1929年のジャン・ルノワールのサイレント映画である。アンデルセンの童話を元にジャン・ルノワールによって幻想的な夢物語として映像化された。主演は『女優ナナ』(1926)と同じカトリーヌ・エスラン。
大晦日の夜、雪が降る北国の町。町外れの貧民窟に住んでいる少女(カトリーヌ・エスラン)はマッチを籠に入れて町行く人々に売り歩くが、マッチは一つも売れない。スタジオセットによって雪降る町並みが再現されている。ロングショットはミニチュア模型も使っているのだろう。降り続ける雪と風で寒さを表現している。マッチを必要とする青年紳士が現われるが、少女は気づかない。青年と視線がすれ違うが、彼は店の中に入ってしまう。明るい窓ガラスから中を覗く少女。曇ったガラスを指で拭い、ガラス窓に顔をくっつけるようにして中を見る。先ほどの青年が見える。ガラス越しのショットがフィルター効果のようになっている。少女は子どもたちに雪玉を投げつけられ、マッチを路上にばらまき、警官から心配される。親切な警官と一緒にショーウィンドウ越しの玩具の人形たちを見る二人の後ろ姿が美しく微笑ましい。そして、「そんな靴しかないのなら家に帰ったほうがいい」と言われる。靴は穴のあいた寒そうなスリッパのような粗末なものだ。しかし、マッチが一つも売れなかったのに、このまま家に帰るわけにはいかない。少女は、物置小屋の前に座り込み、持っていたマッチの炎で暖まろうと1本ずつ火をつけるのだが、寒さと飢えからいつしか幻を見るようになっていく。
マッチは花火に変わり、花や木の映像が壁に浮かび上がり、少女の意識は薄れ、死ぬ間際の幻想世界へと入り込んでいくのだ。雪の中で踊る少女、そして先ほど見たショーウィンドウの中の玩具の人形たちがいる世界へ入り込む。ゼンマイ仕掛けのように踊る人形、奇術の箱から出てきた死神、兵隊たちの行進。先ほど町で見かけた青年紳士が兵隊となって現われる。目の前にご馳走が現われたり、ぬいぐるみも動き出し、不思議な世界が展開されるが、死神がその世界を破壊し、少女と青年は馬に乗って空へと逃げるのだ。それを馬に乗って追いかける死神。その馬での追走劇の青年と死神の闘いの末、青年は敗れ、空から落ちていく。そして少女も死神に捕まり、十字架の立つ地上へと死神に運ばれてくるのだった。バラの木に花が咲き、バラの花片が雪ヘと変わり、少女は雪の中で死んでいる。人々に「馬鹿な考えをおこしたものだね。マッチの火で暖まろうなんて」と言われ、雪の中で静かに眠る少女の顔が映されて終わる。死ぬ前に夢見るファンタジーの世界である。
1928年製作/フランス/39分
原題または英題:The Little Match Seller La Petite Marchande d'Allumettes
監督:ジャン・ルノワール
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン
撮影:ジャン・バシュレ
セット:エーリク・オース
キャスト:カトリーヌ・エスラン、ジャン・ストルム、ジャン・ストルム、マニュエル・ラービー、マニュエル・ラービー、アミー・ウェルス、アミー・ウェルス
☆☆☆3
写真引用

1928 STUDIOCANAL
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