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2025年12月30日21:25

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「白の花実」坂本悠花里〜死者と会話するダンス=踊り〜

2025年最後に映画館で観た映画は、新鋭・坂本悠花里による初の長編監督作品。坂本悠花里は1990年生まれ、埼玉県出身。上智大学で哲学を専攻後、東京藝術大学大学院映画専攻にて編集を学ぶ。ファントム・ファンタジーと謳われている”死の向こう側へ”・・・少女たちの奇妙で美しい生と死の世界を描いた作品。ダンス=踊ることは、死者と会話すること、死の世界と交信することでもあるとあらためて思った。

冒頭は展望台の様な見晴らしのいい場所に少女が後ろ姿で昇ってくる。遠くには街の明かりが見える。すると画面が真っ暗になり、なにやら死の予兆のような不吉な感じで始まる。静かな森の奥にある古い佇まいの全寮制の女子校に、一人の少女・杏菜(美絽)が母親に連れられてやって来る。周囲と馴染めず何度も転校を繰り返し、「ここが最後よ」と母親(河井青葉)から言われるが、杏菜の足取りは重く、先生(門脇麦)が来ても挨拶もしない。杏菜の後ろからのショットが多用され、長い髪がなんだか重苦しい。体育館でのダンスの練習を見学していると、突然、杏菜は照明が消えかけて何やらただならぬ気配に気づき、「幽霊が怒っているよ」と踊っている少女たちに告げる。杏菜はどうやら幽霊が見えるらしい。扉が突然、開いたり、ゴースト的な現象が起きる。

ルームメイトになった少女・莉花(蒼戸虹子)は、ダンスも上手く、誰からも好かれる美しく完璧な少女。みんなと馴染めない杏菜に、莉花は「私になればいいのに」と意味不明なことを言う。ほどなくして莉花は自殺してしまう。冒頭の展望台のような場所から飛び降りたのだ。美しくみんなからも好かれて完璧に見えた莉花の心の闇とはなんだったのか?杏菜に残された彼女の日記から、少しずつ心の内が明らかになっていく。幽霊を見ることが出来る杏菜は、彼女の日記を読んでいるときに光の玉となって莉花が現われ、彼女の身体の中に入り込む。それ以降、安菜の髪型や振る舞いに変化が生まれる。身体が操られ乗っ取られたような奇妙なダンスの身振りになり、ホラー的な要素は少しあるが、基本的には美しい少女たちの静かな映像が続く。莉花と一番親しくしていた栞(池端杏慈)のことを、莉花は好きだったようだが、告白しても栞には分かってもらえなかったようだ。湖のそばで二人が会話するショットが横移動撮影で印象的に描かれている。杏菜は莉花を心の内に抱え、二重性の存在となって栞と相対する。死者=幽霊となって杏菜のそばに居続ける莉花。杏菜は莉花の思いを、好きだった栞に届けようとする。栞は莉花の思いをちゃんと受け取れなかった後悔を抱え、杏菜と接する。そんな死者も含めた3人の関係が面白い。そして莉花は家に帰ると、父親が莉花の部屋に入って来ることの恐怖を日記に書き記していた。父親の性的虐待がほのめかされている。

湖の浜辺で少女たちがダンスをする課外授業がある。美しいシーンだ。ラストでも杏菜は莉花の魂を返すために、湖の浜辺で一人踊る。そして莉花の魂は光となって湖ヘと向かい、空へと昇っていくのだった。

踊る少女たちが「白の花実」となって体育館で重なり合う場面など、白い花が印象的に描かれる。少女たちはまさに白い花そのものだ。死者の霊魂を光の玉で表現するのは安易な感じがしたが、透明感のある少女たちの美しさと心の揺れが静かな佇まいの森と湖のある学校を舞台に描かれている。人が見えないものが見えてしまい、周囲に溶け込めない孤独jと苛立ち。莉花の死の真相を大人たちは解明しようとするが、杏菜は「そんなことをしてどうするのだ。死んだ莉花が何を考えていたか分かるわけがない。それよりも、人はなんのために生きているのか、考えないの?」と大人たちに問いかける。世界と調和できない違和感。生きていることの意味や価値とは?母親(河井青葉)が言うように、大人になったら、そんな違和感は自然と消えてしまうものなのか。杏菜の葛藤は続く。それでも莉花の日記を燃やし、魂を死の向こう側へ返し、杏菜も栞もそれぞれに前に進もうとする。今後の活躍が期待される若い女性監督の誕生だ。


2025年製作/110分/G/日本
配給:ビターズ・エンド

監督・脚本・編集:坂本悠花里
エグゼクティブプロデューサー:定井勇二
プロデューサー:山本晃久
アソシエイトプロデューサー:吉田悠里子、伊藤さやか
脚本協力:田中幸子、大江崇允
撮影:渡邉寿岳
美術:中條芙美
音楽:フジモトヨシタカ
振付・ダンス指導:寺杣彩
キャスト:美絽、池端杏慈、蒼戸虹子、河井青葉、岩瀬亮、山村崇子、永野宗典、田中佐季、伊藤歩、吉原光夫、門脇麦
☆☆☆☆4
写真引用(C)2025 BITTERS END/CHIAROSCURO

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