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2026年02月03日17:36

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「新ドイツ零年」ジャン=リュック・ゴダール(「ロッセリーニ×ゴダール【2つのゼロ年】ドイツ零年」)

「ロッセリーニ×ゴダール【2つのゼロ年】ドイツ零年」と題した特集上映が行なわれていたので、2本続けて観た。1945年の第二次世界大戦後の廃墟と化したベルリンと1990年のベルリンの壁崩壊の翌年の「2つのゼロ年」のドイツを、二人の巨匠が描いた。



ロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)に関しては去年も観て、その時にレビューを書いたので詳しくは書かないが、少年が廃墟の町を彷徨う映画であることがあらためて見てよく分かる。ドキュメンタリー的要素が多い作品とはいえ、音楽はそれなりに盛り上げるところは盛り上げていたし、教会から聞こえるオルガンのヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」も効果的だ。父親に毒を飲ませるところも少年の緊張感が伝わってくる音楽が当てられていたのも今回観てよく分かった。冒頭は墓掘り仕事にありつこうとするも少年であることがバレて、町を歩くエドムント少年の横移動撮影から始まる。路上に倒れた馬の肉に群がる人々、道の落ちていた石炭を拾って家に帰る少年の歩きと走る姿。そこには少年らしい動きがある。しかし町は死の腐臭に満ちている。そんな貧しい暮らしの中でいつも家族のために「僕が行ってくるよ」と率先して行動するエドムント。ナチス兵士として捕まることを畏れ家に引き籠もる兄と対照的に描かれる。そして、エドムンド少年は生活費を稼ぐために秤を売りに再び町に行き、夜通し彷徨う場面がある。秤を缶詰と交換させられ、ファシストの元教師(小児性愛者に子供を紹介している)に会って、ヒットラーの演説レコードを米軍兵士に売りに行き、ストリート・チルドレンの窃盗少年や売春少女について行って町を彷徨う。地下鉄で石けんを売ってお金を奪い、貨物列車からジャガイモを盗む。さらに、死にたいと繰り返す父を毒殺した後に元教師に殴られて、廃墟のビルから飛び降りる瞬間まで町を彷徨う場面が素晴らしい。サッカーの仲間に入れてもらえない少年は、あてもなく町を彷徨い、地面のシミを辿って歩いたり、廃墟のビルではピストルごっこのような子供っぽい真似を一人でする。もう無邪気でただの少年には戻れない哀しさのようなものが、飛び降りる直前までの少年の姿から伝わってくる。最後に運ばれる父親の棺は、最初の少年の墓掘りの墓につながっている。

そんな廃墟になった死の町ベルリンを少年が彷徨うロッセリーニのイタリアン・ネオリアリズモ映画『ドイツ零年』に比べて、ゴダールの『新ドイツ零年』は、1990年、西側のスパイとして東ベルリンに30年間潜伏していた諜報員レミー・コーションが、西側への帰還を目指して旅をする話だ。とは言ってもいつものゴダール映画だ。そんな単純で分かりやすい話ではない。ほとんど、チンプンカンプンで意味不明だ。ドイツの哲学や文学、音楽、映画の引用とコラージュ。タイトルは「1990年」の「90」、「9」という意味と「新しい」という意味をもつ「neuf」を付け加えたものである。

分かりやすかったのは、ドンキ・ホーテとサンチョ・パンサが出てきて、巨大な工事用の機械(ドラゴン)に突進していく場面くらいだ。ドラゴンとは何か?近代資本主義社会への滑稽なる突進。レミー・コーションは、「西洋はどっちだ?」と会う人ごとに聞いて回る。ベルリンの壁が崩壊し、東ドイツに置き去りにされていた西側のスパイは、西側へ向かおうとするも方角が分からない。「西洋とはなんなのか?」さえ分からないのかもしれない。東西ドイツの統一の果てに、ドイツが向かう先とはなんなのか?「西洋の没落」、貨幣経済・・・。

レミー・コーションを演じるのはゴダールのSF映画『アルファヴィル』(65)でも同名の探偵役で主演したエディ・コンスタンティーヌ。『新ドイツ零年』は、フランスのテレビ局アンテーヌ2(現 :France 2)から「孤独」を主題として依頼されたテレビ作品で、個人の「孤独」ではなく、国家としてのドイツの「孤独」を描いたものだ。最後に西側に辿り着いたレミー・コーションは、「本が置き忘れている」とホテルのメイドに伝えると、「ホテルに置かれている聖書です。」と言われ、聖書を見て、「クソッ」と呟いて終わる。

なお引用されているものはロッセリーニの『ドイツ零年』のほかに、ドイツのF・W・ムルナウの『最後の人』(1924)、ロシア映画のボリス・バルネットの『青い青い海』(1935)、ロシアのセルゲイ・エイゼンシュテインの『アレクサンドル・ネフスキー』(1938)等の映画があり、トーマス・マン、ヘーゲル、リルケ、マルクス、プーシキン、ゲーテ、ヴィトゲンシュタイン、カフカ、ハイデガー、アンドレ・マルロー、フロイト、ニーチェ、ブレヒトなどのドイツの哲学者、詩人、作家のことばが引用されているそうだ。ゴダールの頭の中のイメージの連鎖、思考のあり方が分からないと、手に負えない映画だ。


1991年製作/62分/フランス
原題または英題:Allemagne année 90 neuf zéro
配給:ザジフィルムズ

監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:クリストフ・ポロック、ステファン・ベンダ、アンドレアス・エルバン
美術:ロマン・グーピル、ハンス・ジシュラー
キャスト:エディ・コンスタンティーヌ、ハンス・ジシュラー、クラウディア・ミヒェルゼン、アンドレ・ラバルト
画像引用(C)BRAINSTORM 1991. Licensed through ECM Records GmbH
☆☆☆3
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