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2025年12月03日18:03

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「恋も忘れて」(1937)清水宏〜港町の霧と母と息子と用心棒〜

『按摩と女』(1938)が面白かった清水宏監督作品。作為的な物語、セリフ、演技、演出を極力排除する実写的精神を大事にし、「役者なんかものをいう小道具」という言葉を残している。日本映画の揺籃期から戦後の黄金期まで、約35年間で164本もの映画作品を撮った監督・清水宏(1903-1966)は、生誕110年でフィルムセンターで特集上映も組まれた。

清水は、1924年に松竹で21歳の若さで監督昇進して以降、戦前はモダンな感覚を持った新進気鋭の映画監督として、メロドラマや大作映画をはじめとする撮影所の量産体制を支えます。同時にその一方で、人物の演出やロケーション撮影などに先進的なリアリズムを導入し、とりわけ子どもの自然な存在感を引き出す演出においては、同時代の世界の映画監督の中でも突出した才能を発揮し、その独創的な作風に注目を集めます。
 戦後は一時映画界から退き、戦災孤児たちを引き取って共同生活を送りますが、彼らと独立プロダクション「蜂の巣映画部」を設立して映画製作に復帰し、大きな社会的反響を呼びます。その後、新東宝・東宝・大映に呼ばれて児童映画や母もの映画なども監督しました。
(東京国立近代美術館フィルムセンター「生誕110年映画監督 清水宏」HPより一部引用)


本作は、横浜・本牧を舞台に、港町のホテルのダンスホールでホステスをしながら小学1年の一人息子の春雄(爆弾小僧)を育てているお雪(桑野通子)が主人公。ダンスホールはただ広くて殺風景なセットだ。意識的に何もない空間にしたのか。ただお雪が一人で陽気に踊るシーンはいい。お雪親子が住むアパートの2階の部屋、そしてアパート前の階段と港町の路地、春雄が遊び場にしている倉庫などがセットで組まれている。時々港に大きな船が入り、外国人もやって来る。路地に霧が立ちこめる雰囲気は、港町の異国情緒も感じられるモダンなフィルム・ノワール的な演出になっている。桑野通子のエレガントな雰囲気、ハットを被った用心棒の佐野周二もアメリカ映画のようでモダンな感じだ。

お雪たちホステスが経営者のママに賃金アップ交渉をするが、すげなく断わられてしまう。ホテルはホステスたちが辞めていかないように見張りの用心棒を雇っていた。その用心棒の一人が佐野周二で、次第にお雪と親しくなっていく。春雄は美人の母が自慢であったが、母の香水を友達にふりかけたことで、同級生の親たちから遊ぶなと言われ、母のホステス稼業のことで仲間外れにされてしまう。学校で孤立するようになり、休んで一人で倉庫で過ごす春雄だったが、お雪に見つかってしまい、原因が自分にあると分かってお雪は泣き崩れる。転校させて一緒に学校に行こうとするお雪に、春雄から「一人で行くから付いてくるな」と言われてしまう。転校先でも仲間外れになった春雄は、雨に濡れて肺炎になってしまう。そんな春雄に佐野周二は「母ちゃんの悪口を言う奴はやっつけてやれ。喧嘩に負けるな。強くなれ」と言う。あるとき、春雄は病気にも拘わらず、苛めるガキ大将(突貫小僧)と対決してやっつけるが、そのまま倒れてしまう。そして死んでしまうのだった・・・。

子供の演出が上手いと言われた清水宏らしい作品だが、メロドラマとしては中途半端な感じ。子どもたちの仲間外れの話もあまりうまくいっているとは思えなかった。スモークをたいた霧と港町の路地の雰囲気が洒落ていた。


1937年製作/73分/日本
製作:松竹大船

監督:清水宏
原作:斎藤良輔
脚本:斎藤良輔
撮影:青木勇
キャスト:桑野通子、佐野周二、爆弾小僧、突貫小僧、岡村文子
☆☆☆3
写真引用コピーライト1937 松竹株式会社
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