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2026年01月09日17:26

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「黄金狂時代」チャールズ・チャップリン〜笑われ者の弱者の幸運〜

久しぶりにチャップリンの映画を4K修復版で映画館でやるというので観に行った。初期のサイレント映画の傑作『黄金狂時代』である。本作は1925年6月26日にロサンゼルスのグローマンズ・エジプシャン・シアターで初めて上映された。その後1942年には音声効果、音楽、ナレーションを収録した「トーキー版」がチャップリン自身の手によって再制作され、以来トーキー版(1942年版)が決定版として上映・放送されてきた。しかし、今回はオリジナルである「サイレント版」(1925年版)が、初上映からちょうど100周年を迎える記念すべき年(2025年)に、映像の4K修復とアメリカの指揮者・作曲家であるティモシー・ブロック氏によるスコアの復元・編曲を経て、戦後初めてスクリーンに蘇ったということだ。

私はどちらかというとメッセージ性が強くなっていくチャップリンの後期の作品よりも初期のアクションとパントマイムに重きをおいた映画のほうが好きだ。さらいえばバスター・キートンのサイレント喜劇映画のほうがもっと好きだ。

あらためて見ると丁寧に作られている。ゴールドラッシュに沸く雪山。実際にロケ撮影しているが、本当にたくさんのエキストラを使って雪山を登る人々のロングショットを撮っている。600人のエキストラを動員したと言われている。ちゃんと手間とお金もかけていたんだなと思う。この映画の有名な空腹から山小屋で自分の靴を食べるチャップリンの紳士然としたアクション、ロールパンの愛嬌のあるダンス、そして崖から落ちそうになる山小屋の中で右往左往するシーンなど、その芸達者ぶりには感心するしかない。特に崖で傾く山小屋のシーンは、ミニチュアとスタジオで撮影されたのだろうが、ダイナミックな見事なアクションとなっている。今でもまったく通用するハラハラドキドキの重力を使った危機一髪の笑いであり、非常時での強い者と弱い者との関係も描かれていて皮肉も効いている。

山高帽とチョビ髭とステッキとダブダブのズボン。チャップリンは小さな放浪者であり、常に貧しき弱者であり、弱者とともにある。この映画でも次々と大男たちが出てくる。いち早く金絋を発見したビッグ・ジム(マック・スウェイン)、お尋ね者の凶悪犯ブラック・ラーセン(トム・マーレイ)、そして酒場の女たらしでジョージア(ジョージア・ヘイル)の恋敵ジャック(マルコム・ウェイト)。いずれも強そうな大男たちであり、欲望のかたまりのような奴らである。小さき気弱い放浪者のチャップリンは腕力でも、ルックスでも、胆力でも、まったく歯が立たない。飢え死にしそうになると命を狙われ、酒場でも貧相な出で立ちは笑いものにされる。そして酒場の人気者のジョージアと女性たちからも、からかわれ、笑いのネタにされるのだ。チャップリンが心待ちにしていた大晦日のディナーは、簡単に忘れられてしまう。ジョージアのジャックへの謝罪の愛の手紙さえも、からかいのネタとしてチャップリンに渡され、ジョージアが自分を愛していると勘違いしてしまうほどの哀しさである。徹底的に笑いものにされ、からかいの対象でしかない小さき弱き男。彼を救うのは、偶然という幸運だ。喧嘩相手のジャックの頭に偶然、柱時計が落ちてきて気を失ったり、金塊が手に入るのもビッグ・ジムが記憶喪失になった偶然からである。ラストは、ビッグ・ジムの金鉱を一緒に手に入れることになって、チャップリンは大金持ちになる。そしてジョージアと運命の再会して、めでたしめでたしのハッピーエンドだ。金持ちにならなかったら、ジョージアとも結ばれない。ただの哀れな勘違い男である。偶然の幸運がなかったら、こんなに寂しい哀しい男はいないという物語である。


1925年製作/72分/アメリカ
原題または英題:The Gold Rush
配給:KADOKAWA

監督・脚本・製作・編集・音楽:チャールズ・チャップリン
撮影:ローランド・トザロー
美術:チャールズ・D・ホール
ナレーション:チャールズ・チャップリン
キャスト:チャールズ・チャップリン、ジョージア・ヘイル、マック・スウェイン、トム・マーレイ、ヘンリー・バーグマン、マルコム・ウェイト
☆☆☆☆4
写真引用(C)Roy Export SAS

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