奇妙でとても面白い作品である。アースキン・コールドウェル原作小説「神の小さな土地」を映画化したもの。この原作はセックスと富に取り憑かれた農家を描いていて1000万部近くを売れたベストセラーとなり、性に関する検閲や風俗問題で物議を醸したそうだ。アンソニー・マン監督の隠れた傑作とも言われている。モノクロ映画。
最初、軽快な主題歌で始まる。「神の小さな土地の話をしよう。いい暮らし、いい暮らし。神の小さな土地で愛の種を育てる。いい暮らし、いい暮らし・・・」という奇妙な歌。原題が「God's Little Acre」(神の小さな土地)。主演はアンソニー・マンの『最前線』(1956)、『裸の拍車』(1953)にも出ているロバート・ライアン。そして、この映画に出てくる女優たちは、いずれも胸元を大きく露出したグラマラスな女性たちだ。娘役のダーリン・ジル(フェイ・スペイン)、そして次男バックの美しい妻グリゼルダ(ティナ・ルイーズ)。いずれも男を惑わせる性的存在であり、挑発的でさえある。
ジョージア州の農家タイ・タイ・ウォールデン(ロバート・ライアン)は、自分の土地のどこかに祖先が金塊を埋めたと思いこんでいた。この15年間、次男のバック(ジャック・ロード)と三男のショー(ビック・モロー)を使ってあちこちと掘り返していた。家の前の土地は掘った穴と積み上げた土がいくつもあり、綿花の畑は荒れ果てていた。まさに金に取り憑かれた男である。タイ・タイは信仰心に厚く、自分の土地の一部を「神の小さな土地」と呼び教会に寄付していたが、金が見つかっても教会に寄付しなくてもいいように目印の鉄の十字架を穴掘りの都合で移動させていた。
プルート・スウィント(バディ・ハケット)という小太りの男が保安官選挙への出馬を宣言するためにやって来る。どうやらプルートは、娘のダーリン・ジルに夢中。庭で入浴している裸のダーリン・ジル(フェイ・スペイン)は、自分に惚れているプルートを呼び寄せてからかうのだ。明らかに性的魅力に翻弄されている馬鹿な男を演じている。一方、次男バックの美しい妻グリゼルダ(ティナ・ルイーズ)は、結婚する前に恋人だったウィル(アルド・レイ)が忘れられない。ウィルは、タイ・タイの娘ロザムンドと結婚し、町に住んでいる紡績工場の労働者。しかし、今はその紡績工場も不況のため閉鎖中だ。ウィルは、「自分は農家は継げない。町にいたい」と美しいグリゼルダと別れたのだった。
沼地にいる体が白いアルビノが神通力を持ち、金の在りかを教えてくれると信じたタイ・タイは、金を見つけるためにアルビノの青年デイブ・ドーソンを誘拐し、占いをさせる。そして今度は家の下を掘り始める。「それ以上掘ると家が傾くぞ。金なんてないぞ」と冷ややかに穴を掘り続ける兄弟を冷やかすウィル。ウィルと兄弟たちの間で喧嘩が始まる。妻のグリゼルダをいつも見ているウィルをバックは面白くないと思っていた。穴の下で働く兄弟たちと上から見ているウィルやグリゼルダ。その上下の位置関係の目線が効果的に描かれる。
そして娘のダーリン・ジルは、アルビノの青年に興味を持ち、二人で夜にボートで出かけていく。深夜、眠れない暑い夜、白い下着姿のようなグリゼルダは首筋から胸元にかけて水で肌を冷やし、それを見ていた上半身裸のウィルが近づいてくる。その肌に触れる夜の二人のシーンはエロチックだ。お金に困ったタイ・タイは、町で成功している綿商人の長男ジム(ランス・フーラー)に金を借りに行くが、ジムもまた美しいグリゼルダに「家に来ないか」と声をかける。男たちはみんなグリゼルダの美しさに夢中なのだ。
一方、閉鎖された紡績工場を再開させたいと考えるウィルが、深夜に工場に忍び込み配電盤のスイッチを入れる。グリゼルダはそんなウィルを工場の外で見守っていた。工場に明かりが一瞬点るが、ウィルは警備員に銃で撃たれてしまう。工場の前には失業中の工場労働者たちが集まっていて、倒れたウィルを彼の家まで運ぶのだった。ウィルの葬式を終えて、グリゼルダのその夜の行動を問い質す夫のバック。嫉妬心からグリゼルダへの怒りが収まらない。喧嘩が絶えないウォールデン一家。そこへやって来ていた長男のジムが、ジルゼルダに「家に来ないか」とまた誘う。そんな長男のジムに殴りかかる次男のバック。殺し合おうとする二人を止めようとした父のタイ・タイが頭を殴られ血を流す。ジムに「ここから出て行け」と告げ、「神よ、掘った穴を埋めて平らにします。2度と穴は掘りません。掘る時は作物の種を植えるときです。」と兄弟が死ななかったことを神に感謝して畑を耕す。しかし、最後にまた、「金属の音がして、硬いものに当たった」とスコップの折れた先端を掘り出し、「じいさんが金を埋めた場所だ。最後のチャンスだ」と、金探しの夢を捨てきれない様子を滑稽に描いて主題歌とともに終わる。
金への妄執を捨てきれない父と性への執着で女をめぐって争う息子たち。穴をひたすら掘り続けるという滑稽で不条理な行動。土地へのこだわりと、埋まっているかどうかも分からないありもしないものへの幻想。そして女たちは積極的に男たちに近づいていき、男は女から逃れられなくなっていく。そんな人間の欲望と愚かさを家族の争いとして描く。
1958年製作/アメリカ
原題または英題:God's Little Acre
配給:松竹=ユナイト
監督:アンソニー・マン
脚本:フィリップ・ヨーダン
原作:アースキン・コールドウェル
製作:シドニー・ハーモン
撮影:アーネスト・ホーラー
音楽:エルマー・バーンスタイン
キャスト:ロバート・ライアン、アルド・レイ、ティナ・ルイーズ、バディ・ハケット、ジャック・ロード、フェイ・スペイン、ビック・モロー、ヘレン・ウェスコット、ランス・フーラー、レックス・イングラム、マイケル・ランドン
☆☆☆☆☆5
写真引用

1958 Security Pictures, Inc. All rights reserved.
ログインしてコメントを確認・投稿する