名匠ビリー・ワイルダー監督・製作の戦争捕虜収容所もの。原作はブロードウェイでヒットした舞台劇。ストーリーがしっかりしているし、捕虜たちのキャラクター付けも見事。舞台劇として成功しているだけあって、安心して楽しめる。ビリー・ワイルダー監督映画というのは、ハズレがあまりない。久しぶりに見たが、さすがの名作だ。
第二次大戦中のドイツの第17捕虜収容所第4キャンプ。ここにはアメリカ空軍の軍曹ばかりが集められていた。皆の協力のもと、脱走を試みた2人の捕虜が射殺される。仲間内から裏切り者がいるとの声が上がり、そのスパイを探し出す物語だ。何かと知恵が回り、みんなから小金を集めて調子のいい一匹狼セフトン(ウィリアム・ホールデン)が真っ先に疑われる。仲間からボコボコにされるセフトンだったが、最後に真のスパイを見つけ出す。
セフトンは最初あまり目立たない。どちらかというと孤独で仲間外れだ。仲間と距離を置き、個人主義的ながら才覚があり、酒を調達したり、望遠鏡をつくってロシア女の兵舎を覗かせる商売で金を稼いだり、ネズミの競争の賭場を開いて儲けたり、社会で生き抜く知恵と強さ、したたかさを持っている。しかし協調性がないことから仲間から疑われる。そういう人物をヒーローにしている映画だ。
新しい捕虜として将校のダンバー中尉(ドン・テイラー)が入ってきて、爆薬輸送用のドイツ軍用列車を爆破したことを仲間に語ると、その情報がすぐに所長のシェルバッハ(オットー・プレミンジャー)に知られることになり、ダンバー中尉は拘束される。スパイによる密告。その犯行の裏付けを知りたい所長は、さらにスパイと連絡を取る。電球の紐の結び目の合図、チェスの駒に仕掛けられたメモの紙。小道具演出も効果的。スパイ(ピーター・グレイブス)とドイツのシュルツ軍曹(シグ・ルーマン)との秘かなやり取りがセフトンによって暴かれていく。クリスマス・パーティーの夜、捕虜たちは音楽とダンスで楽しむ中で、仲間に紛れているスパイをじっと見つめるセフトン。ピンナップガールを見つめて寂しさに酒に酔ったアニマル(ロバート・ストラウス)が、女役になって踊る友(ハーヴェイ・レンベック)をそのピンナップガールだと勘違いして踊る場面など、笑いやふざけ合いの中でしっかりとサスペンスを共存させている。ビリー・ワイルダーならではの演出が光る。鬱で喋らないオカリナを吹く捕虜も出てくる。人間の滑稽な愛と寂しさ、個人と集団の対立、そして生と死の騙し合いのサスペンスが同時に描かれているのだ。
親衛隊に連行されるダンバー中尉を捕虜たちは救い出し、貯槽タンクに匿い、最後は見事にセフトンと一緒に脱走させる。捕虜に紛れていたドイツ人のスパイの男を囮に使って・・・。セフトンのウィリアム・ホールデンが最後に仲間たちに言う。「もし、どこかで会っても、知らん顔しような」と別れを告げて、床下ヘと潜っていく。女優は一人も出てこない男たちだけの集団劇。よく出来た群像劇だ。
1953年製作/119分/アメリカ
原題または英題:Stalag 17
監督・製作:ビリー・ワイルダー
原作:ドナルド・ビーバン、エドマンド・トルチンスキー
撮影:アーネスト・ラズロ
音楽:フランツ・ワックスマン
キャスト:ウィリアム・ホールデン、ドン・テイラー、ロバート・ストラウス、オットー・プレミンジャー、ハーヴェイ・レンベック、ピーター・グレイブス、シグ・ルーマン
写真引用

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