうとするがうまくいかず、成田は海外へと旅立っていく。姉は専務の夫人となるのか分からないが、成田の海外への船出を見送る場面で映画は終わる。実らなかった恋に別れを告げるのだった。八雲恵美子は小津や安二郎の『その夜の妻』(1930)でも主演している女優。高田稔は小津安二郎の『朗らかに歩め』(1929)に出ている二枚目俳優。


製作:1929年/日本/102分/35mm
    染色/スタンダード/サイレント
製作:松竹蒲田/
映像提供:国立映画アーカイブ

監督:清水宏
原作:菊池寛
脚色:村上徳三郎
撮影:佐々木太郎
舞台設計:水谷皓
キャスト:八雲恵美子、�眦通�、及川道子、新井淳、滝口新太郎、伊達里子、高尾光子
画像引用@1929年松竹株式会社
1 3

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2026年03月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031