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2026年02月07日20:56

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「月が沈むとき」メーサーロシュ・マールタ〜家に閉じ込められる女性たちへの呼びかけ〜

ハンガリーの女性監督メーサーロシュ特集第2章の劇場公開作品より。1968年に手がけた長編第2作。なんだか奇妙な作品だ。家に閉じ込められた女性の話。自分の意志で男の支配から逃れ、自由に家を飛び出せという女性たちへのメッセージか?

経済学者で政治家の夫を亡くしたエディト(トゥルーチク・マリ)。最初は飛行機が着陸し、空港で夫の遺骨を受け取る場面から始まる。高名な人物の妻としてまわりからも心配されるエディトだが、夫の死への悲しみなどまるでない。結婚生活はすでに破綻しており、離婚する勇気がなかっただけといった感じ。夫の関係者を集めて夫の本を自由に持ち帰ってもらい、自分の服も次々と友達にあげてしまう。夫のおかげで守られ、経済的に恵まれていた生活から、エディトは自由になろうとしているようである。保険金や邸宅の相続を頑なに拒み、財産を放棄することを役所に行って申告しようとする。それに反対する息子のイシュトヴァーン。世間的な体面を気にしているのか、父親譲りの頑固さで母によって父の名声が汚されることを恐れ、エディトを別荘に軟禁してしまうのだ。息子に協力するのは、婚約者のカティ。まずはエディトを家に閉じ込め、二人で自由に家を使い、母を支配下に置こうとする。そして別荘に連れて行き、監視役としてカティが別荘の門に鍵をかけ、エディトが出られない状態にする。恋人のカティはハンサムで賢いイシュトヴァーンの忠実な下僕のように、エディトの監視役を務める。

あるとき、別荘の隣人がやって来て、エディトをピクニックに連れ出す。そこには音楽を演奏する楽団がいて、自らも歌を歌い、エディトにも歌うように促す。軟禁され自由を奪われていたエディトは、心のままに歌を歌う。カティがやって来て別荘にエディトを連れ戻すのだが、カティも自分が何をやっているのか疑問を持ち始める。エディトは「あの子は父親そのものよ」と言う。そしてカティはエディトの監視を止めて別荘から出て行くのだ。イシュトヴァーンがカティを別荘に連れ戻そうとして、カティの頬を叩く。カティは、イシュトヴァーンとの結婚生活が、男性支配的なエディト夫婦の繰り返しになると気づいたのだ。カティがイシュトヴァーンの制止を振り切って歩いていくところで映画は終わる。

原題のHoldudvarは「月の暈(かさ)」の意味で、転じて権力者に付き従う者を指す。金と名声と権力によって、女性を家に閉じ込める男性優位社会。その女性を父と同じように息子もまた閉じ込めようとして、婚約者に監視させる。それはつまり息子もまた女性を家に閉じ込める強権的な男でしかないということだ。やや図式的な女性たちへのメッセージを、母と息子と婚約者の奇妙な関係で描いた作品。母を閉じ込める兄には弟がいて、弟たちはロック好きでビートルズ世代。西側の世界を垣間見ていて、無邪気に友達と別荘のまわりで遊んでいるだが、女の子たちを囲んで遊ぶところがあり、果たして彼らも兄のようになるのだろうか。


1968年製作/86分/G/ハンガリー
原題または英題:Holdudvar
配給:東映ビデオ

監督・脚本:メーサーロシュ・マールタ
撮影:ケンデ・ヤーノシュ
キャスト:トゥルーチク・マリ、コバーチュ・カティ、バラージョビチ・ラヨシュ
写真引用(C)National Film Institute Hungary - Film Archive
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