青山真治の長編デビュー作『Helpless』(1996)と同じ年に製作されたオリジナルビデオ『我が胸に凶器あり』。U-NEXTにて鑑賞。清水宏次朗が刑事で対決する殺し屋が菅田俊。いわゆる低予算のアクション映画だ。黒沢清が『勝手にしやがれ!』シリーズで哀川翔の探偵モノのオリジナルビデオを量産していたように、この時代はVシネマなど劇場公開しないオリジナルビデオ作品が多く作られていた。青山真治も『教科書にないッ!』(1995)とこの『我が胸に凶器あり』(1996)の2本のオリジナルビデオ作品がある。
麻薬事件捜査をしている刑事・村田五郎(清水宏次朗)は相棒・吉岡(光石研)と事件の鍵を握るコールガール・アリス(青葉みか)の行方を追っていた。ヤクザから大量の麻薬を盗んで逃げた女アリス(青葉みか)が古びたドライブインに潜伏しているところを逮捕した二人だが、麻薬を取り戻そうとするヤクザ組織に襲われ、吉岡は撃たれて死んでしまう。アリスとともにヤクザ組織から逃げる五郎。組織はスナイパーの星(菅田俊)を雇い、二人を狙う。刑事とコールガールの奇妙な逃亡劇が始まる。山の中でのバイクの連中との格闘シーンでは、縄を五郎の首にかけてバイクで引きずる場面がある。まさに西部劇へのオマージュだ。
ねぐらに戻ってきた五郎が、死んだ相棒・吉岡(光石研)のことを思い出すシーンがある。長回しのワンカットのなかで、一人になった今の五郎に死んだ吉岡がフレームインして、かつてのコンビの会話が始まり、吉岡が刑事になった理由を軽妙に語り部屋を出て行く。しかしそこには誰もいない。過去と現在の二つの時間をワンカットの中で描いているシーンである。シネフィルの青山らしい作為的なワンカットである。また彼女が逃げ切れるかどうかを賭けの対象にしているブックメイカーの骨董品のおやじがサイコロを振ると、そのアクションつなぎで逃げている女の手元のサイコロに映像を飛ばす編集も面白い。こういう映画的な作為性や遊びが随所にあって楽しめる。
スナイパーの星(菅田俊)には、聾唖者の息子がいて、その子供のために仕事を辞めていたお涙頂戴的な物語があったかと思うと、星は狂気の男と化して、逃げる二人が乗っている車をショベルカーで破壊しようとする。また、一般人を次々と殺していく容赦なさ。歩いているところに首輪が降りてきて、引っかけて首を吊って、自分が代わりに降りてくる漫画みたいな殺しのシーンもある。鈴木清順のような荒唐無稽さ。
麻薬を隠していた駐車場の屋上での五郎と星の最後の対決の場面では、拳銃の撃ち合いが演じられたと思ったら、星の拳銃に弾がなくなって、五郎もそれに応じて拳銃を捨てる。そして二人で素手での殴り合いを始めるという潔さ。なんだか笑えるところもいろいろあって、バカバカしくも楽しい。撃たれて死んだと思ったアリスが、死んだフリだったのか生き返って車で一人逃げようとする。ヤクザの親分の諏訪太郎が女を待ち構えて、銃を持って脅すのだがすぐに女を殺さない。無駄に撃っているうちに弾切れとなって、やって来たパトカーの警察にご用となる間抜けぶり。女は自分が生き延びることに金を賭けたことによって、大金を得て、星の目の見えない息子のために白い馬を買う。
軽いタッチの映画的なお遊びたっぷりのアクション映画だ。
1996年製作/日本
上映時間 92分
監督・脚本:青山真治
製作:須崎一夫、広瀬雄、山崎伸介、吉村典久
撮影 山下宏之
キャスト:清水宏次朗、青葉みか、菅田俊、光石研、斉藤陽一郎、諏訪太朗
☆☆☆3
写真引用

Softgarage
『金魚姫』(2020年 NHKドラマ)青山真治演出
2020年製作の青山真治演出のNHKドラマ『金魚姫』もU-NEXTで見たので、備忘録としてレビューを少し書いておく。
萩原浩原作の歴史ファンタジー・ラブロマンスである。ブラック企業で働き、恋人とも別れ、未来が見えない絶望の日々で自殺を考えている青年(志尊淳)の前に、夏祭りの金魚すくいで手に入れた一匹の金魚・琉金(りゅうきん)の化身である美女が突然現われる。りゅう(瀧本美織)と呼ばれることになった彼女との二人の奇妙なひと夏の同居生活が始まる。りゅうは滅ぼされた一族の仇をとるために輪廻転生してきた女だった。その仇の末裔が志尊淳だったというストーリー。志尊淳がりゅうの力によって、死者が見えて仕事に活かされたり、別れて自殺した元恋人(唐田えりか)が彼に会いに来たり、不思議なことが次々と起こる。いかにも萩原浩らしいファンタジーだ。りゅうの仇討ちの相手が志尊淳だったことで、その恨みの因縁を終わらせようと、二人は橋の上から水の中へと落ちる。まるで『ポンヌフの恋人』のラストシーンのように。その土地にまつわる記憶や歴史(時間)を『こおろぎ』(2006)や『共喰い』(2013)などでも描いてきた青山真治らしいところもあるが、ラブコメディのような軽いドラマであり、あまり面白くはなかった。
2020年/89分/NHKドラマ
原作 - 荻原浩『金魚姫』(角川文庫)
脚本 - 宇田学
音楽 - 長嶌寛幸
演出 - 青山真治
制作統括 - 管原浩(NHK)、坂部康二(NHKエンタープライズ)、木幡久美(スールキートス)
プロデューサー - 安斎みき子
キャスト:志尊淳、瀧本美織、唐田えりか、中村優子、テイ龍進、仙道敦子、大鷹明良、中尾ミエ、國村隼
☆☆☆3
写真引用@NHK
ログインしてコメントを確認・投稿する