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2026年01月07日19:33

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「この子の七つのお祝いに」増村保造〜呪いの言葉が人生を狂わせる〜

増村保造の映画をいろいろと見続けている。増村保造はイタリアで映画を学び、ロベルト・ロッセリーニやヴィットリオ・デシーカのもとでイタリアン・ネオリアリスモの影響を受けた。そして日本映画にありがちな情緒的で曖昧な描写よりも、状況に人間を追い込んでいきながら、なまなましい欲望やエネルギッシュな熱量溢れるアクション=行動を描いてきた。それが『妻は告白する』(1961)のような追い詰められた女を描いた傑作を生み、『清作の妻』(1965)では女の愛と狂気を描いてみせた。性が暴走する『卍(まんじ)』(1964)のような作品もあるし、愛と憎しみ、女の情念を描いた『刺青(いれずみ)』(1966)や『赤い天使』(1966)、『曽根崎心中』(1978)などもある。いずれも情念の爆発、欲望の暴走など激しい思いを溢れさせるような数々の作品を生み出してきた。

さて本作もその延長にある増村作品で、女の積年の恨みが恐い。第一回横溝正史賞を受賞した斉藤澪の同名小説の映画化で、横溝正史っぽい古くから家族に伝わる血の歴史と恨みがテーマになっている。横溝正史シリーズを多く手がけた市川崑ならば、スタイリッシュな編集と映像でもっとテンポ良く展開するのだろうが、この映画はどんよりと暗く重いのだ。

戦後の混乱によって人生の歯車を狂わされた女の悲惨な一生とその復讐・・・。画面の色調は全体的に暗い。古い家屋で雨戸の隙間から外の様子をうかがう少女の顔が覗く。これは最後にも反復される。少女から大人になった岩下志麻が同じ部屋の雨戸の隙間から覗くのだ。孤独な少女は暗い部屋で母の帰りを待ち、部屋には日本人形たちが不気味に並べられている。貧しく病気がちの母の岸田今日子が、寝床で自分を捨てていった夫への恨みを幼い子供に聞かせる。父と母が幸せだった結婚写真と小さな娘も一緒の親子3人の手形を見せながら。父親の写真の顔は刃物か何かで傷つけられ見えなくなっている。母親はこの手形の父親を探し出して、母親の恨みを晴らすように娘に伝え続けるのだ。「通りゃんせ」の童謡を口ずさみつつ。母親役の岸田今日子がとにかく陰気で恐い。母は娘が7歳になるときに自殺した。その母の恨みを一心に背負って育った少女は、手相から父親を探し出して復讐する狂気の女と化していく。

政界の謎を暴こうとするルポライターに杉浦直樹。その杉浦直樹の仕事を手伝う記者に根津甚八。彼の行きつけのバーのママに岩下志麻。殺人事件が起きる中で、政界の裏側で影響力を持つ謎の占い師・青蛾の正体を探るうちに、ある母と娘の悲しき人生が浮かび上がってくる。殺人事件に残された壁に残った血の手形、そして娘が探していた父の手形などが結びつき、事件の真相が明かされていくミステリーサスペンスだ。戦後の貧しさと混乱期から生まれた悲劇だが、繰り返される母の歌と言葉が少女の人生を狂わせる呪いの言葉となるところが恐い。


1982年製作/111分/日本
配給:松竹

監督:増村保造
脚本:松木ひろし、増村保造
原作:斉藤澪
製作:角川春樹
プロデューサー:岡田裕介、中川完治
撮影:小林節雄
美術:間野重雄
音楽:大野雄二
録音:井家眞紀夫
照明:川崎保之丞
編集:中静達治
キャスト:岩下志麻、根津甚八、杉浦直樹、辺見マリ、畑中葉子、中原ひとみ、芦田伸介、岸田今日子、坂上二郎、室田日出男、名古屋章、戸浦六宏、小林稔侍、村井國夫、神山繁
☆☆☆3
写真引用(C)1982 松竹株式会社

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